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5-5


 しばらくして、灯真がマグカップの中のココアをくいと飲みほした。そのままゲームを終了する。もうそんな時間か、と時計を確認すると、いつもよりもずいぶんとはやい時間だった。


「もうやめるの?」


 ふしぎに思って訊くと、灯真は黎を見て「うん」とあっさりうなずいた。


「今日は終わり。歯磨いて寝るけど、黎は?」


 灯真はマグカップをシンクに下げ、そのまま洗いはじめる。灯真が寝るのなら、黎がひとりで起きている理由がない。のろのろと立ちあがり、灯真より先に洗面所へ行った。歯磨きをしながらなんとなしに鏡を見る。そこに映る自分は、なんだか顔色が悪い気がした。

 少し遅れて灯真も洗面所に来た。隣に並んで歯を磨く。早く来たぶん、黎のほうが先に歯磨きを終えた。灯真も終えるのを待ち、ふたりで寝室へと向かう。


「黎、なんか読む?」


 灯真がテーブルランプをつけ、ベッドを軽く整える。少し迷ったけれど、黎は首を横に振った。今本を読んだところで、内容に集中できないだろうことは目に見えていた。


「そっか」


 灯真は軽い返事とともにベッドに乗りあげ、「おいで」と黎を招いた。黎は唾を飲みくだし、手を握りしめながら昨夜までと同じところに体を滑りこませた。

 灯真のほうを見るのは気まずいが、背中を向けるのも失礼な気がして、あおむけで天井を見つめる。灯真がスマホをヘッドボードの棚に置いた。


「んで、おまえはなにを悩んでんの?」


 きっと今夜も本を読むのだろう。そう思っていたのに急に話しかけられ、黎は体を揺らしてしまった。頭の中が一気に真っ白になる。目を泳がせながら灯真に顔を向けると、灯真は黎のほうを向いて横になっていた。灯真の目元がやわくゆるむ。


「なんかあるなら聞くよ。なんも話すことないって言うなら、俺、このまま寝るし。どうする?」


 のんびりとした口調で訊かれ、黎は浅く息を吐く。

 話すことは、あるかもしれない。頭の中は灯真に訊きたいことでいっぱいだ。けれどなにから話せばいいのかも、なにを訊いていいのかもわからなかった。


「……なんでもいいの」

「いいよ、もちろん」

「嫌なことかもしれないのに?」

「そんときは聞いてから考えるよ。とりあえず話してみてもいいんじゃない? 嫌な話なら嫌って言うから」


 そう言って灯真が軽くほほえむ。黎は肺に詰まっていた空気をゆっくりと吐き、灯真のほうへ寝返りを打った。体をゆるく丸めてもふれあわない距離で灯真と向かいあう。目は合わせられなかった。頭の中でいろんなことがぐるぐると巡る。

 捨てられたくない。ここにいたい。そのためにはどうしたらいいのか。自分にはなにができるのか。誰かと寝るのは慣れてるのか。誰にでもこんなふうに接するわけじゃないなら、なぜ、自分はゆるされているのか。なぜここまでよくしてくれるのか。自分は灯真にとってなんなのか。

 これまで目を背けてきた疑問まで浮かびあがっては、きちんとまとまらないまま霧散していく。黎が長いあいだ黙っていても、灯真は咎めない。口元にかすかな笑みを乗せ、黎の言葉を待ってくれていた。待たせたくない。なにか、なにか話さなければ。なにか。


「……く、くがさんって、どんなひととつきあってたの」


 焦った結果出てきた問いに、灯真がぱちくりと目を丸くする。対して黎は顔を歪めてしまった。

 自分はこんなことが聞きたかったんだろうか。わからない。あまりにも考えこみすぎて、なにを悩んでいるのかもよくわからなくなってきていた。わずかな間をおいて、灯真が「ええ?」とやわく苦笑する。


