第二十六話 クルルの放課後
歩実の家で魔法の訓練を行うため、クルルと歩実は二人、たわいもない話をしながら歩いていた。
「た……ただいま……」
自分の家にも関わらず、恐る恐る家の玄関を開ける歩実。
玄関を開けた先に丁度、麻美の母親らしき人が見えたのでクルルは頭を下げた。
その母親らしき人は、歩実の返事にも、クルルの態度にも何も答えず、そっぽを向いてリビングへ消えていった。
「仲悪いの?」
歩実の母親と歩実の空気を感じ取ったクルルは、聞いては行けないと思いながらも、聞かずにはいられなかった。
「うん……昔はそうじゃ無かったんだけど……私の体質を良く思えないみたいで……クラスの皆も薄々私の仕業って思ってると思うの……」
歩実は寂しい表情でクルルに説明した。
「そうなの……でも、クルルはずっとそばに居るの」
やっとの思いで見つけた魔法使いなのだ。人間関係ごときで手放すものかと思うクルル。
同じく幽霊に取り憑かれ、その制御を完璧に出来ているクルルに、制御のやり方を教えてもらおうと思う歩実。
こうして二人の秘密の特訓が行われるのであった。
麻美の部屋にて
「まず初めに言っておくの。体内から出てきそうな物を無理やり押さえ込んだらダメなの」
歩実の魔力暴走の原因は、魔力に要らぬ負荷をかけているのが原因なのだ。まずは、そこのところを教えておこうと思うクルルだった。
「で……でも、出てきたら悪さしちゃうし……」
「大丈夫なの。出て来てもその辺に漂わせてればいいの」
ここは言ってもわからないだろう。実際にやってみるのが一番だと思ったクルルは言葉を付け足した。
「次、出てきそうになったらそれを出すの。悪さしそうならクルルが止めるから安心するの」
幽霊を完璧に制御出来ているクルルの言葉だ。一度信じて見ようと思い、歩実は首を縦に振った。
「次はそれを故意に出す練習なの」
クルルのこの言葉で、歩実は緊張と同時に不安を覚えた。
故意に出す? 冗談じゃないっと歩実は思った。今までこれのせいで回りに迷惑ばかりかけてきたのに、それを自分から行うなんて考えられなかった。
不安と緊張が高まった歩実の体内から膨大な魔力が湧いてきた。
「歩実! 落ち着くの。それを押さえ込んだらダメなの。クルルが居るから安心するの」
歩実は溢れる何かと戦いながらクルルの声を遠くに感じながら聞いていた。
こんなの外に出していいの? クルルちゃんは本当に大丈夫なの? 多くの不安を抱きながらも、もう、これと戦うのも疲れたや……どうせ暴れるならクルルちゃんに任せようっと思い、クルルの言う通り、押さえ込む力を緩めた。
すると歩実の体内から、赤、青、黄、茶、黒、白の色を帯びた光が溢れだした。
「すごいの……」
クルルの口から気が付いたらこの言葉が漏れていた。
全属性の魔法の光。
光の色の濃さ、魔力の量。全てが桁違いだった。
歩実もゆっくり目を開け、部屋の惨状を確認しようとしたが、そこにはカラフルな色の光が漂っているだけで、何も起きてなかった。
「きれい……」
歩実から徐にでた言葉だった。
クルルは思った。
このままクルルが魔法を使うことが出来なければ、この歩実に転移魔法を開いて貰おうと。
それならすぐに魔王討伐に向かえる。
後は、ルベルトの結果次第で、魔王討伐に向かおうと思ったクルルだった。
「あの……クルルちゃん……この光直せないの?」
歩実の不安とは対照的に、クルルは喜んでいた。
「いい光なの。ほっといたら勝手に消えるの。でも、他の人にはほぼ見えないから安心するの」
「ほぼ……って……」
歩実は思った。こんなハッキリとした感じの光では無かったが、今までに二回ほど見たことがあったなと。
一回は確か普通の街中で、もう一回はテレビの占い師の人から見えていた。
あの人達も私同様に取り憑かれていたんだ。私だけじゃ無いんだ。そう思うと、心が大分マシになった歩実だった。




