第百四四話 通学路にて
今晩は。
登校です。
「いつもはどうしているの?」
「寝癖は蒸しタオル作って、なおしている」
「じゃ、ユトランがしてあげる!ここ座って!」
「え?」
「はやく!はやく!」
ポンポン、と座っていた椅子を叩くユトラン。
「いや、だから僕は魔法、効果が……」
「ヒュッ!」
ユトランの可愛い唇から、口笛が響いた!
そしてその音はいつしか歌声のように聞こえ始める!
筒状のドライアーから温風がじんわりと出始める。
「ユトラン、ちょっと熱いかも」
「ん……これくらい?」
「あ、いいかも……しかし本格高速詠唱で寝癖をなおす?凄い贅沢というか能力の無駄遣い?というか……」
「え?無駄遣いじゃないよ!バンお兄ちゃんの髪、キレイになるし!フンフンッ」
それは不思議な光景だ。
ユトランは鼻歌交じりで、同時に本格高速詠唱を行なっているのだ!
その光景をみて、驚く無頼。
あ、いたんだ無頼(作者独り言)。
「ロボウ、気づいているよな?」
「何をです?無頼さま?」
とんでもなく高価そうなお皿(王都から贈られてきたお祝いの品の一つ)にオニギリを二つ載せて無頼に給仕するロボウ。
「本格高速詠唱は力の固まりだ、制御が難しいと聞く。例えるなら大滝の落水だ」
「ほうほう?」
「全てを粉砕し、飲込んでしまう大滝、バケツ程度で受け止められると思うか?」
「命に関わりますな、止めるべきでしょう」
「攻撃魔法はそれでいい、力の放出だ、まさに大滝の落水。しかしそれをティーカップで一滴も零さず、優雅に受け止める」
「はい?不可能では?」
「だよな、だがそれをユトランは平然とやってのけている。バンブはどこで見つけてきたんだ?とんでもない白魔道士だぞ」
そう、普通は制御出来ないのだ。
攻撃破壊基本の魔法で、寝癖をなおす。
よくもまぁちょっと熱いかも、ですんだなぁと感心というか驚く無頼。
ここでユトランと目が合った!
白魔道士に限らず、魔力を巧みに扱う者は無意識に視線や『思い』を読み取るのだ。
無頼のユトランに対する『感心』という感情を無意識に読み取るユトラン。
「どうかされましたか?無頼さま?」
櫛を巧みに使い、バンブの寝癖をキレイに整えるユトラン。
「いや、仲のいい兄妹みたいだな」
「え?姉弟ですか?お姉さんもいいですね!ふふっ」
「無頼、話しがややこしくなる!」
そして登校する二人。
今日の電車は、運転手がロックではなかった。
事務的な案内と車両操作。
(停止の時車体が揺れるな、ロックさんの方が数段格上で運転が上手い)
横にちょこん、と座っているユトランを見ると、少々緊張気味である。
「緊張している?」
「う、うん、期待と不安で、ドキドキだよ」
「ルンルンも一緒ならよかったんだけど」
「そうだね、バンお兄ちゃん」
ルンルンは別行動でメヘと打ち合わせである。
「あのねバンお兄ちゃん」
「なんだい?」
「……制服……間に合わなかったけど……目立つよね、ユトラン達……」
「そうだね、私服だし」
「制服、早くできないかなぁ」
バンブは制服にはまったく興味がない。
みな同じ服、騎士団の正装?
しかしユトランは違うようである。
「制服、気になる?」
「うん、早くあのチェックの服、着てみたい!」
電車を降り、歩き出す二人。
周囲に通学の学生達が増え始める。
そして視線も集まる。
(バ、バンお兄ちゃん、視線が……)
(気にするな、ユトラン)
(でも……)
……あ、昨日のなかよし兄妹!……
……来るんだ!……
……メガネっ娘……
……雨天君、喜ぶだろうなぁ……
……あ、竹ちゃんだ……
……竹ちゃん来るんだ……
(……タケちゃん?僕のこと?ああ、もしかして竹箒の竹?)
ブンドル全学校に近づくにつれて、更に生徒の数は増え、視線も比例して増え続ける。
その中でバンブは委員長を見つける。
「!?」
後から数人の男子生徒達が足早に近づく。
(なんだ?)
今回はここまでです。
次回サブタイトルは未定です。
投稿も未定です。
台風対策にバイト、忙しく中々文章が進みません。
毎回ご愛読ありがとうございます。




