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ヨルから生まれた物語【第二部連載中】  作者: 灯ノ森みつき
【第二部】第四章《花冠》

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2-57話 変わらないもの

第二部 撰択編


太陽がすっかり沈んだ頃。


街の祭りは佳境を迎えていた。


神殿での祭祀とは違う賑やかな音楽に、

人々の笑い声が重なる。


声が掻き消されそうなほどの賑わいだった。


「あの、祭礼用の外套はどうしたんだい。」


礼装を解いたEdricは、

片手で串を弄びながら、

隣にいるEthanへ問いかけた。


「渡された。」


憮然と答えたEthanは、

手にした串焼きを頬張っていた。


Edricと同じ軽装姿。


ただ、

腰には使い込まれた剣を下げている。


「前日に採寸されて、徹夜明けの顔で渡されたら断れなかった。」


言って、

また串に齧り付く。


……ヨルが、串焼きを頬張っている。


昼間に見た弟との落差に、

Edricは思わず苦笑した。


「それは……衣装長の勝ちだね。」


衣装長には、

見えていたのだろう。


今日の景色が。


「なかなかやるね。」


感心したように言うと、

Ethanは渋い顔をこちらに向けた。


「断れなかった。」


「明日には噂になっているだろうね。

王配は、宵の国の王弟家だと。」


「……返答はまだですが。」


「それが事実だとしても、周りからはそう見える。」


言い切るEdricに、

Ethanは複雑そうな顔をしていた。


「――こんなつもりじゃなかった。」


自分でも、わかっているらしかった。


Ethanが、噂になってどうするんだと。


「断れなかったんだ……。」

「まあ、相手がヨルだからね。」


どこに流れがくるのか、

Edricにもわからない。


けれどその流れが、

いつかElliottに届くことだけはわかっている。


「必要なんだよ、きっと。」


串焼きを見つめながら、Edricは呟いた。


「兄上!」


喧騒の向こう側から聞こえた声に、

二人が同時に振り返った。


Elliottだ。


両手いっぱいに、

屋台の食べ物を抱えている。


祭の中にいる兄達見て、

少し不思議そうな顔をしていた。


「兄上達が、街で串焼きを食べるなんて……。」


「君が、渡してくるからでしょう。」


Edricは笑った。


「美味いぞ。お前も食べろ。」


「まだ、こんなにあるんですけど……。」


串を差し出すEthanへ、

両手に抱えた食べ物を見せながら、

Elliottは困ったように笑っていた。


「またそんなに買ったの?」


「いえ……色々な方からいただいて。」


言いにくそうにする弟を見て、

Edricはなんとなく察した。


きっと、夏至祭の準備中に

街で出会った者達だろう。


ふと、Elliottは辺りを見渡す。


「Ulricは?」


「もう動けないって、家で倒れてたよ。」


「…………。」


Elliottの顔が曇った。


「僕の仕事まで任せてしまったので……。」


「まあ、休めば治るはずだよ。」


「……兄上が来たから、こうなったと思うんですけど。」


「そうだっけ?」


Edricが笑った、その時。


少し離れたところで、

数名の子供達が足を止めた。


Elliottを見るなり、ぱっと顔が輝いた。


「あ、お兄ちゃんだ!」

「お兄ちゃん!」

「また来てくれた!」


子供達が一斉に駆け寄ってきた。


「転ぶよ。」


Elliottは笑いながらしゃがみ込む。


子供達に目線を合わせ、

いつもと同じ調子で話し始める。


二人は、

少し離れた場所からその様子を眺めていた。


「――僕たちの弟は、いつからあんな感じだったかな。」


Edricは、子供達に囲まれた弟を見つめたまま目を細めた。


Ethanも手を止め、そちらに目を向けた。


「……あの人の影響だな。」


「だろうね。」


街の賑わいは、ますます盛り上がっていく。


人々が収穫を祝う日。


その時、ヨルは神殿で眠る。


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