「黎、そんなことで悩んでたのか?」


 灯真の言葉に、黎の耳がじわりと熱を帯びた。灯真は黎の返事を待たず「そうだなあ」と目線を上へ向ける。


「どんなひとって言われても、みんなタイプばらばらだったからなあ」

「……ひとりじゃないの」

「ん、まあ、そうだな。それなりに、何人かは」


 灯真が照れくさそうに指先で鼻をさわる。何人もいたのかと思うと、また胸がもやもやとしてきた。灯真は小さく咳払いをして続ける。


「さっきも言ったけど、まあ、いろいろよ。年下も年上も同い年もいたし、中身も見た目もばらばら。こういうタイプが好みだからつきあった、みたいなのはないんだよな、俺。共通点っつったら、みんな男ってことだけかも」


 灯真はそこで一度言葉を区切り、「うーん」と小さくうなる。


「アプリで知りあって、メシ行ったり遊んだりして、なかよくなったらそのうち流れとか雰囲気で、つきあおっか、みたいな。おまえがどんなこと聞きたいのかはわかんないけど、普通の出会いっていうか、ありふれた話だと思うよ」


 そうなのか、と黎はわずかに眉を寄せる。灯真はそれを普通と言うけれど、黎の経験とはまったく違うからうまく反応できなかった。


「あー、でも、共通点は男ってことくらいってさっき言ったけど、もう一個あったわ」


 灯真はどことなく苦々しい声で言って、あのへらりとした笑みを浮かべた。その理由がわからず、黎は目を瞬かせる。


「俺さあ、毎回おんなじフラれ方するんだよな。いつも最後は、思ってたのと違うって言われて、おわり」


 灯真の言葉を聞いて、黎ははっと息を呑む。思っていたのと違う。誰かのため息まじりの声が耳の奥でふいによみがえった気がした。


「でもまあ、俺が悪いんだけどね」


 灯真は笑みを崩さないまま、目線を落とした。灯真が悪いというのは、どういう意味だろう。言葉の意図がつかめず、黎は訝りながら灯真を見る。


「俺、人見知りなんだよ。だから初対面のひとと話すのとか、すげえ緊張する。でも、なんつうか……それなりにふるまうことはできちゃうんだよねえ。とんでもなく美化した言い方すると、いつも笑顔で、明るくて、元気で、いっぱい会話できて、相手をリードするみたいな感じにさ」


 灯真の話を聞きながら、黎はゆるやかに目を瞠る。それはかつて自分が飼い主たちの前でしていたふるまいと、よく似ていたから。


「でも俺、別にそんなキャラじゃないしさ。本当はこんなんじゃねえのにって思いながら、こう……明るい自分を演じてるみたいになんの。んで、そんな状態でつきあってさ、相手と一緒にいることに慣れてきて素の自分出したら、なんか変わったって言われるんだよ。まあ、そりゃそうだよな。俺も自分でそう思うし。俺もわかってるんだよ、相手がどんな自分を求めてるか。その自分でいつづけりゃいいんだろうけど……疲れるんだよねえ。だから、もういいや、みたいな」


 そう言って、灯真はため息をこぼした。もうあの笑い方はしていない。力ない笑みだけが口元にかすかに残っている。


「そもそも、俺が恋愛向いてねえんだろうな。俺、甘やかすのも好きだけど、甘えてえなって思うことも多いし。たくさんしゃべって明るく盛りあげたり、相手の話聞きつづけるより、今は黙って一緒にいるだけのほうがいいのになって思うこともあるし。でも相手からしてみれば、詐欺みたいなもんだろ。めいっぱい甘やかしてくれる明るいひとだと思ってたのに、みたいな。そりゃフラれて当然だと思う。……って、俺、おまえ相手になに話してんだろうな」


 急に冷静になったのか、灯真が苦笑する。黎はほとんど反射で首を振ったものの、頭の中では灯真の話を咀嚼するので忙しかった。

 灯真はさっき、ほんとうの自分はこうではないと話していた。しかし、いつも笑顔で、明るくて、元気で、いっぱい会話ができて、相手をリードする――それは黎にとっては、灯真の印象に近いものだった。

