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ヨルから生まれた物語  作者: 灯ノ森みつき
第二章《波紋》

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あと、一日

宿場町は夕暮れに沈もうとしていた。


王宮監察局の調査隊は、

朝からずっと街道沿いの宿場を回っていた。


「ひどく汚れた男……ですか。」


監察吏の問いに、

宿屋の主人が不安そうに頷く。


「ああ。

昨日の夕方頃だったか。」


主人は、

記憶を辿るように話し出した。


「酷ぇ有様だったよ。

痩せ細っててな……

けど、目だけは妙にぎらついてた。」


調査隊の空気が、

僅かに張り詰める。


「何か言っていたか?」


「ずっと、ぶつぶつ言ってた。

……祈りみたいだったな。」


「祈祷か?」


「さあな……

ただ…」


そこで、

宿屋の奥から、

年老いた女が口を挟んだ。


「手ぇの組み方が、妙だったんだよ。」


「妙?」


老婆は、

震える手を懐から出して、

思い出そうと動かす。


「今の神官様方とは違う。

もっと古い時代の……」


「昔、

見たことがあるんだ。

子供の頃に一度だけ。」


老婆の声は、掠れていた。


「前の時代の神官様達は、

ああやって祈ってた。」


警備兵達が、

小さく顔を見合わせる。


「他には?」


「“あと一日”

って、

何度も言ってたよ。」


夕風が、

宿場町を吹き抜ける。


「……まだ、

近くにいる可能性が高いな。」


王宮監察官は、低く呟いた。

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