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第3話 地下室のきらめき



◯ヴァルミタール家 屋敷一階 (1902年 3月)


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一階玄関には、メイドふたりが残されている。

おしゃべりをしながら、掃除を進めるのが、

ふたりの日課なのだ。

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《坊っちゃん》あらため、《若旦那様》がいなくなると、メイド2人は通常業務に戻った。通常業務すなわち、掃除と日用品の補充、洗濯、そして料理の仕込み。要するに家事である。

 アレクシスの家は地方都市の商家だ。金に困ることはないが、すごく裕福というわけでもない。

 丘の上にある白い屋敷に居る使用人は執事がひとりに、メイドが2人のみ。そして当主である父と、息子。母は居ない。


 アレクシスの母は産後の肥立ちが悪く、アレクシスが幼いころに亡くなった。メイド長のズッカはその頃から、ヴァルミタール家につとめている。


 ズッカとチェリカ、ふたりのメイドはランプを手に地下室へと向かう。地下室には掃除用具にワイン、保存用の調味料。仕事に必要な物が揃っている。

 ズッカはまず、掃除用具を手に取る。ホウキに雑巾、磨き布。15年繰り返された仕草は無駄がない。

 ズッカの親戚ということで見習いに来ているチェリカは、ここに来て2か月。掃除はできるようになったが、他の仕事はまだ修行中だ。バケツを手に取り、地下室を見回す。


 地下室に興味津々のチェリカをズッカがたしなめる。


「こら、あまり奥に行くんじゃないよ。大事な品物があるんだから」

「ごめんなさーい!」


 チェリカは悪びれない。出来が良いわけではないが、素直な娘なのだ。


「アレク様、どんなしゅぎょーをするんだろう?」


 掃除用具に手を伸ばしながら、チェリカがつぶやく。


「さぁ、見習い期間だから、挨拶回りとか、旦那様の使いとかじゃないかね。」

「アレク様、まだ17歳なのに。だいたい家のお仕事を継ぐのって、18歳からでしょう?」

「旦那様が体調を崩されたからね、早めにと思ったんじゃないかい。」


 しばらく前から、旦那様――当主グレゴールは、咳き込んで寝込むことが増えていた。


「そっか。大変だね。あたし、こんな大きなお家の仕事、3年後にやれって言われたら逃げ出しちゃうよ」

「ヴァルミタール家は大丈夫さ、ヨハンさんが居るからね。」


 それもそうだね、と、チェリカは笑う。


「さてと、チェリカ。今日も家の仕事がたくさんあるんだよ、まずは水を汲んでおいで、今日は西側の部屋の窓を拭くよ!」

「はいっ!叔母様!」

「ここではメイド長ってお呼びと言っただろう。さ、いっしょに行くよ」

「はいっ、メイド長!」


 ふたりは、地下室から出ていった。


◯ヴァルミタール家 地下室の奥 暗闇 (1902年 3月)



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メイドたちが去り、暗闇。しかし、

かすかな気配がある。地下室の奥が、

淡い光に染まる。光とともに、

かすかな『声』が聞こえる。

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 ランプの明かりが遠ざかり、暗闇が訪れる。

 人の気配が完全に消えたとき、地下室の奥から薄く光が漏れた。

 蒼、紫、白――そして黄色に緑。星がきらめくように、またたく光。


(アレク様、修行?)

(17歳)

(もう、そんなに。)


 それは秘密の《商品》の光。


 光はやがて消える。まるで眠りについたかのように。

 この光とアレクシスが出会うまで、あと少し。


『ディスポーザブル・キャスト-夢を見せる宝石少年-』

原案:神田明子

作:西瓜すいか・差異等たかひ子

企画・制作:Hisshigumi Project


※本作は複数の小説投稿サイト・媒体にて同時掲載しています。


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