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弟・その三

 兄さん、まだ諦めないのかい? 無修正どころか、収録そのものが無理だよ。下作だもの。

 ――という訳で今回は、何処がどう下作なのかを、これまで以上に詳しく指摘していこうと思う所存だ。そうすることで、諦めの悪い我が兄に引導を渡せるならば、お安いご用である。

 第一に、これだけ短い話なのに――短篇小説と比較すれば、だ。昔話としては冗長である――視点人物が目紛るしく変わり、結果として落ち着きのない文章になっている。子供が読んだら忽ち、混乱するに違いない。それは恐らく、物語の類型に起因している。前二話ではそれぞれ、一人の主人公に焦点が当てられていたのに対して、本話は一連の事件を通して人間模様を描く群像劇の体裁を取っている……と云うとご大層に聞こえるが、要するに、作中視点があちこちに移動することで、酷く取っ散らかした印象を与える、締まりのない話ということだ。

 では何故、本話のみが群像劇となっているのだろうか? それには、前話より用いられている《二軍》という用語が関係すると思われる。初言及の第二話と続く本話とでは、この語句の指示対象は一致しないが(その齟齬は本話にて、読者を誤誘導するのに一役買っている)、登場人物が何らかの基準を以て評価され、序列付けられていることに違いはない。それが登場人物による自己評価、または相互評価であるなら、何ら問題はない。ところが、第一話で猟銃男に、第二話で稲妻男に、それぞれ焦点を当てておきながら、第三話を《その他大勢》の物語と位置付けた時点で、物語の作り手自身が登場人物を差別している。二軍は蛸部屋に押し込めてしまえ――という訳だ。登場人物への愛情の欠如が、群像劇という安易な選択をさせたようだ。

 そもそも、これらは本当に連話なのか? 連話にしては話と話との繋がりが、実に不可解ではないか。前話までの出来事が一旦なかったことにされ、即ち、関連作品でありながら連続性が破棄され、新たに一から仕切り直されるという――ああ、もう、面倒臭い。こういう作品展開を端的に表現する用語の発明を、切に願う――、昔話としては他に類を見ない、面妖な展開となっている。前話で死んだ者が何の説明もなしに生きていたり、前二話では失敗に終わった金貨分捕り計画が、本話では一先ず成功していたりと、奇妙な不整合が散見されるのはそのためだ。その癖、金剛糸や神の声――だからそれは、神への冒涜だと云っている――など、前話までに捻り出された珍物は都合よく、どさくさに紛れて、ちゃっかり、しれっと、引き継がれている。ご都合主義の誹りは免れない上に、これも、読み手を混乱させる一因となっている。

 そう、第三話では殊の外、ご都合主義が多見される。分けても《豪傑学園》への突然の言及は、本話最大の瑕疵と云ってもいいのではないか。硬直した状況に流動性を与える手段だとしても、これでは唐突すぎて読者は付いていけない。湖に投げ出された能力者二人が〝都合よく〟金槌であるのも、鼻息男には〝何を隠そう〟《鼻毒》なる切り札があったのも、古代ギリシア劇におけるデウス・エクス・マキナに匹敵する、強引かつ安直な力業であると云えよう。

 そうかと思うと、恐るべき鼻息攻撃への怪力男の対抗手段が『踏んまえる』だけだったり――その程度の目算で、よくも『ほくそ笑んだ』ものである――、帽子を奪われ、必殺技を封じられた氷結男の起死回生の一手が予備の帽子だったりと、人を食ったような手段が行き詰まった状況の打開策とされている。力業との対照がちぐはぐな印象を与えるのは、避けられまい。

 だが、最もけしからんのは、読者を幻惑する誤誘導の罠である。私も、ものの見事に引っ掛かってしまった。非常に腹立たしく思う。もう二度と、その手には引っかかるものか……。

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