第18話 その後の夜
◯孤児院 デアリスの部屋 1902年4月
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目が冴えて眠れずにいるデアリス
宝石箱に入っていた手紙
それを何度も読み返す
何かを決意して
デアリスは身体を起こした
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デアリスはマルスとの挨拶回りを終えて、夕食も終え、身体も清め、後は寝るだけだった。
ベッドで寝そべり、目を閉じるが、寝付けないでいた。
「……」
デアリスは不意に身体を起こし宝石少年達が収められていたビロードの宝石箱に一緒に入っていた手紙を手に取った。
――この宝石少年達は|貴方自身に繋がっている《・・・・・・・・・・・》
この一文が本当ならば、彼ら宝石少年を磨く事が、デアリス自身の生まれへのヒントへと繋がる。
彼らを磨く為に始めた、便利屋。これからどうやっていくのかが、今日少しだけ見えた気がしたが。
しかし、それは、自分の為に彼らを利用する事なのでは無いか、とデアリスは感じていた
悩みが悩みを呼びモヤモヤが悶々と心に広がっていく。
(悩んでも、仕方がないか。こういう時は素直にスッキリさせた方が良いな)
デアリスは、ビロードの宝石箱を手に取り、宝石少年達に語りかける
「ごめん皆、ちょっといいかな?」
その声に反応して、宝石少年達の声がデアリスの頭に響く。
『主人、何、また、夢?』
「いや、ちょっと、相談というかさ、みんなに話したい事があってさ」
『相談って、どうしたのさ、相棒』
言葉を出すのに、少し間が空いてしまう、どう伝えるべきか、どこかで躊躇してしまうからだ。
あまり自分の考えを吐露する機会がデアリスには無かった、自分の望みを相手に伝えるのは、少し怖かったからだ。
「なんていうかさ、みんなと便利屋を始めるだろう?」
『ああ』
「この手紙に書いてある ――この宝石少年達は|貴方自身に繋がっている《・・・・・・・・・・・》って言うのがさ、オレ凄い気に成っててさ」
自分の感情を、少しづつ絞り出すように、デアリスは言葉を紡ぐ。
「……もし、この手紙に書いてる事が本当で、オレの過去に繋がっているなら、みんなに協力してほしいんだ」
伝えようとすると、鼻の奥が痛くて、少しだけ涙が滲みそうになる。
そして言葉がデアリスの口から止め処無く溢れ出る
「オレさ、でも本当は、自分の生まれを知りたくってさ……ずっと諦めた振りしてたって気付いたんだ。今日マルスを磨がかれるのを感じて、もしかしてこれを続ければ、本当にわかるのかもって、自分勝手なことを思って。」
『なるほどねぇ……』
「……悪い、自分勝手だよな。自分の為にみんなを磨こうとするなんて、ごめん忘れてくれ」
少し自分を落ち着かせて、デアリスは話を切り上げようとした
『理解不能、何も、問題無い。』
「へ?」
『相棒、言ったろぉ。オイラ達を好きに使って良いってさ』
否定されるかも知れない、と思って覚悟していたデアリスは、ふたりの発言に気が抜けた声を出してしまった。
『自分の為だと言ったが……俺達宝石少年人と関わる事で磨かれるらしいぞ、兄弟』
「えっと、わかるけど、なんというか……利用してるみたいで、お前達嫌じゃないか?」
『問題皆無。主人を助ける為、ここ来た。』
『そう思ってくれた優しさは受け取るよ、相棒』
(もしかして、オレ恥掻いただけじゃ)
自分としては一世一代の勇気を出したデアリスは、恥ずかしさから身体が熱くなった。
『だが、兄弟が俺達を磨く理由が自分の生まれを知る為になるのは正直お互いにとって良いことだ』
「そうなのか?」
『絶対的、一石二鳥』
『そうそう、オイラ達の相棒を助ける。それも人助けでしょ?そんなの大歓迎!大歓喜だよ!』
(なんだろう、最初のやり取りより、宝石少年達が盛り上がっているな……)
「つまり、オレの為でも、皆を磨く事になる……ってことか?」
『そういうことだねぇ』
シュピナが応えた
『オイラ達は、相棒の為に呼ばれた寄せ集め。気兼ね無く頼ってもらえたら嬉しいってわけ』
「でも、オレは使う使われるってのがなんだろう、嫌なんだよな」
『何故、嫌?』
リーチアが不思議そうに問う、デアリスは、少しだけ考えて
「一緒に、がんばりたいというか。対等がいいんだよ。だからマスターって言われるのも、なんだか違和感があってさ」
デアリスの言葉に、宝石少年達はなるほどなぁと言わんばかりに、あぁ、と呟いた。
「オレなんか変な事言ったか?」
『いんや。真っ当だ。だが、俺等にとってはデアリスは兄弟なんだ、呼称として、馴染みがある言葉だからな』
『あ、じゃあ。こうしない? オイラのマスターってのは、相棒って意味だと思ってよ』
「相棒……か。そういう意味なら、悪くないかもしれない」
その発言に、マルスが「おぉ」と声を上げた。
『なら、俺のマスターという呼称は……兄弟って意味で、どうだい?』
「兄弟に相棒か、なんか悪く無いな……それじゃあ、リーチアのマスターってのは、なになるんだ?」
デアリスがリーチアに問う、一瞬、間が出来た後に、リーチアは静かに応えた
『……、マスターは主人』
「あ、マスターか……。そうか。」
『でも』
デアリスが諦めようとした瞬間にリーチアの声が頭に響いた
『これから、考える。駄目?』
「おう、ありがとう。いいのが思いついたら教えてくれな。」
言葉の中にリーチアなりの心遣いを感じ、デアリスはうれしかった。
『デアリス便利会社はさ、【みんなはひとりの為に、ひとりはみんなの為に】な感じでがんばろう』
「なんか、聞いた事があるフレーズだな」
『そりゃあ、有名な物語の名言だもん、というか知性は引用がモノを言うんだぜ【相棒】』
「なんだそりゃあ」
自然に口からでたツッコミに、皆が笑う。
(ああ、オレ、コイツらに会えてよかったなぁ)
『お互いに磨きあおう。兄弟』
――お互いに、磨きあう。
その言葉が、デアリスの中の隙間にパズルのピースの様にピッタリと嵌った
「ああ、そうだな。きっとそれがオレ達のやり方になる」
『いいねぇ、見付けていこう、オイラ達のやり方』
頷くデアリス
「ああ、そうだな……ふぁあ。」
今のやりとりで安心したのか、どこかに旅に出ていた睡魔が帰って来て大きなあくびが出た。
『相棒、もう眠れそうだね』
『悪夢、見たら。リーチア侵入、する。安心、安眠。』
『今日は疲れただろう、しっかり休め。これからデアリス便利会社は本番だろう?』
「おう、ありがとう」
――おやすみ、マスター
三人の声が響く中、デアリスは意識を眠りに預けた――。
『ディスポーザブル・キャスト-夢を見せる宝石少年-』
原案:神田明子
作:西瓜すいか・差異等たかひ子
企画・制作:Hisshigumi Project
※本作は複数の小説投稿サイト・媒体にて同時掲載しています。
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