2-52話 Yuleは眠る
第二部 撰択編
Yuleがいない。
屋上に上がったLunariaは、
王都の方に見える灯りを見ていた。
今夜は夏至祭の前夜祭。
いつもより幾分明るく見える街。
風に乗って、
祭の音楽もかすかに聞こえてくる。
街の祭りでは、
前夜祭から後祭まで、
人々は夜通し歌って踊るそうだ。
「どこいっちゃったの、Yule。」
いつもはそこにいる夜の姿が、
今日は見当たらない。
あの美しい黒髪をした、人ならざるもの。
今日はなぜか、とても恋しく思った。
会いたい。
……どうしてだろう。
姿も、仕草も、何一つ似ていないのに。
最近、Yuleをみていると、
ふとした瞬間に、
兄の傍にいた時のことを思い出す。
兄の近くに行きたい。
兄の声が聞きたい。
兄に触れたい。
時折、そんな風に感じる。
……もう、ここにはいない人なのに。
「Leonis。」
兄の名前を呼んでみる。
生きていた時には、
呼んだことがなかったのに。
「…………。」
Yuleがいない。
兄もいない。
不安ではない。
ただ……会いたい。
なんでだろう。
Lunariaは、それ以上を言葉に出来なかった。
Yuleは、眠っている――
ヨルが眠る日。
太陽が一番長く出ている日を、
劍国ではそう呼んでいる。
一年の中で、夜の気配が一番薄くなる日。
ヨルを継ぐ者にとっては――
ヨルと眠る日。
夏至祭は明日、本番を迎える。




