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あと、一日
宿場町は夕暮れに沈もうとしていた。
王宮監察局の調査隊は、
朝からずっと街道沿いの宿場を回っていた。
「ひどく汚れた男……ですか。」
監察吏の問いに、
宿屋の主人が不安そうに頷く。
「ああ。
昨日の夕方頃だったか。」
主人は、
記憶を辿るように話し出した。
「酷ぇ有様だったよ。
痩せ細っててな……
けど、目だけは妙にぎらついてた。」
調査隊の空気が、
僅かに張り詰める。
「何か言っていたか?」
「ずっと、ぶつぶつ言ってた。
……祈りみたいだったな。」
「祈祷か?」
「さあな……
ただ…」
そこで、
宿屋の奥から、
年老いた女が口を挟んだ。
「手ぇの組み方が、妙だったんだよ。」
「妙?」
老婆は、
震える手を懐から出して、
思い出そうと動かす。
「今の神官様方とは違う。
もっと古い時代の……」
「昔、
見たことがあるんだ。
子供の頃に一度だけ。」
老婆の声は、掠れていた。
「前の時代の神官様達は、
ああやって祈ってた。」
警備兵達が、
小さく顔を見合わせる。
「他には?」
「“あと一日”
って、
何度も言ってたよ。」
夕風が、
宿場町を吹き抜ける。
「……まだ、
近くにいる可能性が高いな。」
王宮監察官は、低く呟いた。




