第55話 追跡
誤字脱字報告ありがとうございます。
出来たてを投稿していますので、間違いに気付き次第修正させていただきます。
「すぐにいなくなるな。忙しい男だ」
「あの……」
「どうかしたか? エルフの坊や」
「ビックリすることが多くて、今思ったけど……黒猫がしゃべってた」
「あ? あの猫か。普通にしゃべるぞ」
「そうなんだ。猫ってしゃべるんだ」
魔道士と一緒にいるといろいろな常識が壊れて、スーリオンは普通に受け入れ始めていた。
間違った常識を持ち始めたのでセシルが訂正する。
「いいえ、普通の猫さんはお話しませんよ」
「まあ普通の猫はしゃべらないな」
「そうなんだ。普通の猫ってしゃべらないんだ」
「「………………」」
これはいろいろと話を聞いておいた方が良いかもしれない。
セシルとレオンは互いに情報共有が必要だと思った。
「スーリオンさんと、レオンさんでしたね。少しお話をしませんか」
「俺もそう思っていた所だ。スーリオンも魔道士と一緒にいたんだろ? 話してくれるか」
「僕も知りたい。狙われているって事は、お姉さんもエルフ族なの?」
「いいえ。でも母方の血筋がエルフの末裔だったかしら」
セシルの言葉にレオンが納得する。
「なるほど。通りで美人なわけだ」
「私が生まれる前のお母様は美人で有名だったらしいわ。談話室にでも行きましょうか?」
「いや、ここの方がいいかもしれないぞ。あの魔道士、重要な話をする時は指を鳴らすんだよ」
それに心当たりがあるセシルも確かにそうだと気がつく。
「そう言えば魔法を使うときに指を鳴らす動作を見かけました」
「やっぱりな。多分、この部屋にも何かしていると思う」
「ではここの方が安全かもしれませんね」
「じゃあここで魔道士様のお話をしようよ! あのね、凄いんだよ……」
こうして三人はこれまでの出来事についてそれぞれ話し始めた。
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転移先の通りには道行く人がいたため、パチンと指を鳴らして周囲に防音結界を張る。
そしてアルフは抑えていた感情を一気に吐き出す。
「もうシスター服姿のセシル様とか反則だよね!? しかも湯上がりだったよ!? 僕は一体何を試されていたの……!」
『何が反則なのか分かりかねますが、落ち着いてください。ご主人様』
「僕が平常心を保つのにどれだけ苦労したか分かる!?」
『苦悩していたのは存じてます。あのまま婚約すれば良かったのでは?』
ドロシーの言葉にアルフは黙ってしまう。
「……そんな簡単には出来ないよ。義理とはいえ宰相の娘だよ? 顔や名前を隠し通すなんて無理だ」
「ではアルフ様として婚約すれば良いのでは」
「アルフとしてもダメだよ。魔法を使えない放蕩息子として世間の評判は最悪。どうやって好きになってもらうのさ」
『セシル様にだけ眠りの魔道士であることを伝えては?』
「周囲に不審がられるよ。絶対に理由を聞かれる」
『そこは”真実の愛を見つけた”とでも言えば』
「ちょ、どこでそんな言葉知ったの?」
『ニャア』
「ごまかした!?」
そんな事を言いながらもアルフがしばし路地裏を観察していると、瘴気をまとった精霊を見つけた。
見つけたと言っても基本的には肉体を持っているわけでは無いので通常の視覚では見えない。
意思を持った精神体のような粒子の塊。それを魔法感覚で捉えたということだ。
フワフワと飛んでいく精霊を歩きながら追いかける。
普段はそれぞれが自由に漂っているのだが、何かに引っ張られるような不自然な動きを見せている。
その動きを追跡していくと、王都の中心部に向かっていた。
「どこまで行くのかな」
『ご主人様、周囲の注目を浴びています』
貴族エリアに入り人の視線を感じるようになった。
さすがに昼間の黒ローブ姿は悪目立ちする。
建物の影に入り人目がないことを確認してから、ローブを脱いで収納空間へと仕舞っておく。
「これで馴染むかな」
『その服装ならどこから見ても貴族様です』
膨大な魔力があると、力を貸してくれる精霊の存在を感じることがある。
感覚を研ぎ澄ませてみれば、様々な精霊が王都のあちこちを飛んでいるのが分かる。
自在に魔法を使う魔道士のアルフには、にぎやかすぎる光景なので普段は意識していない。
今回は瘴気による違和感で、情報を見聞きする精霊に気がついた。
「このまま追跡して行くと王城に入るね」
『ニャア』
「どうしようか。さすがに呼ばれてもいないのに城には入れないな」
門番の目には見えない、瘴気をまとった精霊はそのまま城内へと入っていった。
用もないのにそのまま城内へ入ろうとすれば止められてしまうだろう。
「んーっ」
何か中に入る手段はないかと、キョロキョロ周囲を見渡す。
城門を通って行く人の流れを観察していると、冒険者のような格好をした人がいることに気付く。
「あれは何をしているのかな?」
城門から離れた場所に受付が出来ており、人を募集していた。
王都の問題は騎士団や宮廷魔道士が対処にあたるため、人を募集するのは珍しい。
アルフは、並ぶ人が途切れたタイミングで受付に話を聞く。
「こんにちは。お伺いしますが何の募集ですか?」
「貴族様ですか。こちらは西方の領土で発生しているスライム討伐の募集ですよ」
「ああ、西方の!」
「おや? 情報通ですね。ご存じでしたか」
「どんな攻撃を受けても復活して増殖する。厄介なスライムだとか」
「そうなのです。数が多いので、腕に覚えの有る者を募集しているのです」
出発前に父が話していた。
対処出来る人材がいないか、ギルドや王都に確認中だと。
事態を重くみた国防大臣が動いたのかもしれない。
「なるほど。それで広く募集しているのですね」
「貴族様も参加されますか」
「参加者は城内に入れるのですか?」
「騎士団か魔道士団で試験を行い、合格すれば討伐隊に加わることになります」
「わかりました。参加するかは少し考えてみます」
そう言って後ろに再び人が並び始めたので、受付を去る。
瘴気をまとった精霊を見つけるための手段。
城内に入る口実としては、良い機会だ。
そんな事を思いながら城門の先を見ていると、後ろから声をかけられた。




