繋がった道
午前の光が、
政務室へ差し込んでいた。
机の上には、
新たに運び込まれた書簡の束。
王都の地図。
神殿地下経路図。
神殿周辺見取り図。
そして。
郊外宿場街の簡易地図。
Lunariaは、
静かに紙を捲る。
「……繋がっているのね。」
小さく、
そう呟いた。
王宮監察局から報告に来た
若い監察吏が、
緊張した面持ちで頷く。
「地下水路は、
神殿地下から東側街道外れの使われなくなった小教会へ通じていたようです。」
机上へ、
追加図面が広げられる。
古い石造りの廃教会の図面だった。
その地下には、
既に使われなくなった礼拝堂が残されていた。
街道沿いの廃教会。
人目につきにくい場所だ。
「地下から直接、外へ出られるの?」
「はい。
教会側地下は半ば崩落しておりますが、
通行自体は可能だそうです。」
さらに数枚の資料を広げる。
「また、
地下礼拝堂脇に、
旧待機室と思われる空間も確認されました。」
Lunariaの視線が上がる。
「待機室?」
「簡易寝台跡、
水瓶、
灯りの痕跡などが。」
監察吏は少し声を落とした。
「最近まで、
使用されていた形跡があります。」
――誰かが、
“使える状態”を維持していた。
Lunariaは目を細める。
単独では、
無理だろう。
必ず、
誰かが繋いでいる。
「……そこから街道へ出ているのね。」
「はい。
黎明国側へ向かった可能性が高いそうです。」
監察吏の報告へ、
側近の官僚達も頷いた。
机の上の街道図を見る。
廃教会から延びる街道は、
森沿いを通り、
小川に沿って
劍国最東の宿場町に続いている。
そして、
その先は黎明国国境――
Lunariaは、
しばらく黙ってそれを見つめていた。
「……黎明国境の山越えは、
神官一人では無理なはず。」
静かな声だった。
黎明国境から一番近い街まで、
馬車でも丸一日かかる。
しかも、獣も野党も出るような場所だ。
「必ず目撃情報があるはず。
国境警備に人員を増やして。
王宮監察官に連絡を。」
官僚達が、
一斉に頭を下げる。
「は。」
紙を捲る音だけが室内に響く。
ふいに。
Lunariaの視線が、
机端の報告書へ止まる。
“神殿地下水路追加確認資料”
簡潔で、
きちんと整理された内容。
正式な署名はない。
けれど、見覚えのある文字だった。
昨夜の空いていた席――Elliott殿下。
「……………」
今度は、王宮監察官の現場補佐…。
仕事の範囲が広すぎて、
Lunariaは目を見張った。
だが何故か。
ほんの少しだけ、
引っかかった。
「……この調査が終わったら、
塞がなきゃダメね。」
そう、ぽつりとこぼした。
即刻、閉鎖しなければ。
劍国神殿へ繋がる経路を、
誰かが使える状態のまま、
残しておくべきではない。




