第七話 お仕事時々お買い物①
若頭補佐が入室直後、開口一番冴太に話しかけた。
「若頭。組長から仕事の依頼です。お時間よろしいでしょう……か?」
確実に話が聞ける様な状態じゃない若頭を見て、困った表情を浮かべる男。
いやな雰囲気を感じ取ったのか、涼花が二人の手を取ったまま忍び足で部屋を出ようとしたところで、シャーリーから待ったがかかった。
「今仕事って言ったわね? その仕事、私が引き受けるわ!」
涼花が両手で必死に手を引くが、ピクリとも動かないシャーリーに、慌てた表情で失言を取り消そうとした。
「ちょちょちょっっっと待った! あんた何言ってるのよ!! ぜ――ったいヤバイお仕事だから大人しく買い物いこ! っね?」
シャーリーの横に移動して、全体重で必死に押すが、それでもピクリとも動かないシャーリー。
「ってかあんたどんだけ体幹?力?強いのよ! びくともしないんだけど」
涼花の言葉も虚しく、話は進んでいった。
「若頭。この女に任していいのですか? 失敗したら全て若頭の責任になりますよ」
今まで何もしていない若頭に嫌気が差したのか、少し嫌み口調で言ったが、冴太からの答えは以外にもあっさりしたものだった。
「あぁ、大丈夫だ」
冴太はこの時、ことの事情を軽視していたのだ。
どうせ失敗するなら誰かにやらせて少しでも言い訳のルートを確保しようと下衆の一面を見せる形で。
「若頭がそう言うならわかりました。涼花様。これから聞く話は他言無用でお願いします」
この言葉に涼花は深い溜め息をついて呟いた。
「様ってなんなのよ……だからこの家に来たくないのよ」
もうどうにでもなれっと思いながら再び溜め息をつき、近くの椅子に腰掛けた。
「それでは説明します。銀座エリアで東陽会の連中が商売を始めたと情報がありました。つきましては東陽会の連中に制裁を加えて頂きたいのです」
あくまで説明は若頭向けて発し、回りが偶々それを聞いていたっと言う体勢を取った。
「制裁って何をしたらいいのよ! 殺したらいいの?」
急に物騒な話になり、今まで話を聞き流してた涼花すら驚きの表情を見せる。
その驚きは、殺しに対しての驚きなのか、こんな可愛らしい女の子から発せられた言葉に対してなのかは本人にしかわからない。
「流石に殺しまでは……戦争に発展しますので……」
この男も涼花同様、驚きの表情を表す。
「シャーリー忘れたの?」
クルルがジト目で睨みながら注意する。その表情を見てギクッっと肩が上がる。
「冗談よ冗談。っで、制裁って何をすればいいの?」
あの目、声のトーン、絶対冗談じゃないとわかっていたが、二人は話を流すことにした。
「あっあぁ――痛い思いをさせ、二度とここで商売が出来ない様にして貰えれば問題ない」
何だ、そんな簡単なことでいいのかと思いながらシャーリーはメンバーに声をかけた。
「わかったわ! 早速行きましょ」
お買い物メンバーに声をかけ、歩きだしたシャーリーだったが、大事なことを思いだしルベルトに声をかけた。
「そうそう、ルベルトも来てよね! 荷物を持つ人がいないから」
満面の笑みを見せてきたが、その心は全く晴れていないルベルトだった。




