第十五話 報告会②
涼花を家の前まで送り、冴太も自分の家に戻ろうとしていたが、未だに三人が後を着いてきていた。
「お前らも宿に戻れよ。今日はもう解散だぞ」
冴太の言葉とは裏腹に、三人は冴太の後ろを着いていき、シャーリーが徐に口を開いた。
「何言ってるのよ! 急遽来ることになったんだから宿なんて取ってるわけないでしょ! もう忘れたの?」
確かに急遽来たとか何とか言っていた。しかし、宿ぐらい普通取ってくるだろっと思う冴太だったがここでそれを言っても仕方ない。
「わかった、わかった。今日だけ泊めてやるから着いてこい」
そう言い、家の門を開けた。
玄関を開け、自室に向かって歩いていた四人だったが途中、組長と出会い止められた。
「おい! 若頭。後で俺の部屋にこい。ついでにその舎弟も連れてこい」
それだけ言い組長は去っていった。
組長が冴太を若頭と呼んだと言う事は間違いなく仕事関連の事だ。
恐らく銀座関連の事だろう。
しかし、もう一つ気になったのは俺は舎弟なんて持ってないぞ? もしかしてこいつらの事か? と思いながら、言い訳を考えるのであった。
「あ――なんか親父に呼び出されたから先にそっちに行くぞ! お前らも呼ばれてるっぽいから一緒に来てくれ」
三人を連れて親父の自室まで向かい、扉を開けた。
扉を開けたと同時に、冴太に抱きついて来る一人の女性がいた。
「冴太―― どこも痛とうないか? 母さん心配したんやで?」
清香は右手に刀を携えたまま、冴太に抱きついた。その光景に三人は一斉に身構えた。
ルベルト、シャーリーが前へ出て、クルルがその後ろで構える。いつもの戦闘陣形が完成した。
「母さん、取り敢えずその刀置いてくれ。それと今が痛い……」
このまま絞め殺されるのでは無いかと思う程の力。痛くないかと聞く前に、自分の行動を見直して欲しいと思う冴太だった。
「清香、それぐらいにしておけ」
親父の言葉で渋々といった形で冴太を解放した清香。
「なんやー、子供の心配すんのは親の務めやろ」
清香の言い分には耳を向けず、親父は冴太に話しかけた。
「冴太、それでどうだった?」
どうだったとは、恐らく銀座の仕事の話だろう。乱れた服を整えながらいつもの様に言い訳を組み立てていく冴太。
「銀座エリアを一通り見回ったが…………」
冴太が言い訳をしている最中に部屋の扉が勢いよく開いた。
「組長! い……今、東陽会の連中が家に来て、家の組を随分可愛がってくれた見たいやな。落とし前付けてもらうぞ! と………」
急いで来たのか、この男は息が上がり、額からは汗が滲んでいた。
この報告を聞き、組長は冴太に目を向けた。冴太も訳が分からず、後ろで身構えている三人に目を向けた。
冴太に目で話しかけられた三人も訳が分からず、辺りを見渡し、他に目を向ける人がいない事に気付き、取り敢えず頷いた。
「で、東陽会の連中は今どこだ」
組長が報告してきた男に聞いた。
「それが……それだけ言い帰っていきました……」
その話を聞いた組長は「そうか」っと、短く呟き顎で男に退出するよう命じた。
それを察した男は部屋を後にした。
組長は考えていた。
この件については冴太しか関わっていない。他の組員には関わるなと命じていたからだ。
この件についても冴太は御託を並べて言い訳するのだろうと考えていたが、実際は違った。
東陽会の連中がわざわざこっちにまで来て宣戦布告してくると言う事は、やったのは間違いなく幹部クラスだろう。
しかし、本当に冴太に出来たのか? 舎弟を向かわしたと若頭補佐の報告であったが、実際蓋を開けてみたら舎弟はただのガキじゃないか。
しかも女も混じってやがる。冴太が出来ないと考えるなら、やったのは恐らく冴太の舎弟だろう。
舎弟がやろうと冴太の舎弟な以上、手柄は冴太だ。一度試してみるか。
そう思い、組長は立ち上がり、一番可能性がありそうなルベルトの前まで移動した。両者が数秒目を交わした後、組長が口を開いた。
「俺が今からお前を本気で殴るから耐えてみろ」
組長の言葉に慌てた冴太は直ぐに止めにはいった。
「親父! 急に何言ってんだ! こいつは俺の……」
最後まで言う前に組長は右手を振りかぶっていた。間に合わない。
冴太はそう思い目をつむり、目を反らした。しかし、一向に打撃音が聞こえない。
恐る恐る目を開け、ルベルトと組長の方に目を向けると、ルベルトの顔面数センチの所で組長の右手が止まっていた。
所謂寸止めと言うやつだ。冴太は安堵し、組長は笑いだした。
「ハハハ、おめぇー一切目を反らさなかったな。どうしてだ」
高笑いでルベルトに尋ねた組長だったが、ルベルトの答えは単純なものだった。
「え――単純に殴る気が感じられなかった」
この言葉に再び組長が高笑いを浮かべた。
この男もそうだが、近くで控えていた女二人も瞬きすらせず、ずっと直視していた。
普通のやつなら冴太みたいに目を反らすはずだ。
実際、目を反らした冴太は普通だと言う事だ。こいつらの度胸だけ見れただけでも収穫があったと言えるだろう。
「何にしても冴太。よくやった。もう下がれ」
自分の息子の成長と、仕事の成功で気分をよくした組長は、冴太達に手を払い、退出を命じた。
それを見た冴太は部屋を出ようと歩いていき、その後をルベルトとシャーリーが続いた。
クルルを除いては……
まさかの学園生活始まるか!?




