第百二一話 握られた手
今晩は。
投稿です。
そのバンブを心配そうに見つめるユトラン。
「まぁ、その後生れた当主さまの御子息は、入学されませんでしたが」
案内役の先生はそう言って、鋭い眼でバンブを睨む。
ユトランはその視線を疑った、いや確信した。
(バンブ・チキンキャロットってバレてる!)
王都からの話しでは名は伏せている、とのことだったのだ。
デテイの関係者として身を隠せ、と言う内容だったのだが。
ここでユトランは疑い始める。
この先生、ただの案内役じゃない、と。
(眼が怖いくらいに鋭いもん!)
しかしバンブは、話しの内容が唐突すぎてその視線に気づかない。
「入学?それは……お金が無いからでしょう……あの借金まみれの没落した貴族がそんなことをしていたのですか……」
「バニッシェンさん、その言葉、訂正して下さい。我らの前でチキンキャロット家の侮辱は許しません」
「!」
「貴族街にありながら、この自由は校風は彼の方のお陰です、見たでしょう?授業風景を、聞こえますか?あの学生達の笑い声が!」
バンブとしては考えが纏まらない。
侮辱?侮辱とはなんだ?
こっちはあのクズな当主のお陰で、借金の山だぞ!王都に身売り寸前だぞ!
会話すら思い出せない存在なんだぞ!
僕が生れる前から、学校を探していた?
そんな教育熱心な奴だったのか?
バンブにとって父親は憎悪の対象でしかない。
しかし反射的にバニッシェンを演じるバンブ。
「そのような方でしたか、あまりよい印象はなかったモノですから。訂正します、失礼を致しました」
「私からの話は以上です、では快い返事を待っています」
挨拶を終え、校門に向うバンブ達。
ユトランはずっとバンブの手を握って離さない。
手を放すと、バンブが何処かに行ってしまいそうな気がするのだ。
(大丈夫かな?大丈夫かな?バンお兄ちゃん……)
ユトランの心はその繰り返しである。
掛ける言葉も見つからず、一生懸命バンブの手を握るユトラン。
「大丈夫だよ、ユートニア」
「……そう?かな?」
校門前、そこにはベリナ、メヘ、雨天、委員長が掃除をしていた。
「おい、いつも掃除をさぼる雨天が、んなとこでナニしてんだよ!」
「そうでぇす!そうでぇす!」
冷ややか眼でメヘが抗議する。
「掃除だ!掃除!」
雨天は小さな手箒で小石や落ち葉、枝などを適当に集めている。
いや、よく見ると撒き散らしている!
「お前らこそナニしてんだ!東国コンビ!」
「あ、差別発言か?それ!」
ベリナとメヘは、それぞれゴミ袋とちり取りを持ってウロウロしている。
「はい……あの……掃除の時間は掃除をしてください」
長い竹箒で綺麗に掃く委員長。
「おいおい、委員長も出待ちか?」
ニヤニヤしながら雨天が委員長を眺める。
「え?いえ……その……私はもともと、ここの掃除当番です……雨天君は教室では?」
「代わってもらったんだよ!」
「そうですか……その……あの……ベリナさんは、実習室だったかと……」
「代わってもらったんだよ!よく覚えてんな!」
「そうですか……メヘさんは……その……渡り廊下だったかと……」
「代わってもらったでぇす!」
そこにやって来るバンブ御一行。
ピタリ、と動いていた4名が止まる。
「ようバン!どうだった?我が、がっこーはよぉ?」
雨天が叫ぶ!
今回はここまでです!
次回もお楽しみに。
次回サブタイトルは 第百二二話 撤収 の予定です。
毎回ご愛読ありがとうございます!




