旧王統擁護派
黎明国神殿――
その奥深くにある石室には、
燭台の灯りだけが揺れていた。
卓を囲む男達は、
誰も声を上げない。
『旧王統擁護派』
表立って名乗ることはない。
けれど、外からはそう呼ばれていた。
この場に集められた者達は、
皆、
同じ側へ立つ同士だった。
重たい沈黙。
窓のない部屋の夜は、なおも暗く感じられた。
卓上へ置かれた手紙を、
年嵩の神官が差し出した。
国境手前、
街道沿いの街にいる同士からの
短い報告だった。
「……見つかったそうだ。」
低い声。
安堵ではない。
むしろ、疲れたような響きをしていた。
「接触は?」
「まだです。
ですが、
こちらの者が向かっています。」
やっと掴めた、失踪した神官の足取り。
石室の空気は、なお張り詰めたままだった。
「あれは、
真面目な男でした。」
若い神官が呟く。
「熱心で。
……少し、
思い込みが強いところはありましたが。」
そして、そっと目を伏せた。
「だからこそ、
信じてしまったのでしょう。」
返事はない。
燭台の火だけが揺れている。
「神殿上層部は、
何も知らなかったそうです。」
別の男が、
疲れたように息を吐いた。
「付き添い人変更も、
正式には通っていないと。」
「だろうな。」
年嵩の神官が頷く。
「こんなこと、
表へ出せるはずがない。」
全員が口をつぐんだ。
「あの方は……
何を考えておられるのだ。」
誰も視線を上げない。
ただ。
その場にいた全員が、
同じ存在を思い浮かべている。
「当初の計画では、
合意の上でただ入れ替わるだけだったと。」
「……またか。」
小さな声だった。
「また、誰かが狂わされている。」
「あの方は……いつもこうだ。」
「――それでも。」
若い神官が、
迷うように言葉を落とす。
「それすら、
夜の導きなのでしょうか。」
――沈黙。
祈りにも、
諦めにも似た空気だった。
「――先に保護しなければ。」
年嵩の神官が口を開く。
「王族側が動く前に。」
卓上へ、
新たな紙片が置かれる。
街道沿いの宿屋。
合流予定の場所。
密使の印。
託された同士が、小走りに部屋を出て行く。
「……間に合えばいいが。」
小さな呟きが、
石室へ沈む。
遠く。
再び鐘が鳴った。




