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第26話 若旦那様あらため、若パパ?


◯ヴァルミタール家 二階 アレクシスの自室 (1902年 4月 夜)


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

アレクシスは、

眼の前に現れた幼い少年、

――エメラルドの化身である

スマグラーダと向き合っている。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


「パパ?」


 予想外すぎるセリフに、アレクシスはオウムのように繰り返す。アメティスが諭すように


「スマグラーダ、ご主人様(ドミヌス)ですよ。」


 そう伝えるのだが、幼子は発言を変えなかった。


「……パパだと思う。ご主人様(ドミヌス)、ちがう。」


 まっすぐな瞳で、スマグラーダが断言する。

 アレクシスは頭をかかえた。まだ17才なのに、パパ。なんというか、外で聞かれたら誤解されそうだ。


「パパ以外の呼び名ってないかな。アレク、とかさ、お兄ちゃんとか。」

「パパだと思う。」


 子供というのは言い出したら頑固である。アメティスはしばらくやり取りを眺めていたが、途中から遠い目になる。彼の豊富な知識のどこを検索しても『子どもは言い出したら聞かない』『いやいや期』『3、4歳の発達段階とはそういうもの』など、現状を受け入れるしか無い、という知識しか出てこなかった。


「ま、いいんじゃないですかね、パパで。」


 文学青年は諦めた。


「本当に?!」


 若き主は不満そうだが、人類の叡智たる本が幼子とはこういうものだと定義しているなら、それは真実なのだ。抗うだけ無駄だ。


「誰も困りませんよ。大丈夫!」

「外でパパって呼ばれたら?ご近所さんに噂されそうだ」

「ジブンが色々、フォローしますから」


 アレクシスは、どんなフォローだろう、むしろ怖い、と思ったが、この子はどうやら本当にアレクシスのことをパパと認識してしまったようだ。腕に抱きついたり、肩によじ登ろうとしたり、やりたい放題である。


「これは、なついている、のか?」

「多分、すごく。」


 肩車のように登ったスマグラーダに髪の毛を掴まれながらアレクシスが言う。髪の毛をひっぱったり、ほっぺたを触ってみたりして、キャッキャと笑い転げている。

 かわいい。

 かわいいのだが、痛い。スマグラーダは力加減というものを知らないようで、髪は抜けそうだし、ほっぺたには痕がつきそう。おまけに、目に指が入りそう。


「おうい、スマグラーダ、ちょっと……!」


 すると、突然笑い声が途絶え、ズン、と頭の上が重くなった。


「おい!スマグラーダ、突然体重かけると危な……!」


 声を欠けている最中に、ぐらり、と肩車の上に居る少年が崩れる。まるで突然意識を失ったように。


(このままでは、落ちる!)


 エメラルドに深く刻まれた破傷(クラック)が、鮮やかに蘇る。彼が肩車から落ちたら、割れてしまう!

 アレクシスはとっさに、落ちそうな彼を片腕で抱きとめた。バランスを崩したアレクシスは、スマグラーダを胸元にかばうようにしながら、背中から倒れ込んだ。


「スマグラーダ!アレクシス坊っちゃん(ドミヌレ・アレクシス)!」


 アメティスが慌てて駆け寄る。


「無事だよ。僕も、スマグラーダも。けど、どうして突然……?」


 2人がスマグラーダを覗き込む。目をつぶって、苦しそうだ。

 すると――


 ――ぐぅうううううぅうううううう……!


 大きな音が鳴り響いた。スマグラーダのお腹から。

 苦しそうに目をつむったまま、スマグラーダがつぶやく。


「おなか……すいた……!」


『ディスポーザブル・キャスト-夢を見せる宝石少年-』

原案:神田明子

作:西瓜すいか・差異等たかひ子

企画・制作:Hisshigumi Project


※本作は複数の小説投稿サイト・媒体にて同時掲載しています。



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第26話までお読みいただき、ありがとうございます!

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朗読劇で描かれるのは、WEB小説から約70年前。

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小説と朗読劇、両方を知ることで楽しんでいただける部分もありますので、小説を読んでくださっている皆さまにもぜひ劇場でご覧いただけたら嬉しいです!

公演・チケットの詳細は公式HP・公式Xをご覧ください。

WEB小説も引き続き毎日更新中!

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次回もお楽しみに!


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ぜひ劇場でも『ディスポーザブル・キャスト』の世界をお楽しみください!

2026年11月27日(金)~29日(日)

シアターシャイン

出演

上仁樹/吉野格/塩澤英真/綾切拓也/海月陽斗/矢野冬馬

差異等たかひ子(声の出演)

日替わりゲスト

11月27日(金):藤田浩太朗

11月28日(土):渡邉響

11月29日(日):鈴木遥太

公演・チケットの詳細は公式HP・公式Xにて公開中!

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