第14話 目覚めて
◯孤児院 デアリスの部屋 1902年4月
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屋根裏の窓に朝日が差し込む
光を浴びてデアリスは目を覚ます。
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清々しい朝を迎え、
青年はベッドで身体を伸ばした。
(めちゃくちゃ身体が軽い、心なしか視界もクリアだな)
いつもなら悪夢に飛び起きて、強張った身体に疲労が残っている為、自分の心身をスムーズに起動させるのに時間が掛かるのだが、今日のデアリスは信じられないほど快調だ。
『おはよう、兄弟』
「ああ、おはようマルス」
『昨日は慣れ無いことをしただろうから、時間になったら起こそうと思っていたんだが。元気そうで何よりだ』
「なんか、久々にスッキリ目覚めたんだよなぁ」
ヘマタイトの宝石少年のマルスの響きのいい低い声が脳に響く。
夢でも可笑しくない出来事の連続だったがやはり、彼らは現実の存在だった。
(物語の中の存在みたいだよな、宝石少年って、)
着替えの準備をしながら、そんな事を考えていると、デアリスの頭に透明感のある静かな声が響いた。
『主人悪い夢、見なくて、良かった』
マルスに続き、リーチアがデアリスに声を掛けたのだ。
「ああ、おはようリーチア。悪いな、話し合い任せちまって」
『問題、ない。決まった』
昨日はデアリスと宝石少年が働く上での彼らの設定を夜の内にまとめるとリーチアが提案してくれていた。
「ありがとうリーチア」
礼を言って、デアリスは服を着替え窓を開けた。
新鮮な空気と日差しが部屋を塗り替える、朝日を眺めながら、「よしっ」と、デアリスは気合を入れ、自分の両頬を叩いた。
(本当に仕事をはじめるんだ、これから忙しいだろうなぁ)
「それじゃあ、これからの話をするか!」
デアリススは机の上に置かれたビロードの宝石箱を開け、鋳造心臓と三つの宝石を眺める
メタルブラックのヘマタイト、ライラックピンクのクンツァイト、そしてラズベリーカラーのスピネル。
自分を主と慕ってくれる、三人の宝石少年達だ。
(さてと、どんな設定になったのだろう)
半分楽しみでありながら、ちょっとだけ怖い気もする。どんな内容ならば孤児院のみんなに受け入れて貰えるだろうか。
『あ、相棒何、緊張してんだか』
「シュピナ。オレは緊張なんか……」
『身体を見ればある程度わかるってば!』
確かに、もしこれからはじめる仕事を拒否されたら、と考えてしまっていたのは事実だった。
サーカスの少年であるシュピナはある程度人の身体の状態で、心の状態が見えるのだろうか……?
『大丈夫、どんな反応をしたとしても周りのみんな相棒の事を考えてリアクションしてくれるよ。安心して』
「そうだよな……」
『味方に出来るかはさぁ、相棒次第。だからオイラたちと一緒にがんばろうなぁー』
空気を軽くするためか、シュピナは笑いながらそう言った。それから、三人からどういう仕事をするのか。
話を聞いてデアリスは……
――なるほど
と、そう呟いた。
「街の便利屋、か」
『そう。出来ること、バラバラ、でも、成立可能』
『俺は戦場での経験を、シュピナはサーカス、リーチアは薬学を。それぞれ活かせたら、と考えたんだ』
確かに、ここまで個性が違う三人が同じ仕事をするなら、仕事の内容を自由にするのは、理に叶っているのかもしれない。
デアリスは関心するばかりだ。
「それで、みんなと一緒に働く事になった経緯って……どういう設定なんだ?」
一度確認を、と思いデアリスが話を振る
『旅の中で荒事や、便利屋の様な肉体労働をして過ごしていた俺と』
『そのマルスと旅の中で出会った元サーカス団員で独り立ち資金を調達したいオイラが合流して』
『この国、薬屋見習い、でも店潰れて、仕方なく、知り合い、マルスの便利屋に』
「仕方なく……まぁ、でもそうか働く場所がないなら どこだって縋る的な感じ……だよな」
リーチアは頷いた。まとめてもらって助かった。そして、デアリスにも説明しやすい内容になっている。
『それにしても街の便利屋なんて、よく思いついたな』
素直にみんなの提案が面白くて、褒めるとシュピナが得意げに説明をしてくれた。
『いやぁ、実際に宝石少年の人材派遣してる家があってさぁ。個々の経験を活かしせる幅が広い仕事だろぉー?』
宝石少年を人材として派遣する家。驚きのワードだ。
「そんな家があるのか。え、、もしかして宝石少年って有名なのか?オレが知らないだけで……」
『いや、宝石少年自体は珍しいよ。でも宝石少年の人材派遣でその家は今も繁栄してるみたい』
「そうか、じゃあオレ達も、負けないくらい働かないとな!」
(いつか、その家の人とも話をしたいな、オレと宝石少年の関係がわかるかも知れないし)
まだ見ぬ他の宝石少年とその主を妄想しながら、デアリスは部屋を出る準備をはじめる。
「さて、シスターベルからも言われちゃったし、今日は神父様に挨拶に行くからな」
デアリスの手には鋳造心臓が握られている
『はい!オイラ行けます!行かせてください!』
元気よくシュピナが立候補する。
「あ、悪い。今日はマルスを少年挿入するから」
『えー!なんでだよぉ』
ウソ泣きの様な声でシュピナが不満を漏らす。デアリスはため息を突きながら反論した。
「しょうがないだろ、この間、食堂でチビたちに合わせたのがマルスなんだから。」
『悪いなシュピナ。さぁ兄弟よろしくたのむ』
マルスの声を合図に、デアリスは赤鉄鉱マ《へタイト》を鋳造心臓に嵌め込んだ
「――少年挿入」
デアリスの声に呼応して、ヘマタイトからマグマが溢れ、鋳造心臓に絡みつく。
メタルブラックの閃光の中、結晶の殻を突き破る筋骨隆々の体躯。
そして褐色の肌に映える黒い髪と黒い瞳の青年、マルスは受肉し、デアリスの前に堂々と立つ。
「それじゃあ、行こうか兄弟」
「おう!」
『いいなぁ、マルス。オイラも行きたかったなぁ……』
「それじゃあ、シュピナもリーチアも行くぞ!」
デアリスはそう行って胸ポケットに《ふたり》を収め、部屋を出る。
神父の居る、教会へと向かった。
『ディスポーザブル・キャスト-夢を見せる宝石少年-』
原案:神田明子
作:西瓜すいか・差異等たかひ子
企画・制作:Hisshigumi Project
※本作は複数の小説投稿サイト・媒体にて同時掲載しています。
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