第6話 秘密の石室
◯ヴァルミタール家 地下室 隠し扉の先 (1902年 3月)
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石の壁に隠された扉があき、
アレクシス、グレゴール、
そしてヨハンはその先の部屋へと進んだ。
闇の先は、薄明かりに照らされた部屋。
アレクシス、部屋の中央に立ち、上を見る。
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地下室の奥には、不思議な空間が拡がっていた。
通常の地下室よりも天井がぐっと高い小部屋。地上近くに明り取りの窓があるようで、薄明かりに照らされていた。
通風孔も広いのか、あまりじめじめとした感じが無い。地下室と同じ石造りではあるが、上から明かりに照らされているので、暗い感じもしない。
古い在庫品なのか――中央に修道女像が安置されているせいもあり、半地下の礼拝堂のような独特の風情があった。
「美しいですね、聖女像、ですか?」
肌色に近い色の砂岩でできた像を見上げながら、アレクシスが父に問う。
この国ではドラゴンが暴れまわった際に聖女が助けてくれた、という伝説が残っており、その聖女像にも見えた
「ああ、そんなところだ」
父グレゴールは軽く流すと、修道女像の傍らにある棚に手を伸ばした。
「お前に見せたいのは、これだ」
父が手にしたのは、宝石箱だった。豪華な装飾が入っている。
開けようと試みるが、蓋があかない。どうやら、装飾品を順に動かすと開く仕掛けのようで、ヨハンが手順を教えてくれる。
装飾金具を右へ左へ。すると、箱の側面の一部が動くようになり、それをまた少しずらすと、今度は逆の面が動かせるようになる。「からくり宝石箱と呼ばれる細工品です」と、ヨハンが言う。
しばらく操作をつづけると、
――かちり。
小さな音がして、蓋が開いた。
中に入っていたのは、指先ほどの大きさの宝石5粒と、宝石の石座のような、金属の装飾品が3つ。
1つ目は、透明な――ダイヤモンドだろうか。この大きさならかなりの価値があるだろう。
2つ目は、紫色が美しい石、アメジスト。他の石よりもり大ぶりだ。
3つ目は、黄色の石。トパーズだろうか?
4つ目は、深いブルーの石。サファイアだろう。こちらもずいぶんと値打ちが高そうだ
5つ目は、緑のエメラルド。エメラルドらしい四角いカットで、一目見て分かる。
「これが、ヴァルミタール家の秘密の商品なのですか?」
「いや、これ自体が商品なのではない。」
「え……?」
アレクシスは鼻白んだ。これが商品でないなら、何が商品なのだろう?
「もう一度問おう。ヴァルミタール家の商品のコンセプトは?」
「日常に、少しの夢と彩りを――」
「そう。彼らが作る《夢》それが商品となるのだ。」
「彼らって。ここには誰も居ないではないですか。」
「ヨハン、見せてやってくれ。彼らの――宝石少年の本当の姿を。」
執事は主人の言葉にうなずくとダイヤモンドを手にとり、宝石の台座のようなものに、宝石をセットし、つぶやいた。
「キャスト・インサート」
すると、宝石――ダイヤモンドが突然光輝いた。
見るまに、結晶のようなものが台座を種に成長してゆく。
光の結晶はまたたく間に人ひとり入りそうな大きな八面体を成し、割れた。
(――まぶしいっ!)
一瞬雷のようにあたりが明るくなり、アレクシスは思わず目をつぶった。
そして目を開けると――
そこには、美しい銀髪の青年が居た。
透けるように輝く白い肌、薄い色の瞳は穏やかで、口元にはうっすら微笑みを称えている。
白を基調とした衣装には、中に小さな虹を閉じ込めたような不思議な光沢が浮かんでいる。
突然眼の前に現れた、その美しい青年は、アレクシスの父のほうに身体を向けると、うやうやしく礼をした。
「え……?」
「久しいな、ディアマンテ。」
「お久しぶりでございます。我が主人」
親しげに声をかける父に、頭がついてゆかない。そこにはつい先程まで、誰もいなかったはずだ。
「どういうことなんだ?彼は……?」
「若旦那様が驚くのも無理はありません。彼らは宝石少年。命を持った宝石、です。」
『ディスポーザブル・キャスト-夢を見せる宝石少年-』
原案:神田明子
作:西瓜すいか・差異等たかひ子
企画・制作:Hisshigumi Project
※本作は複数の小説投稿サイト・媒体にて同時掲載しています。
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