69/71
見つめる先に
王宮は、
静かに眠り始めている。
けれど。
Lunariaの部屋には、
まだ淡い灯りが残っていた。
窓辺。
“彼”は、
今日もそこにいた。
“彼”へ身体を預けたまま、
Lunariaは外を眺めていた。
「………今日も見てるの。」
長い黒髪が、
夜へ溶け込んでいる。
金色の瞳だけが、
静かに光を宿していた。
その視線は、
また西棟へ向けられている。
遠く。
王宮の夜の中で、
小さな灯りが揺れていた。
「……………」
Lunariaも、
ぼんやりとその灯りを見る。
……まだ起きてるのね。
揺れる灯を見つめているうちに、
昨日の晩餐会の光景がふと頭をよぎった。
宵の国側にあった、誰も座らなかった椅子。
「…あ。」
小さく声を上げた。
戴冠前の正式晩餐。
あの時も、
空席があったような……
「あの時は、Elliott様はいらしたわ……」
思い出して、呟く。
なら、あの時の席は――
「Yule、知ってる?」
“彼”は、
答えない。
ただ、
静かに西棟を見つめている。
Lunariaは、
その横顔を見上げた。
「今日は何してるのかしら、あの人。」
独り言みたいに、
そう零す。
夜風が、
静かに部屋へ流れ込んでいた。




