お願い
机へ突っ伏したまま、
Lunariaは薄く目を開いた。
朝の光が、
静かに部屋へ差し込んでいる。
乾いたインクの匂い。
頬へ残る紙の感触。
……寝ちゃってた。
ぼんやりしたまま顔を上げたところで、
控えめに扉を叩く音がした。
「姫様、
失礼いたします」
侍女達が部屋へ入ってくる。
そして、Lunariaの様子を見るなり、
若い侍女が目を丸くした。
「まさか、
ここで寝てしまわれたんですか?」
Lunariaは、
まだ少し眠そうなまま瞬きをする。
「んー……
そうみたい。」
間の抜けた返事だった。
年嵩の侍女が、
困ったように小さく笑う。
Lunariaは
のろのろと身体を起こした。
その拍子に、
積んであった書類の束にひっかかり
ばさばさと
乾いた音が、
静かな部屋へ響く。
「……」
落ちた紙へ視線を落とした。
それから、部屋を見渡す。
……こんなにひどく散らかってたかしら。
しばらく。
まだはっきりしない頭で、ほんの少し考えて。
やがて、ぽつりと呟いた。
「……片付けといてくれる?」
一瞬。
侍女達が固まった。
顔を見合わせ、驚いたようにLunariaを見る。
「い…いいんですか?!」
若い侍女が、
恐る恐る聞き返す。
「……机も?」
Lunariaは、政務机に目を向けた。
――酷く散らかっている。
「お願い。」
「やった!」
小さく拳を握りしめた若侍女を、
年嵩の侍女がすかさずたしなめていた。
「?」
不思議に思い、Lunariaは首を傾げた。
「うぇ……」
「見ないの。」
若い侍女が、
恐る恐るカップへ手を伸ばす。
年嵩の侍女が、
出来るだけ中を見ないよう、
そろそろとカップを受け取っていた。
――そうだった。
飲みかけのお茶。
そのまま置いておいて、
って言ったまま……半月は経っている。
Lunariaは、
さすがに気まずくなり、横に視線を逸らした。
「姫様、半分意地でしたよね…」
「こら。」
叱りながらも、年嵩侍女も苦笑している。
「〜〜、うるさい。」
Lunariaは恥ずかしくなって、
長椅子にうずくまるように座った。
小さな笑い声が明るい朝の部屋へ滲む。
窓の外で、
小鳥が気持ちよさそうに囀っていた。




