色とりどりの毒-2
「こ、んにちは。」
わたしは間近で初めて見るあまりの美しさに息を詰め、それでも失礼を犯したくなくて無理やり挨拶を返した。
「中等部の方ですね。私は高等部1年の」「ブラックフォード先輩、ですよね!」
「……そうです。」
相手の自己紹介を遮って名前を告げたのは、"貴方のことを知っています"というアピール。
怪訝な顔をして声を低める先輩に、取り繕う様にわたしは続ける。
「ごめんなさい。先輩って、凄く、綺麗で有名ですからわたし、舞い上がっちゃって」
「いいですよ。」
言いながら、ブラックフォード先輩は端正な眉を少し歪めて、だらしなく転がった体勢のまま微動だにしない美野和センパイの頭をスーパーの袋を履いた足で強かに蹴った。
ほんのからかい、というレベルでは無いくらいの勢いで頭が地面から浮き、再び床に叩き付けられて結構凄い音がした。
「痛ぁー!」
「そりゃそうでしょうよ。」
ブラックフォード先輩はさも当然、と言う風に溜息を吐いた。
相当力を込めた攻撃を食らった美野和センパイは、寝転びながら頭に手をやり全身を丸めてダメージをやり過ごしている。
「あなた、中等部の方がお見えになっているのにどうして何もしないんですか。」
「え、あー…だって」
「だってもヘチマも無いですよ?というか、ほんと何時までゴロついて居る気ですか?」
「――さあ?」
「話になりませんね。えっと…そこのお嬢さん。」
突然声をかけられて、わたしは肩を飛び上がらせた。
「ハイ!」
「学校から、何か言われてこの人のお見舞いに来られたのでしょうか?」
「あ、え、そういうわけじゃ、ないんですけど…」
わたしは語尾に向かうにつれてボリュームを下げながら答えた。
「ふ、じゃあ相当ガッカリされてるでしょうね。こんな廃人みたいな姿を御覧になって。」
「あー、いえ、噂は聞いていたので」
実際そうだった。
中等部にも高等部にも存在する美野和センパイのファンたちのグループでは、今センパイが"あの事件"以来完全に塞ぎ込んでて、従来の元気でアッパーな雰囲気が消失し、完全なる暗黒面に堕ちてしまっていると話題になっていた。
そこから救うべく、学校帰りにこの部屋へ立ち寄る子たちが後を絶たず、その成れの果てが今の状況。
センパイの薄っぺらい敷布団をまるでクリスマスツリーかの如く派手な包装紙や手紙で取り囲んだこの部屋はまるで狂気に満ちていた。




