2-5話 残されたもの
鳥の声が聞こえた。
薄く目を開けると、
見慣れた天井が
視界にぼんやりと広がっている。
朝だ――
Lunariaは、
しばらく、そのまま動けなかった。
「……………。」
酷い夢を見た。
覚えている。
断片的に。
けれど、痛むくらいに鮮明に。
《お前でいい》
掠れた声。
睨みつけるような、金色の瞳。
強い力で掴まれた手。
それも、ひどく乱暴に。
Lunariaは無意識に、
左手首へ触れる。
掴まれていた感覚が、
かすかに残っていた。
あざも、傷もない。
けれど、心がぎゅっと固くなっていた。
張り裂けそうなほどの悲しみ。
苦しいほどの愛しい気持ち。
それがまだ、
Lunariaの胸の奥に残っていた。
「……ふぅ。」
ゆっくりと息を吐く。
夢の中の男を思い出した。
……同じ顔だった。
同じ金色の瞳だった。
夜を溶かしたような、長い黒髪をしていた。
違うのは、わかっている。
自分の知っている夜ではない。
けれど……。
でも……。
「……Yule?」
残された感情の行き先を辿るように。
Lunariaは、小さくその名前を呟いた。
――――コンコン。
乾いた、扉を叩く音。
その向こうから、若い侍女の声が聞こえた。
「姫様、お目覚めでしょうか。」
「……ええ。」
扉が開く音がする。
馴染んだ二人の侍女の足音。
「おはよう。」
Lunariaは顔を上げた。




