第十七話 初登校
次の日の朝、雲一つ無い青空が広がっている中、冴太の目覚ましで四人は目を覚ました。
「冴太、朝なの。早く学校行くの」
クルルが目覚めて早々学校に行こうと部屋の扉に手をかけたので冴太が待ったをかけた。
「待て待て、まだ準備も何もしてないだろ。せめて着替えさせてくれ」
冴太の待ったに不服そうな顔を浮かべたクルルは 「早くするの」 とだけ言い、扉から手を放した。
冴太が急ぐ訳もなく、いつも通り制服に着替え自分のペースで準備を進める。
「学校は制服なのか。所で、俺らは制服持ってないが大丈夫なのか?」
ルベルトの疑問は最もだったが、無いものは仕方がない。朝一で校長室に行ったら問題無いだろうっと、冴太は思った。
「取り敢えずクルルとシャーリーは昨日買った服でも着ていったらいいだろう。ルベルトは俺の制服を貸してやるからそれに着替えてくれ」
冴太の答えが遅かったのか、シャーリーが転移してきた時に着ていた装備品に手をかけた所だった。
「な……なによ! 片付けようとしただけよ! 何勘違いしているのよ! これを着ていく訳ないじゃない」
シャーリーの必死の弁解にも関わらず、三人は何も言わずにただただシャーリーを見つめるだけだった。
「なによ! もう!! 冴太がもっと早く言わないのが悪いんでしょ」
三人の視線が痛かったのか、直ぐに弁解を諦めたシャーリーだった。
登校する準備が終わり、四人が家の門を出たところで見知った人物と遭遇した。
「おはよー冴太。ってあれ!? 何で三人も居るの? まさか冴太の家に泊まったの?」
涼花の疑問を無視し、クルルが冴太を急かした。
「早く学校いくの」
冴太は涼花に 「歩きながら説明する」 と言い、学校へ向けて歩きだした。
「そうなんだ…………って普通どんなに急いでいても宿ぐらい取ってくるよね!?」
薄々変な人達だと感じていたが、ここまでとは思わなかった涼花は呆れ果てて次の言葉が出なかった。
「まあ、俺としては良い物も見れたし満足なんだが、まさか学校まで入学してくるとは……」
冴太も涼花同様呆れを通り過ぎて、その行動力が欲しいと思う程だった。
そんな話をしていると学校が見えてきた。
「クルル、学校に着いたぞ! 涼花、俺らは校長室に寄るから先に教室に行っといてくれ」
そう言い冴太は涼花と別れ、四人で校長室に向かうのであった。
「へ――なかなか綺麗な学校じゃない」
シャーリーが辺りを見渡しながら感想を述べた。それに釣られて、クルルも辺りを見渡した。
「やっぱり俺には学校は合わないな」
ルベルトが頭を掻きながら行きたくないアピールをするが、この程度で諦めるクルルではない。
しばらく辺りを見渡し歩いていると、冴太が急に立ち止まった。
「ここが校長室か、お前ら着いたぞ」
そう言い冴太は校長室の扉をノックした。部屋に入ると頭の寂しいおじさんが一人、椅子に腰掛けていた。
入学式や全校集会でも何度か見かけたことがあるが、いちいち顔まで覚えていない。入室直後、校長が冴太に話しかけてきた。
「おぉ、冴太君。朝からどうしたんだ? それと部外者は入校してはいけないよ」
学校関係者で唯一親の職業を知っている校長は、その息子である冴太を他の生徒より特別扱いしている。
「え――単刀直入に言うと、こいつらを入学させて欲しいんだ」
遠回しに言っても話が拗れるだけなので、目的だけハッキリ伝えたが、校長は呆れたように首を振った。
「いやね、流石にそれは無理だよ冴太君。こんな時期に入学なんて」
予想通りの答えが返ってきたので、親父に言われた通りの言葉を言うことにした。
「父が"花をとる"と言ってました。あれ? "花をやる"だったかな?」
冴太がどっちだったかな? っと、思い出していると、校長が摩擦の少ない頭から大量の脂汗を滲ませた。
「こここ冴太君、どっちを言っていたんだい。思い出してくれ」
冴太は必死に思い出そうとしたが、やはりどっちだったか思い出せなかったので、その時、同じ場にいた三人に確認を求めた。
「お前ら何て言ってたか覚えているか?」
冴太の問にルベルトは考える素振りを見せた後、答えた。
「たしか、"花をとる"だったような」
ルベルトの発言に校長は滝のように脂汗が流れた。
「ルベルトがそっちなら答えは"花をやる"ね!」
覚えている覚えていない関係なく、ルベルトとは逆の方を選ぶシャーリー。最後に全員の視線がクルルに集まった。
クルルは呆れ果てて深い溜め息をつき、口を開いた。
「"花をやる"なの」
クルルの自信ありげな発言に、校長の滝はひとまず収まった。
「ほらね! やっぱり私が合ってたじゃない!」
シャーリーが自慢げに胸を張るが、その光景は誰も見ていなかった。
「わかった。入学手続きはこっちで進めておくから、冴太君。君の担任を呼んできておくれ」
そう言い校長は引き出しから紙を取り出し、必死に何かを書き始めた。
「それじゃ俺はちょっと行ってくるからお前らはここで待っててくれ」
冴太は急ぎ足で校長室を後にした。
「所でこの学校は剣か魔法どっちなのかしら、今まで練習してる人は一人も見なかったけど」
校長室の窓から外を眺めていたシャーリーは疑問に感じていた。
「多分魔法学校ではないの」
ここに来るまでに、魔法の気配を全く感じなかったクルルは、魔法学校ではないと予想する。
寧ろ、冴太が大剣使いの時点で魔法学校の線は消えていたのだ。
「だったら剣士学校? 誰も武器なんて持ってなかったわよ」
シャーリーが疑問符を浮かべる最中、ルベルトが徐に呟いた。
「まさか、雑学を学ぶ学校じゃないよな……」
ルベルトの呟きにシャーリーの頬が引きつり、場に沈黙が流れた。
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