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ヨルから生まれた物語【第二部連載中】  作者: 灯ノ森みつき
【第二部】第四章《花冠》

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2-60話 観るもの達

第二部 撰択編


弟の足音が遠ざかっていく。


帰路とは、反対の方向へ。


二人は顔を見合わせた。


「……追う?」


長兄の問いに、Ethanは躊躇わなかった。


「行こう。」


弟が、あのように走るところを見たことがなかった。


少し距離を置き、

二人は後ろからついて行った。


人の間を駆け抜け、

夏至祭の柱がある広場まで戻る。



誰かを探すように、

Elliottの歩みが足早になる。


その途中――

いくつかの気配が、Elliottに張り付いた。


―― 一人じゃない。


Ethanは眉根を寄せた。


……なんだ?


おかしい。


人が増えている。


それも、

Elliottだけを取り囲むように。


「変だな。」


「ああ。」


Edricも気付いたようだった。


細い路地を何度か折れ曲がった後、

突然Elliottは立ち止まった。


そこはまだ朝日が当たらない、

人通りも少ない場所だった。


「――いますよね。」


一瞬。


自分達へ向けられた言葉かと思い、

二人の兄は息を止めた。


だが、違った。


Elliottの声に応えるように、

暗がりから数名が姿を現した。


四名――殺気はない。


だが、妙だった。


服装も。

年齢も。

性別も。


何一つ共通点がない。


「黒装束じゃないのは、初めて見ました。」


弟は、慣れた様子で話しかけている。


「知り合い……ではなさそうだね。」


小声で言う長兄に、

Ethanは頷いた。


「ああ。」


だが、初対面でもなさそうだ。


中の一人が、

Elliottへ静かに礼をする。


「殿下。」


だが、

Elliottの視線は変わらず鋭かった。


「――前の方とは違うのですね。」


「あやつは死にました。」


「……っ。」


こともなげに告げられた言葉に、

Elliottは息を呑んだ。


「夜の君に拝することが出来、あやつも本望だったことでしょう。」


「……全く理解できません。」


「左様ですか。」


一人の男が静かに言った。


Elliottは警戒を解かずに四人を睨みつける。


「今回は観測ですか。試し、ですか。」


観測。

試し。


馴染みのない言葉に、

Ethanはぴくりとした。


知らず、

腰の剣へ手を添える。


弟は丸腰だった。


けれど、怯まない。


「試し、でございます。」


その答えに、

Elliottは身構えた。


「そちらの、お二人の。」


「……っ!」


視線が一瞬でこちらへ集まる。


とたん、周囲の空気が張った。


「……兄上達。」


Elliottの目に、

僅かな焦りが見えた。


「……お邪魔だったかな。」


長兄が平静を装って言う。


だが、

その声にいつもの余裕はない。


背中へ片手を回している。


……長兄も構えている。


「対象の捕捉、成功。」


誰かが、無機質に声を上げた。


「お初にお目にかかります、Edric殿下。」


「そして、Ethan殿下。」


男達は恭しく一礼した。


「我々は、"観る者"。」


静かな声が続く。


「はるか古の時代より。」


「この世界の行く末を、"観る者"にございます。」


「あなた達は、いつもそればっかりですね。」


代わる代わる告げる男達の言葉に、

Elliottの声が僅かに怒気を帯びる。


怒っている――


あの穏やかな弟が。


「観測分岐点への接触成功。二名からの追跡反応を確認。」


「その後、観測分岐点に揺らぎが発生。

今後二名を観測対象と認識する。」


無機質な声で、

何かを記録するように。


『観る者』達は淡々と告げた。


「今後は、あなた達も対象となります。」


殺意はない。


だが、不穏だった。


「見られるのは慣れてるけど。

……穏やかじゃないね。」


警戒を解かず、

Edricが言う。


Ethanも、

剣の柄は手をかけた。


その動きを見て、


『観る者』達は

静かに数歩後ろへ下がる。


「――今、彼の方は眠られておる。」


「今ではない。」


ゆっくりと。


音もなく。


彼らは、暗がりへ溶けるように姿を消した。


「……はあ。」


目に見えて、

Elliottは肩の力を抜く。


「なんで来るんですか。」


追ってきた二人に対して、少し怒っているようだった。


「お前、剣は。」


反射的に、声が出た。


備えろ、と自分は弟に教えていた。


もしも。


このようなことが、

度々起こっているとしたなら。


問うたEthanに、Elliottは真剣な顔で答えた。


「文官が、帯剣していたらおかしいでしょう。」


「…………。」


Ethanは絶句した。


Edricも、眉を顰めている。


俺達の弟は――


いつからこんな風に、

その場に立つようになったんだろう。


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