 もちろんそういう面ばかりではないことも知っている。この半年ほど、毎日一緒にいたから。

 でも、黎の知っている灯真は、ほんとうの灯真ではないのだろうか。そういう灯真を演じているのだろうか。黎が、これまで飼い主たちの前でそうしてきたように。


「……久我さんは、今も、ほんとうじゃないの?」

「んあ? なに?」

「今も、役割を、がんばってるの?」


 つたない語彙でなんとか訊くと、灯真がきょとんとした表情になった。しばらく無言で瞬きしたあと、「ああ」と目元をゆるませる。


「そういうこと? 素だよ、素。なんもがんばってない」


 灯真の返事を聞き、黎はほっと小さく息を吐いた。がんばっていないのなら、よかった。がんばるのは、とても、疲れるから。


「まあ、最初の何日かは緊張したけどさあ。こんだけ毎日一緒にいれば、さすがに慣れるよ。そもそも、おまえの前で見栄張ろうみたいなの、思ったことないや」

「そうなの?」


 黎が相槌を打つと、灯真がゆるく眉を下げてうなずいた。


「なんかさあ、相手によく思われてえんだろうな、俺。嫌われたくないっていうか。ともだちにしろ、恋人にしろ、これから長く関係が続くかもしれないって思う相手ならなおさら。でも、おまえは出会いもよくわかんなかったし、正直、こんなに長く一緒にいるとも思ってなかったからなあ。言われてみりゃあ、ずっと素っていうか、なんも気負ってなかったわ。ここが自分の家っていうのもあるのかも」


 灯真の話を聞き、黎はかすかな安堵を覚える。その反面、こんなに長く一緒にいるとも思っていなかった、という言葉に心臓を握りつぶされたような痛みも覚えた。

 黎自身も、あんななりゆきで拾ってもらったこの家に、まさかこんなに長くいることになるとは思っていなかった。行くあてがないからここにいるのではなく、ここにいたいと――灯真のそばにいたいと思うようになるとも、同様に。

 いつか捨てられる。話しているうちに薄れかけていた恐怖が、ふたたび全身にまとわりつく。捨てられたくない。そのためにどうすればいいのか、黎は必死で考える。

 役に立ったとしても灯真にはおそらく関係ない。灯真は黎になにも望んでいない。これまでの飼い主たちのような役割はもらえない。……ほんとうに? 黎ははっと息を呑む。

 これまでつきあったひとたちの前でほんとうの自分を見せられず、思っていたのと違うという理由でフラれつづけてきた灯真。けれど灯真は、黎の前では最初からほんとうの灯真でいたらしい。

 それなら自分にも、恋人の役割が果たせるのでは? だって黎は、そんな理由で灯真をフったりしない。思っていたのと違うなんて、言わない。

 そのことに気づき、黎ははじかれるように灯真を見た。目が合ってすぐ、黎は大きく息を吸う。


「久我さん、俺とつきあおうよ」

「……はあ? なんて?」


 灯真がぽかんと口をあける。黎はからからに渇いた口の中をうるおすように唾を飲みこんだ。


「俺とつきあおう。俺の前では、久我さん、ほんとうの久我さんなんでしょ。だったら――」

「やーだね」


 黎の言葉をさえぎり、灯真が言う。口調は軽いけれど、そのまなざしは真剣だった。断られた。拒絶された。あっさりと突きつけられたその言葉に、黎はくちびるを嚙む。


「だって、つきあったら別れるじゃん。いやだよ、俺」


 しかしその先に続いた言葉を聞いて、黎は思わず首をかしげてしまった。どういう意味だろう。灯真の言葉がうまく理解できない。

 黎としては、この先も灯真のそばにいさせてもらうためにこの提案をしたつもりだ。しかし灯真は、つきあったら逆に別れることになるという。なんでそうなるんだろう。黎は混乱したまま灯真を見る。灯真は表情をゆるませて話を続けた。


