第十四話 電車にて
今晩は。
投稿です。
不思議な現象である。
呼び名が変わっただけで、こうも変わるか?と言うほど二人の間柄は、急接近した。
まるで本当の兄と妹のように振舞い始めたのだ。
もし輪廻転生があるのなら、この二人、前世は本当に兄と妹か、もしくは夫婦だったのかもしれない。それほど仲がよく、息が合うのだ。
「では、まずはお家にご招待だ、屋敷はブンドルの東地区なんだ」
「え?南区じゃないの?」
南区は貴族中心の住宅区なのだ。
中央区は王族で、オリオン・ドリオンの塔は西区にある。
北区はダウンタウンと呼ばれたり、暴区、外区、とか言われている。
ギルドは各区にあり、塔周辺が一番多い。
そして東区は傭兵区と呼ばれている、少々荒っぽい地区なのだ。
「歩く?電車に乗る?」
「え?お兄ちゃん、ユトランお金持ってないよ、それに電車なんて……」
「まかせな!」
そう言ってバンブはキラキラ光るカードを見せる。
「うわぁ、特権カード!初めて見た!」
「まぁ落ちぶれ貴族だけど、カードは持ってるんだ」
雷精の加護で動いている電動の大型輸送ゴーレム『電車』。20名程の人や荷物を運ぶことが出来るのだ。
全区を周回している30機ほどのゴーレムで、ほぼ10分おきにやって来る。
運賃はメチャクチャ高い。
ただし貴族、及びクライマーズ50以上はタダである。
あと、5歳以下の家族もタダ、それ以外は生活費に回した方が断然有意義である。
運営しているのはブンドルの街や在住の王族ではなく、王都の国王である。
なんと趣味で動かしているのだ。直接の管理はブンドルの王族なのだが、トップはこの国の王様なのだ。
もちろん、趣味なので利益は度外視である。
コトコト。
のんびりした音が近づいてくる。
「ちょうど来た、乗ろう!」
「う、うん」
「どしたん?」
「ユトラン、服汚れているし……」
「気にするな、僕も結構汚れているよ!」
「え?で、でもこれって、王さまのお気に入りじゃ……」
「乗って喜べば王さまも嬉しいよ、きっと」
電車に乗り込む二人。
ピッ!
カードに反応する魔振。
(作者注*魔振=マシン、魔力で振動する機械のことです)
「二人、東区まで」
「了解しました……ってバンブじゃねぇか?なんだ?デートか?」
運転手が鏡越しにバンブに話し掛ける。
乗客はバンブとユトランの二人だけだ。
「パーティーメンバーだよ!」
「おお、ついに登るか?10階までだったら相談にのるぜ、いつでもきな」
「ああ、その時はよろしくね」
(ねぇ、バンブお兄ちゃん、知り合いなの?)
(ああ、そうだよ)
(貴族の人?)
(違うよ、なんで?)
(え?だってお兄ちゃんのことバンブって)
「あん?あんたどこかで見たことあるぞ?」
「え?」
「ああ、ギルドの回覧かぁ、48階攻略で有名だぜ」
「!」
一瞬で青くなるユトラン。
「あんたの元パーティー、評判よくねぇ、抜けてよかったな。バンブだったら大事にしてくれるぜ」
「え!?」
今度は段々と赤くなるユトラン。
「俺はクライマーズ10、ゴーレムマスターのエフェクト・ロックだ、魔振のことならお任せを!」
「あ、ロックさん商売してる」
「自己紹介だ!」
「わ、私はクライマーズ48、白魔道士ユトランです」
「ひいいいっ!直に聞くとやっぱスゲぇ、48かぁ別世界だぜ!10階まで、とかカッコつけちまって恥ずかしいぜ!」
「ロックさん、口調が全然恥ずかしそうでないけど?」
バンブが冷ややかに問う。
「そりゃ、おめぇ、俺サマは単騎、ソロで10階まで昇ったんだぜ!」
「え!?」
驚くユトラン。
(不可能では?でもウソじゃないみたいだし?」
「ひ、一人で、ですか!?」
「そう、一人でだ、スゲぇだろ?」
「あ、始まった、ロックさんの自慢話!一人?ゴーレムと3人でしょ!」
「ゴーレムはカウントしないんだよ!それにゴーレムは人じゃねぇ、魔振だ」
「そ、それでも凄いです!」
「あー快感!48に凄いと言わせたぜ!バンブ、お前もガンバレよ!目指せ借金返済!まぁ俺の計算じゃ80階三往復したら返済かな?」
「え?」
今度は青くなるユトラン。
「ユトラン、信じちゃダメだよ」
「え?そ、そうなの?」
そんな話しをしながら電車は各駅に停車し発車する。
誰も乗ってこない。
「大丈夫なの?ロックさん、この電車、技術は凄いけどお客が」
「利益は考えていないよ、こいつは国王さまの趣味さ」
「とんでもない趣味だね」
「ジオラマが好きらしいんだけど、こいつは一分の一サイズだからなぁ」
「ジオラマ?なにそれ?」
「何でも王都には150分の1サイズのブンドルの街が作ってあるそうだ」
「ごめん、ロックさんの話し、まったくわからないや」
「趣味の話し、国王の浪漫ってヤツだ!で、ユトちゃん、気づいたか?」
「!……はい」
「さすが48だな、降りたら気をつけな」
「え?なに?ロックさん?」
「おめぇは暢気でいいなぁ?バンブ、窓の外見たか?」
「いや」
「ユトちゃんの元パーティーメンバーとすれ違ったぞ」
「!」
「気づいていたぜ、オーガみたいな顔していたぞ。いやあの顔はオーガに失礼だな、そんな顔していたぜ」
「……お兄ちゃん?」
「どうするよ?バンブ、手伝おうか?」
「いや、僕らで何とかします、それにロックさんゴーレムの運転があるでしょう?」
「あ、こいつ自走するんだ、ちょっと改造してね」
「ええっ!?いいんですか!?勝手にいじって!」
「こいつの基本設計は俺だ、王さま公認だよ。ほれ、着いたぞ東区だ。ユトちゃん、ここからバンブの屋敷まで歩いて10分くらいだ、それ以上時間が掛かったら怪しい、走って逃げな」
「え?」
「へ、変なとこ連れて行ったりしないよっ!人聞きが悪いこと言わないで下さいっ!」
「ははっ、毎度あり!またのご乗車を~」
今回はここまでです。
次回サブタイトルは 第十五話 お家にご招待、でもその前に! の予定です。
毎回ご愛読ありがとうございます。




