Yule
「――――っ、、、」
目が覚めた時、Lunariaは泣いていた。
胸の奥が締め付けられるような
深い悲しみ。
とめどなく溢れて、しばらく涙が止まらなかった。
あれは……誰?
心の輪郭がひどく曖昧で、
それが誰の気持ちなのかわからなかった。
泣いているのは自分なのに――
違う誰かのような気もした。
「……………」
Lunariaは、気だるい身体を無理やり起こした。
袖元に目をやり、
いつのまにか
夜着に着替えていることに気づく。
寝台の側には簡単な食事と、
菓子の乗った小皿が置いてあった。
……寝ちゃってたのね。
ぼんやりと思う。
お腹は空いてはいなかった。
部屋の中は暗く、
外の灯も、もうほとんど落ちていた。
窓の外には、深い夜。
しん、と。
星だけが煌めいている。
今夜は、新月だった。
「………暑い。」
Lunariaはテラスへの扉に近づき、取手に触れた。
ふわり。
開けたとたん、
夜風が吹き込み、
息苦しかった部屋の中に呼吸が生まれた。
気持ちいい……
冷たい空気を吸い込み、
ふう、と吐き出す。
その一瞬。
視界の端に、違和感が生まれた。
「……?」
灯の届かない場所。
部屋の片隅に。
――いる。
そこだけ、夜が濃い。
……ああ、来たのね。
なぜだか、Lunariaはほっとしていた。
不思議と、
怖くはなかった。
――――夜がささやく。
《呼べ》
頭の中に、声が響く。
《お前でいい》
痺れるような。
低い声。
気配が寄った。
《お前でいい》
ええ。
Lunariaの唇が動く。
わたし、も……
『――――』
夜の気配が、
くちびるに触れる。
……ええ。
わたし、も。
あなたでいい。
「――Yule」。
――――――瞬間。
どくん、と。
鼓動が鳴る。
ぐにゃり。
長い影が、微かに揺れた。
現れたのは。
輪郭の曖昧な――――人の形。
Lunariaは微笑んだ。
月の明かりに、夜が寄り添う。