「俺さあ、親が離婚してんだよね。今までつきあってきたひとたちとも、結局全員別れてるし。つきあったらずっと一緒、みたいな夢見られねえよ」


 灯真の話を聞き、黎はますます黙りこむしかなかった。灯真の話は、黎にも当てはまることだったから。

 ずっと一緒にいようね、と指切りをした彼女が、もういらない、と黎を捨てた日の記憶がぱっと脳裏によみがえる。あれは、どうして捨てられたんだっけ。そう、確か、元彼と復縁したから黎はいらなくなったんだ。ずっと一緒と言ったのは彼女なのに。黎はそれを、信じかけていたのに。

 それでも黎は食いさがりたくて、まだ頭の中がこんがらがったまま口をひらく。


「で、でも、俺、久我さんのこと、なんか違ったみたいに思わないよ」


 黎が必死にそう言うと、灯真が困ったように笑った。


「そもそもおまえ、俺のこと好きだからつきあいてえの?」


 はっきりと訊かれ、黎の喉がひゅっと鳴る。


「おまえが俺のこと嫌ってないのはさすがにわかるよ。でも、恋愛対象として好きなのか? 俺とキスとかセックスとか、してえの? おまえ、俺に対して性的に興奮する? 恋人だからってそういうことしないひとたちもいると思う。そこはひとそれぞれだよ。でも俺の中でのおつきあいってのは、そういうのも含まれてるんだけど」


 灯真の声はやわらかいけれど、どこまでも真剣なのが伝わってきた。黎は何度か口をひらいては閉じてをくりかえしたあと、そのまま口をつぐむ。返す言葉が、見つからなかった。

 灯真の言うとおり、灯真のことを嫌ってなどいない。むしろ、好きだと思う。たぶん。けれどそれがどういうかたちの好きなのかはわからない。これまで黎が好きだと思ったひとは、灯真以外だと母しかいないから。

 灯真に向ける好きと母に向ける好きは、似ているけれど違うと思う。でも、どう違うかはわからない。同じではないことは確かだった。

 飼い主たちに好きだと言ったことはある。でもそれは好きだよと言われたときに「俺も好きだよ」と返したら飼い主たちの機嫌がよくなるからであって、ほんとうにそう思っていたわけではなかった。彼や彼女たちが自分に向けていた好きという言葉も、どういう意味の好きなのかなんて気にしたこともなかった。

 性的に興奮するというのだって、黎にはわからない。セックスをするときに興奮していたことも、ないと思う。そもそも興奮するというのがどういうことなのかもわかっていない。

 黎にとってセックスは、役割を果たすため、対価を差しだすための手段でしかなかった。求められれば応える、しなければいけないこと。自分からしたいと思ったことは一度もない。……むしろ、しなくていいなら、したくない。灯真とも、したくない。

 恋愛対象として好きかわからない。キスもセックスもしたくない。それじゃあ、灯真の恋人になれない。そうしたら、いつか灯真に恋人ができたとき捨てられる。どうしよう。なにか考えなければ。どうにかして、恋人にならなければ。


「ちなみに俺は、おまえとの関係にセックスを持ちこみたくない。端的に言うとしたくねえ」


 必死に考えこんでいたところにきっぱりと告げられ、黎の心臓がずきんと痛くなった。

 したくないと灯真ははっきりと言った。これ以上ないくらいにわかりやすい拒絶をされたのだから、もう引きさがるべきだ。……でも、そうしたら、自分は。

 黎は短い呼吸をくりかえしながら、なんとか口をひらく。


「……でも、俺、久我さんのこと、甘やかせるよ」


 苦しまぎれに絞りだしたものの、灯真の顔は見られなかった。


「ええ、なに、おまえ、俺のこと甘やかしてえの?」


 戸惑ったような声で訊かれ、黎ははっとする。できるかどうかしか考えていなかった。できる。甘やかせる。でも、したいかどうかについては、まだよくわからない。黎はあらためて考える。

