第二十四話 シャーリーの放課後②
三人と別れた福田は、今まで経験したことが無い程の絶望を味わっていた。
「お前、俺らに喧嘩売っといてタダで済むと思ってんの?」
「こいつのせいでマジ白けたっしょ」
「取り敢えずあっち連れて行かね?」
男達に好き放題言われながら、強引に路地裏へ連れていかれた福田。
「こいつ震えてるっしょ。マジうけるっしょ」
確かに福田は震えていた。震えを誤魔化そうと舌を噛んでみたり、手のひらに爪を食い込ませたりしたが、その震えが止まることは無かった。
しかし福田は、後悔などしていなかった。こんな目に遭ってもなお、三人が無事に楽しめているかを心配していたのだ。
「あ~イライラするなっ!!」
男の一人が、今のイライラを拳に乗せ、福田の顔面を殴り付けた。
殴り付けられた福田は、山積みにされたゴミ袋を撒き散らしながら、地面に倒れこんだ。
「こいつ全然やり返してこねーじゃん。余計白けるわ」
意識の遠退く中、福田は男の声を聞いていたが、福田はすでに三人を守ると言う目的を達成している。
今さらやり返そうとも思わないし、勝てるとも思っていなかった。
「てか、今から探せばまだあの女達見つかるんじゃね?」
この言葉に福田は、途切れそうな意識に鞭を打ち、男の足首を掴んだ。
「こいつどんだけしつけーんだよっ!!」
男はさらに福田の顔面に蹴りを入れるが、福田はけして手を離さなかった。
二発、三発、四発。男から蹴りをもらい、遂に福田が限界を迎えた。
「おめぇーマジでうぜーんだよっ!!」
五発目の渾身の蹴りをもらい、遂に福田の手が離れた。
「マジ最悪だわ……靴が汚れっちまったよ。今日は白らけたから俺帰るわ」
男のこの言葉を最後に安心したのか、福田の意識はここで途切れた。
シャーリーは一人、来た道を引き返し、隈なく福田の事を探していた。
店内、雑居ビルの中、路地裏。隈なく探して漸く福田を見つけることが出来た。
しかしその福田は、先ほど会った時とは違い、顔は腫れ、口からは血を流していた。
シャーリーは、急いで福田の元に駆け寄り、声をかけた。
「あんた! 何してるのよ! 大丈夫なの!?」
福田を揺すったり、少し叩いたりした甲斐あってか、痛そうな表情で半目を開けた。
「あれ? シャーリー……どうしてここに……」
口の中が切れて痛いのか、声も途切れ途切れで見ていて痛々しい状況だった。
「二人があんたの事を心配してたから私が様子を見に来たのよ!」
シャーリーの言葉を聞き、福田は悲しそうな表情で聞いた。
「シャーリーは……俺の事……心配してなかったのか?」
どんな答えが返ってきてもいい、どんな答えでも福田は受け入れるつもりだった。
「なんで私があんたの事を心配しなくちゃいけないのよ!」
シャーリーのこの言葉に福田は、受け入れるつもりだったが、感情が堪えきれなかった。
その感情が涙として、静かに頬を伝った。
「あんた何泣いてるのよ! 勝てないなら最初から言いなさいよ! 私てっきり勝てるから前に出たと思ったじゃない!」
そう言ったシャーリーは、口から流していた福田の血を、服の袖で拭いてあげた。
「シャーリー……何して……服が……」
「そんなのどうでも良いわよ! 血は止まってるみたいね。次からは勝てそうになかったら先に言うのよ! あんた何また泣いてるのよ!」
福田は先程とは別の種類の涙を流すのであった。
シャーリーが福田に肩を貸し、二人の元に戻ると、麻美と涼花が慌ててこちらに近寄ってきた。
「福田君、ど……どうしたの!」
涼花が福田の状態に驚きの声をあげた。
「福田……ごめん…………」
麻美が俯き、本当に申し訳なさそうにポツリと謝った。けして麻美が悪い訳ではない。しかし、謝らずにはいられなかったのだ。
「坂下……笑顔はどうした……らしくないぞ」
福田は麻美に対して、痛む顔で無理やり笑顔を作った。
「うん……ありがとう福田。折角だし四人で遊びに行こうか。みんなそれでいい?」
麻美の提案に、涼花とシャーリーは頷き、予定していたプリクラを撮りに行くのであった。
目的地に到着して、四人で何事もなくプリクラを撮り終えたが、福田は言おうか言わないか迷っている素振りを見せていた。
「なぁ。俺、シャーリーと二人でも撮りたいんだが……」
福田が誰とも目を合わさず、俯きながら呟いた。
「そうなの? 別に良いわよ!」
シャーリーは別に、対したことではないと思っての発言だったが、涼花と麻美は、あんなことが合った手前、出来れば望みを叶えてあげたいと言う思いだった。
「いいのか!? やったー!」
福田は痛みも忘れ、大きくガッツポーズした。
シャーリーと福田がプリクラを撮り終えた。
出てきた写真の福田は、人生で一番酷い顔だったが、人生で一番の笑顔がそこに写っていた。
シャーリーの放課後はこれにて完結です。
次回はルベルトの放課後を投稿します。




