2-7話 神殿連絡局
「羨ましいですね。」
「何がでしょう。」
神殿連絡局の女は、
劍国王宮へと続く長い回廊を歩いていた。
年の頃は、二十代後半。
肩までの長さの黒髪は
後ろで一つに束ねられていた。
女性としては背が高く、
細い身体つきをしている。
身につけているのは、
神殿連絡局の神官服だった。
本来は男性神官用のものだが、
彼女はそれを当然のように着こなしている。
華やかな印象はない。
化粧もしていない。
だが、薄く引かれた紅だけが、
白い肌の上で静かに目を引いていた。
「今回の仕事です。」
隣に、同じ年頃の男性神官が並ぶ。
女性は前を向いたまま返した。
「何のことですか?」
「知っていますよ。」
神官は、含みのある笑みを浮かべた。
女性は答えない。
窓から差し込む光が、
白い石床へ長く伸びていた。
「……女性にしかできない、特別な仕事だ。」
なおも、男性神官が言った。
「さぞかし、誇らしいでしょう。」
女性は歩きながら、
視線だけをそちらに向ける。
「あなたも責任者でしょう。」
「そうですね。」
神官は肩を竦めた。
「でも、あなたとは違う。」
「――何が、言いたいんですか。」
女性は小さく息を吐く。
神官は片眉を少しだけ上げて、笑った。
「別に、何も。」
「…………。」
女性は返事をしなかった。
だが、その視線には軽蔑の色が滲んでいた。
やがて。
執務区画へ続く回廊が見えてくる。
衛兵。
補佐官。
王宮職員。
行き交う人々の姿が少しずつ増えていく。
いくつかの確認を経て、
二人は大扉の前で足を止めた。
女性は一度だけ、
神官へ視線を向ける。
「行きましょう。」
神官が頷く。
先ほどまでの表情は消えていた。
扉が開かれる。
「神殿連絡局責任者、
ご挨拶に参りました」
二人は静かに頭を下げた。




