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眠りの魔道士  作者: 春野雪兎
通りすがりの冒険者 前編
54/274

第54話 魔道士は怖くないですよー

「伝説級の魔石を渡された時も驚いたが、これまたとんでもないな……売ったらどれ程の値がつくか」

「やはり受け取れません」

「僕も」


 どれほどの値が付くかわからないような破格の効果に受け取れないと言う二人だったが、アルフはそれでも完全に守るのは難しいと思っていたので、必要性を伝えることにした。


「武器や道具は使ってこそ意味があります。高価だからと使わないでいれば、最も大切な命を失うことになりますよ? それこそ、僕には耐えられないような悪夢です。受け取れないと言うのであれば、危険が無くなるまでお貸ししておきますから使って下さい」

「本当にいいの? こんな凄い武器」

「もちろんだよ。それにスーリオンに渡したのが武器なのは、君の仲間を守るためでもある。森に帰った後でスーリオンを狙う者が家族や友人に手を出す可能性だってある。その時、武器を持たずに守れるだろうか。ただ逃げて仲間が君と同じような目に遭うのを見ているつもりかな?」

「逃げるだけなんて嫌だよ! 魔道士様。ありがとう! 使ってみるよ」


 アルフの言葉にスーリオンはナイフを持つことを選んだ。出来れば武器を使うことになるような事態にはならないようにしたいが、相手が悪魔崇拝者であれば何があるか分からない。ナイフを所持してくれる事を選んでくれてアルフは内心安堵する。


「セシル様も、まだ果たさなければならない事があるのでは? 亡くなってしまったら誰が無念を晴らすのですか」

「……確かに溢れるほどのお金があっても、何度も死は防げませんね。私も使わせて頂きます」


 両親の事を持ち出すのは卑怯かもしれないが、セシル嬢が命を失うよりも卑怯者と思われる方がよほどマシだった。


「伝説になりそうなこんな武器や道具があれば、どんな敵だろうと怖くないな!」


 レオンがそんな事を言い出して、二人も賛同しそうになるので改めてアルフは危険性を伝える。


「確かに渡した武器や指輪は身を守ってくれますが過信はしないで下さい。もし狙ってくる相手が悪魔や悪魔の憑依者であれば、ほとんど役には立ちませんから」

「これほどの効果が役に立たない……? それはどういう意味でしょう」

「悪魔には普通の攻撃は通らないですし、防御結界を貫通する攻撃能力を持つ者がほとんどです。瞬時に数百回の攻撃を放つ悪魔だっています」


 アルフが消滅させたバルバラムは、まさにそんな悪魔だった。防御結界は突き破ってくるし、飽きるまで絶え間なく高速の魔弾を放ち続けていた。たとえアルフが強化したナイフや身代わりの指輪を身につけていたとしても、避けずに攻撃を受け続けたら十秒持つかも怪しい。


「そんな……! 悪魔とはそこまで恐ろしいのですね。相手に出来る者などいるのでしょうか」

「やっぱり勇者様かな」

「我が国にお呼びするべきかしら」

「何だ? 二人とも知らないのか。……いや知らないのも無理は無いか」

「何の事ですか」

「その勇者様が倒せなかった悪魔を消したのが、目の前にいる眠りの魔道士だよ」


 レオンがラッセル帝国での出来事を知っているのは独自の情報網のおかげなのだろう。帝国の一部や同族の悪魔、もしくは悪魔召喚に関わっている者しか知らない事実のはずだからだ。


「えっ!?」

「そうなのですか! 言われてみれば魔道士様は悪魔についてかなり詳しいですね」

「……って、待て待て待て! 記憶を消そうとするな!?」

『ニャアァ』


 アルフが手を持ち上げ何かしようとしているのを見て、レオンはカレンを抱きながらなので慌てて首を左右に振って拒否している。


「そう言う機密情報の発言には充分気をつけた方がいいですよ。僕じゃ無くて皇帝や悪魔崇拝者に消されます」

「わ、わかった。もう言わない。ただ本物の英雄だって知って欲しかっただけなんだ」

「通りすがりの()()()です」

「ちゃんと協力するから! 消すのは止めてくれ魔道士!」

「まるで僕が脅しているみたいじゃないですか」


 やれやれという仕草をみせてから、落ち着かせるようにドロシーの頭を撫でる。


「結構、自然に脅してくるよな!? 怖いっての!」

「魔道士は怖くないですよー」

「信じられるか! その黒猫もなんか怖いし」

「ドロシーも怖くないですよー」


 なかなか勘が鋭いなと思いながらレオンの周囲に漂っていた瘴気の粒子を視る。

 おそらくは『悪魔を消した』というキーワードにでも反応したのだろう。今の王都でこの手の話をするのは迂闊だったかもしれない。瘴気をまとった精霊が情報を得て報告しようとしていたので咄嗟に払った。

 通常精霊に善悪は無く、気に入れば力を貸してくれるし、気に入らなければ邪魔をしてくる。

 しかし瘴気をまとっていたので、何者かが精霊を無理矢理操って使役しているのかもしれない。


「ドロシー、場所はわかる?」

『教会近くの北通りにいます。気付かれて路地裏に逃げ込みました』

「わかった。行ってみよう」


 突然そんなやり取りを始めた魔道士と黒猫に一同は困惑している。


「どうかしたのか?」

「仕事が出来たのでまた後ほど。お疲れでしょうから皆さんはゆっくり身体を休めていて下さい」


 そう言ってアルフは軽く目を閉じると、北通りの路地をイメージして額に手を当て転移した。


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