第二十一話 剣道
午前の授業、昼休み共に、何事もなく終わり、午後の授業となった。
「午後は体育か……嫌なんだよな……」
冴太の愚痴を聞きながら、シャーリーとクルルは涼花に。ルベルトは冴太に着いていき、別れての授業となった。
「男子と女子別れて授業するんだな。所でこれから何をするんだ?」
男女別れての授業を珍しく思いながらも、これから何をするかが、気になったルベルト。
「今日は剣道って言ってたかな……ルベルトは多分見ているだけでいいぞ。体操服ないし」
剣道とは何か分からなかったが、見ているだけで良いのならそれに従おうと思ったルベルト。
「よし、行くか」
体操服に着替え終わり、冴太とルベルト、クラスメイトがぞろぞろ体育館に向かうのであった。
「え――――、それでは皆さん、胴着を身に付けて下さい。くれぐれも怪我の無いようお願いします。え――――ルベルト君は形の稽古をしていませんので端の方で見ていてください」
この体育教師、歳は七十を超え、剣道経験も皆無。
しかし、未だに現役教師を自ら続けたいと志願した教師大好き爺さんだ。
「え――――今日はトーナメント戦をしますので、え――――各自準備運動してください」
教師のこの言葉に、クラスメイトは不満を口にした。
「トーナメントって……結果は見えてるじゃん」
「速水とは当たりたくないな」
「逆に殆ど観戦で楽なのでは」
クラスメイトの不満も虚しく、対戦表は作られていった。
「え――――それでは最初に春日君と山本くんお願いします」
教師に呼ばれた二人は体育館の真ん中に移動し、礼式を行った。
「始め!!」
教師の掛け声と共に二人が動き出した。っと同時にルベルトは驚いた。
こいつらは本気で戦っているのか? 手を抜いているとしか思えない剣捌き。クルルに仲間を探して。っと、言われていたが、冴太以外に見つかる気がしないと思ったルベルト。
「一本!! そこまで!」
春日君が最後に面を打ち込み試合が終わった。
「え――――次は、厳島君と平野君お願いします」
冴太が嫌々体育館の中央に移動した。
「それでは始め!!」
教師の合図と共に、平野君が一気に間合いを詰めた。しかし、冴太は動かない。
冴太が動かないまま、面に打ち込まれ試合が終わった。
「一本!! そこまで!」
冴太が何食わぬ顔でルベルトの隣に腰をおろした。
「冴太! いや勇者! なぜ本気を出さない!」
ルベルトの激昂した姿を見て冴太は驚いた。
「何そんな怒ってるんだ? ってか、今勇者は関係ないだろ?」
ルベルトの怒りを疑問に思いながら、胴着を脱いでいく冴太。
「本気で戦わないと相手に失礼だろ」
ルベルトの言い分に、ばつの悪るそうな顔で言い訳した。
「た、確かに本気を出さなかった事は俺が悪い。ただ、ここで無駄な体力を使って、いざと言う時に動けないのも駄目だろ? その変は理解してほしい」
冴太の言い分にルベルトは返事に詰まった。
確かに、模擬戦で体力を使い果たし、そこに敵が攻めてきて動けなかったとなれば、笑い者では済まない。
「わかった……ただ、次に戦う機会があったら本気で戦ってくれ」
次の戦う機会がいつになるか分からなかったが、冴太は 「わかった」 っとだけ呟いた。
「え――――次は速水君と福田君お願いします」
教師に名前が呼ばれ、二人が中央に移動する。
「福田――お前残念だったな」
「福田――五秒は耐えろよ――」
クラスメイトから散々な言われようだが、それもそのはず。相手の速水は全国高校剣道大会で一年生ながら優勝。プロ選手にも引けを取らない強さなのだ。
「それでは…………始め!!」
教師の合図と共に両者が睨み合った。
この時、ルベルトは速水の強さに感心した。
今までの模擬戦を見てきたが、素人ばかりだった。しかしこの速水は違う。相当剣の練習をしたに違いない。
他の人と動きが全く違う。この男なら仲間に出来るかも知れない。っとルベルトは思ったのだ。
「そこまで! え――――速水君の勝利」
その後もルベルトは速水の剣捌きを見ようとするが、すぐに決着がつき、全力が見れなかった。
「ほらな、やっぱり速水が優勝じゃないか」
「てか、高校生最強にどうやって勝つんだよ」
「あれ? そう言えば剣道って両手剣じゃね? 両手剣なら誰にも負けないって奴居たよな?」
クラスメイトの視線がルベルトに集まった。
ルベルトとしても願ってないチャンスだった。自分なら相手の本気にも耐えられる。自分なら相手の技を全部引き出せると。
このチャンスにルベルトは立ち上がり、教師に言った。
「先生! 俺に速水と試合させて下さい」
キレキレの動作で頭を下げるルベルト。
「え――――ルベルト君は初心者だし、怪我をされては困るからね……しかし、そこまでされては……速水君、初心者相手でも怪我無く出来ますか?」
教師の問に速水は即答した。
「えぇ、問題ありません」
ルベルトの自己紹介が気に触ったのか。ルベルトを見ながら答えた速水。
「え――――それではルベルト君は胴着を来て下さい」
ルベルトは冴太の胴着を奪い取り、直ぐに着替えた。
「悠都。あまり本気でやるなよ。ルベルトは初心者なんだ」
「わかってるよ冴太」
話を流す感じで右手を振り、中央に移動した。
「え――――それではルベルト君と速水君の試合を始めます。両者構えて……始め!!」
教師の構えの合図で速水は中段構え、ルベルトは脇構えした。
「おいルベルト、なんだその構え」
「あの構え ドラゴンハンターの両手剣の構えじゃね?」
「おいおいルベルト、ゲームの話してたのかよ」
回りから笑い声が上がるが、速水は一歩も動けずにいた。
今の体勢を崩せば、直ぐに斬りかかって来そうな威圧感。足を引くことも、腕を下げる事も出来ない。
今まで感じたことの無いプレッシャーが速水を襲っていた。それと同時に、勝てない事も瞬時に悟った。
ルベルトは動かない。ルベルトが動けば直ぐに決着がつく事が分かっていたからだ。
決着をつけることが目的ではない。相手の技を見る事が目的なのだ。だからけして、ルベルトから動くことはなかった。
両者が数秒睨み合った後、ルベルトが望んでいない形で試合が終わった。
「負けました」
速水の一言で辺りに沈黙が流れたが、それも数秒だった。次第にクラスメイトが騒がしくなり、それが爆笑の渦に変わった。
「ルベルトが変な構えするから、速水がやる気無くしたじゃねーか」
「流石両手剣最強(精神)」
クラスメイトの野次には耳を傾けず、速水はルベルトに近付いた。
「放課後、僕の道場で再戦出来ないか?」
速水の提案にルベルトは一言、「わかった」 と答えた。
こうして、ルベルトと速水の二人だけの試合が行われるのであった。
初めてルベルトの強さが明るみになりそうですね。
この続きは
ルベルト
シャーリー
クルルの各放課後パートで書きます。
よろしくお願いします。




