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2-4話 絡まる
強い力で、手首を掴まれた。
《お前でいい》
その男は言う。
低い声で。
逃げ場のないほどの、必死な声色で。
金色の目は、
猛禽のように、夜の中に輝いて見えた。
そこに、
優しかった兄の面影は残っていない。
長い髪を、乱暴に掴まれる。
そのまま、寝台へ投げつけられた。
《あれを繋ぎ止める》
掠れた声だった。
祈るように。
縋るように。
けれど。
その言葉が向けられているのは、自分ではない。
長い黒髪が、身体に絡みついてくる。
男が掴みたい何かは、
遥か遠くにあることはわかっていた。
それが、自分じゃないことも。
《次が必要だ》
投げ出された身体が軋む。
殴られた頬が痛い。
身体もあちこち打ち付けている。
どうしても。
どうしても、手放してなるものか。
そんな執着に囚われた男が、
彼女の濃紺の瞳に映った。
《お前でいい》
もう一度。
その声が落ちてくる。
悲しい。
押さえつけられながら、声を殺した。
泥の中へ沈むように目を閉じる。
悲しい。
痛いほどに。
苦しい。
息ができないほどに。
それでも。
――――彼を、愛してる。




