27/33
天国の雨音
「大丈夫です。今日は、親が親戚の集まりに行ってて。」
「ふーん。じゃあ、お留守番お願いしますね。」
ブラックフォード先輩はそっけない返事をして、高等部指定の鞄から自分の財布だけ出して私へ告げた。
「川沿いに西へ進んで2つ目の曲がり角のコンビニ。ご存知ですか。」
「はい。」
立ち上がって返事をすると、それを掌で制しながら先輩は続ける。
「万が一、それが死んでしまわないように見張っててください。」
「はい。」
ドアが完全に閉まるのをきちんと見続けながら、私はむくむくと湧き上がる興奮を抑えきれずに口の端を歪めた。
「せんぱーい…せんぱーい、寝てますか?」
私は腰を落として耳元へ顔を移動させ、囁くように問うてみる。
息がかかるくらい近距離なのに、全く微動だにせず横たわっている身体。
ただ、換気のためにブラックフォード先輩が開けた窓から吹き込む涼しい風が、そよそよと水色に染色された髪を揺らしているだけだった。
「ふ、ふふふふふ。」
私は噛みしめきれない笑いを漏らしながら鞄をつかみ、中から何時も持ち歩いているMP3プレイヤーを取り出した。
そこから延びる赤いイヤフォンをそっと美野和先輩の耳へ差し込んでも、一向に目を覚ます気配無く、浅い息のみ繰り返すのを見届けて私はスタートボタンを押した。
「約10分。天国見せてあげますね。」




