第二十五話 ルベルトの放課後
メンテナンスの事を忘れてました。
全話、改投していきますが、内容の変更はありません。
ルベルトと速水は下校途中、一度も会話を擦ることなく、道場にたどり着いた。
「みんな、すまないが今日はこれで道場を閉めさせてくれ」
速水の言葉に門弟達は、文句も言わず、黙々と後片付けをした。
「なぁー速水。いいのか?」
「いいか悪いかで言うと、あまり良くないな。ただ、俺が負けるとこを見られたくないだけさ」
速水がそこまで言うならそれでいい。二人は門弟の後片付けをただ見つめるのであった。
「これで人が居なくなった。さっきの試合の続きを始めよう」
速水が黙々と胴着を身につけ準備していく。
「ルベルトも準備してくれ。胴着はそこの奴を適当に使ってくれて構わない」
ルベルトは、速水に指された胴着に目を向けると、そこには学校で身につけた物と同じ物が複数あった。
ルベルトはこの胴着の視界の狭さに不満を思いながらも、速水の指示通り身につけていく。
「準備出来たな。手加減はいらない。合図と共に本気で来てくれ」
ルベルトは初め、速水の実力を見るために自分から仕掛けないつもりだったが、速水が言うなら、最初から全力で行こうと思うのであった。
「合図する人が居ないからこのコインが地面に落ちた音を開始の合図とする。それでいいか?」
「あぁ、それでいい」
速水がコインを高く上げ、それぞれ竹刀を構えた。
速水は中段構え、ルベルトは脇構えでコインの落下を待った。
一秒……二秒……コインが地面に落ち、音が鳴ったと同時に、速水の胴着からも乾いた軽快な音が道場内に響き渡った。
速水は呆然とした。脇構えから放たれた竹刀が全く見えなかった。
気が付いたらルベルトが速水の後ろで竹刀を振り抜いていた。
更に、コインが地面に落ちる直前、ルベルトから放たれた殺気を感じ、一歩も動けなかった。
「ハハハ、驚いたよ。何が高校生期待の星……何が日本代表…………何が………………」
速水はあの事件以来、毎日欠かさず竹刀を振ってきた。誰かを守るため、大切な人を守るため。
しかし結果はこの様だった。
あの頃から何一つ変わっていない。あの頃同様、一歩も動けなかった。
速水が過去に打ち拉がれ、竹刀を落とし膝をついた。
そんな速水を見たルベルトは何も言わず手を差し伸べた。
「なんだいその手は……僕を哀れんでいるのかい……どれだけ必死で僕が剣を振ってきたと思っているんだ!」
速水はルベルトの手を取らずに立ち上がった。
「どれだけ剣を振っていたかはわからない。ただ、速水より俺の方が剣を振っていた。その結果がこれだと言うことだ」
ルベルトのこの言葉に速水は激昂した。
「僕が剣の振った数で負けているだと!? お前に何がわかるんだ! 僕が剣のためにどれだけ犠牲にしてきたか、わかっているのか! 趣味も捨て、遊びの誘いも全て断り、全ての時間を剣につぎ込んだ!」
速水が剣を取り、ルベルトに襲いかかった。
剣道のルール、型など関係ない。全てを剣に乗せ斬りかかる。
その斬り込みをルベルトは同じく剣で流していく。
一発、二発、三発……全ての斬撃を受け流し、ルベルトが反撃する。
速水の胴着から何度も乾いた音が鳴り響き、再び速水は竹刀を手放した。
「僕の今までの時間は無駄だったのか……」
「いや、無駄じゃない! 速水はまだまだ伸びる。今まで以上に鍛練したら良いだけの事だ。一つ、話しておこう」
ルベルトが面を取り、話し出した。
「俺は三歳の時、親を目の前で殺された。その時から毎日朝から夜まで復讐のために剣を振ってきた。学校にもろくに行かず毎日だ」
速水の表情は面で見えないが、ルベルトの話を黙って聞いていた。
速水は思った。学校にも行かず剣を振っていた? 僕が剣の振った数で負けているじゃないかと。ルベルトは本当に全てを犠牲にしていたのだと。
今までの発言を思い返して、速水は急に恥ずかしくなった。
「僕の犠牲が足りないだけか……恥を忍んで言うよ。僕に剣を教えてくれないか?」
「あぁ、それぐらいいいぞ! でも、俺の復讐に協力してくれないか?」
ルベルトの復讐。
それは言わずもなが魔王討伐の事だ。
今は少しでも戦力が必要だ。伸びる奴を育て、少しでも戦力を補充しようと考えてるルベルト。
「復讐の協力か……それは少し考えさせてくれ……」
速水の答にルベルトは考えたが、あの場にこれ以上の剣士は居なかった。他の奴を探すのにどれ程の時間がかかるかわからない。
それだったら速水を育てて、協力してくれる可能性にかけた方が良いと思い、ルベルトは返事をした。
「わかった。いい返事を期待しているよ」
こうしてルベルトによる、異世界流の剣技指導が行われるのであった。




