第十話 動機と本音
今晩は。
投稿です。
「落ち着いた?」
「……はい」
泣き疲れて、ちょっとぐったりしているユトラン。
「あ、ハンカチ、綺麗に洗って返します……ん?」
「……手のひらを見せて」
「?……こうですか?」
「こっちこいこっちこいパンプキン、ちいさなパンプキンやってこい、おもしろいことはじめよう!」
手のひらの上に現われる、小さな魔法陣。
「え!?」
「パンプキンパンプキンどうしよう?パンプキンパンプキン女の子が悲しそう!」
小さな魔法陣から手のひらに、ぽとり、ぽとり、と何かが落ちてくる!
……にゃー……
……にぃー……
……ニャウ……
「えええっ!?」
……ニャッ!?……
……ナッァ!?……
「大きな声は嫌がるよ」
「こ、これって!?」
「ヌッコだよ」
……ねこじゃ……
……なこだ……
……ぬこでは?……
手のひらに乗っかっている5センチ程のネコ。
その数10匹ほど。
手のひらをフミフミしたり頬を擦り付けたり、前足で揉んだり、ネコ達は自由気ままに寛ぎ始める。
「え?」
数匹はユトランの腕を登り始めた。
「え?ち、ちょっと!?」
「ヌッコは嫌いかい?」
「い、いえ、好きですっ!で、でもこれは小さすぎです!可愛いですけど、う、動けません!」
そう、手から落ちそうで動けないのだ!
……ゴロゴロゴロゴロ……
……カミカミ……
……すりすり……
ネコの仕草、様子に魅せられるユトラン。
(かわいい……)
「……あれ?……」
カクン、と下がるユトラン頭。
(ね、眠い……状態異常?眠りの魔法!?……違う、この魔力は……)
覚えていたのはここまでである。
「!?」
眼を開けるユトラン。
「どこ?あ、ギルド横の公園?……あれ?」
目覚めが違うのだ。
爽快なのである。
「気分が……!?」
こんな目覚めは初めてだ。
いつもだったら、眼を開ける作業だって億劫な程だ。
疲労、過労、辛い気持ちは抜けきれず、どんなに寝ても目覚めは重く、血が濁って循環しているような暗い目覚めなのだ。
それがどうしたことか!
「世界が……明るい?」
不安や重苦しい気持ちが半減しているのだ。
全部はなくなっていないが、心が軽くなっているのだ!
「え!?」
周囲に何かいる!?
白、茶色、黒?
ユトランを中心に毛玉が無数転がっている!
ヌッコにしては大きさがバラバラだ。
ユトランの視線に気づき、もそもそと動き出す小さな毛玉達。
……フンフン……
……アンアン……
「ぬぬ!?ワンワンだ!」
……ワフワフ!……
……クゥウウン……
「ぬぬ、こっちおいで!」
……アンアン……
……ワンアウ……
ユトランの周りには、5センチ程の犬が何匹もいた。
数匹はユトランに寄り添い、残り数匹は一瞥しただけで、寝そべっている。
「あれ?バンくんは?」
出店で飲み物を買っている姿が見える。
とことこ。
「今度はオレンジだよ、どうぞ」
「あ、ありがとう……」
アンアン!ワフワフ!
急に騒がしくなる周囲。
小さな犬達が走り回る!
尻尾を千切れんばかりに振り、バンブを迎える犬達。
(あ、バンくん、ぬぬにも好かれているんだ!)
「あの、あの、バンくん、ゆっくり歩いてね?なんだか踏みそう!」
「だよね、でもこいつら素早いし見た目は小さいけど、力は凄いんだよ」
「そ、そうなの?ヌッコは?」
「お仕事終ったんで帰ったよ」
「?」
「癒やしの波動なんだ」
「ヌッコが?」
「そう、ヌッコは象徴で、辛い感情を半分だけ食べてくれる『何か』なんだ」
「え?」
「僕にはそんな風に見えるんだ。見る人によって違うらしいけど」
「ヌッコに……お礼が言いたい」
「ふふっ、その感情は、ちゃんと伝わっているよ」
「じゃ、ヌッコやぬぬを召喚したバンくんにもお礼を……ありがとう……」
「だから、僕は下心があるんだって、パーティー参加という」
「聞いていいかな?」
「なんでもどうぞ」
「なんで塔に登るの?動機は?」
その素直で真っ直ぐなユトランの眼は、バンブの本音を引き出した。
妖精の言うとおり、バンブは基本いいヤツなのだ。
そう、そういう設定なのだ!
「動機は……実は……親の借金があるんだ」
「え゛!?」
今回はここまでです。
次回をお楽しみに!
次回サブタイトルは 第十一話 身の上話、バンブの過去 の予定です。
毎回ご愛読ありがとうございます。




