第二十九話 決戦 魔王討伐①
後半は冴太視点になっております
妨害魔法が無かったからなのか、魔王の目の前に一瞬で転移することが出来た。
「ひいっえぇ!」
すっとんきょうな声を上げ、涼花が地面に尻餅を着いた。
「涼花! 何で来たのよ! 危ないでしょ! クルル、転移魔法で涼花を戻して上げて!」
シャーリーの叫びにクルルは首を横に振った。
「もう遅いの」
クルルの目線の先には、唇を舐め、不敵に笑っている魔王が既に妨害魔法を行使していた。
「おぉ、勇者達よ。我は待ちくたびれたぞ! あの時は不覚を取られ逃げられたが、次はその身をここに埋めてやるから覚悟しろ」
魔王が立ち上がり、こちらに右手を向けてきた。
異世界勇者三人は、すぐにその危険を察知した。
ルベルト、シャーリーは横に交わし、クルルは皆を守るように防御魔法を展開した。
ドーム型の防御魔法に、魔王から放たれた最上級炎魔法が当たり、辺り一面が赤く染まった。
「いや……死にたくない……」
涼花が恐怖したのか、防御魔法の中でうずくまってしまった。
「涼花!! 何してるの! 早く逃げるの!」
クルルの叫びを聞いた涼花だったが、それでも動けずにいた。
「あの魔王強くなってるの。防御魔法がもたないの……」
クルルの防御魔法の限界を察したのか、はたまたクルルの表情で察したのかわからないが、歩実がクルルの手を取り、魔力を流した。
「歩実よくやったの」
歩実の甲斐あってか、何とか初手の攻撃を防ぐことができた。
「ほぉー、我の魔法を防ぐか。ならこれならどうだ?」
魔王が再び詠唱しだした。
魔力の流れで察したクルルは全員に声をかけた。
「後ろに逃げるの!!!!」
クルルの命令に速水は一人で、ルベルトは冴太を、シャーリーは涼花を、クルルは歩実の手を取り後ろに走った。
次の瞬間、先程までいた空間が割れた。
ルベルトが即時にアイテムボックスを開き、速水に手頃な剣を渡した。
「速水、これで雑魚の処理を頼む」
ルベルトから剣を受け取った速水は、震える手を誤魔化し、剣を受け取った。
「……わかった……」
「ちょっと冴太! あんた何してるのよ! 勇者でしょ! 前に出て戦いなさいよ!」
「おれは…………」
冴太side
何をやっているんだこいつらは。ゲームを買いに行くだけじゃなかったのかよ。こいつらが勇者? それは百歩譲ってよしとしよう。だが俺は、勇者じゃない。
いや、ゲームの中では勇者だがこいつらが思っているような勇者じゃない。どこで間違えたんだ。
こいつらは良い装備で魔王と対等に戦っているかも知れないが、俺の装備はただの見栄えだけだぞ!
剣もただのプラスチックだし、鎧も軽いアルミを使っている。こんなんでどう戦えって言うんだよ。
まぁー確かに、ちゃんとした装備を貰ったとしても、戦える気がしないんだが……悠都の奴、何で対応出来てるんだよ! 谷本も何で魔法使ってるんだよ!
全然理解出来ないんだが……
たしかクルルの奴、もう転移魔法で逃げれないみたいな事言っていたが、ここで俺ら死ぬのか? 冗談じゃない!
今日、やっとパーティープレイが出来ると思っていたのに…………
冴太はここで初めて魔王を観察した。
ルベルトとシャーリーが魔王に近付けないでいる。
クルルが魔法で牽制している。
悠都が雑魚をなぎ倒している。
谷本が魔法防御を展開している。
涼花がうずくまり、震えている。
ルベルトとシャーリーが魔王の薙ぎ払いを避けるために、クルルの位置までバックステップで回避した。
その直後、着地地点に魔王の炎魔法が炸裂するが、クルルの魔法防御で相殺する。
いや待て……この動作、ドラゴンハンターの裏ボスと同じ動きじゃ……
俺の読みが正しければ次に魔王は雑魚を召還するはず…………
来た! 間違いない! これなら行けるかも知れない。ただ俺はゲームの様に動けない。こいつらに指示を出すしかない。
「谷本! まだ魔法は使えそうか?」
「えっ……うん……大丈夫だと思う」
よし、これで第一条件クリアだ。次だ!
「悠都! そいつらの相手はどれぐらいできる!」
「一対一なら五分か……な!!」
よし、五分も持てば充分だ。次だ!
「クルル! もう魔法は使えるか?」
「誰に言ってるの。クルルが魔法で遅れを取るわけないの」
「水魔法もか?」
「もちろんなの」
よし、準備は整った。あとは…………
「涼花! そこから一歩も動くなよ。そこは安全だから大人しく見ていろ」
「えっ? うん……わかった」
予期せぬ場所、予期せぬパーティーメンバーだか、ここでタイムアタックと行こうじゃねぇか!
「おれは…………勇者だ!」