 そもそも甘やかすとはどういうことなんだろうか。頭を撫でたり、抱きしめたり、膝枕や腕枕……かつて飼い主たちにしていたようなことは、甘やかしているうちに入るのだろうか。灯真は、そういうことをしてほしいのだろうか。彼女たちのように甘えてくる灯真を想像しようとしてみたけれど、頭の中はもやがかかったようにはっきりしなかった。

 黎にとって飼い主たちを甘やかすのは、対価のひとつだった。そうすればどの飼い主もだいたい機嫌がよくなって、黎に優しくしてくれたから。それだってセックスと同じで、求められているのがわかったからそうしていただけ。したいとか、したくないとか、自分からするとか、そんな発想すらなかった。

 でも、と黎は考える。灯真相手なら……甘やかしたいかもしれない。灯真が甘えてくれるところは想像できないが、もししてくれたなら、灯真を甘やかしたい。これまで思うように甘えられなかったというのなら、なおさら。

 黎は鼻から息を吸い、灯真を見る。


「うん。甘やかしたい」


 はっきりと告げると、灯真の目が丸くなった。何度か瞬きをしたあと、「ええ……?」と声をもらす。


「いや、まじで言ってんの?」

「うん。ほんとうだよ。久我さんのこと、甘やかしたい。甘えてほしいし、甘えてもらえたら、嬉しいと思う」


 黎は灯真から目をそらさずに言う。灯真の目はまだ丸く見ひらかれたままだった。


「え、いや、えっと……俺は、冗談のつもりっていうか……いや、ええ……?」


 冗談だったのか、と黎は内心ショックを受ける。

 でもさっき、灯真は恋人に対して甘えたいと思うこともあると言っていた。それなら甘えたいという気持ちそのものは、冗談でも嘘でもないのではないか。

 それがほんとうの気持ちなら、自分がやりたい。灯真のそばにいるためにどうすればいいか考えた結果出てきた言葉ではあったが、今はそれだけでなく、ただ灯真を甘やかしたいと思っていた。

 もしかしたら、灯真にもそれが伝わったのかもしれない。灯真はなんともいえない表情で目元をゆるませた。


「……おまえ、物好きだねえ。俺、おまえよりひとまわりも上のおっさんなんだけど」


 灯真にそう言われ、黎は首をひねる。たしかに灯真は黎よりもうんと年上だ。けれど、それがなにか関係あるんだろうか。年上を甘やかしてはいけないという決まりはないはずだ。そんな決まりがあったなら、黎は今までその決まりをやぶってきたことになるから。

 でも灯真が拒絶するなら、黎はこれ以上踏みこめない。灯真が嫌だと思うことはしたくない。黎は目線を落とし、ふたたび口をひらく。


「……久我さんが嫌なら、やらない。でも、久我さんのこと甘やかしたいと思ったのは、ほんとう」


 ぽそぽそと言うと、灯真がふっと表情を崩してうなじをさすった。


「俺もさすがに、おまえ相手にべたべた甘えないくらいの分別はあるんだけどね」

「ふんべつ……」


 灯真の言葉をなぞるように呟いてみる。どういう意味なんだろう。ここにはタブレットがないから調べることもできない。それでも、灯真はきっと黎には甘えないみたいなことを言っているのだろうと思った。黎はくちびるを嚙む。じゃあ、もう、どうすればいいかわからない。このままじゃ、灯真の恋人になれない。


「おまえがそう思ってるってことはわかった。でもまあ、なんにしても、俺はおまえとつきあわないよ。俺はおまえとのあいだに、セックスとか、恋愛とか、そういうの持ちこみたくない。おまえとは恋人にはならない」


 残酷なくらいやわらかな声で追い討ちをかけられ、黎の顔がぐしゃりと歪んだ。





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