↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヨルから生まれた物語【第二部連載中】  作者: 灯ノ森みつき
【第二部】第四章《花冠》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/150

2-50話 もう、一人

第二部 撰択編


Lunariaが祭礼衣裳の最終確認をしていた、

同じ頃。


劍国王宮の一室では、

外交側での最終確認が行われていた。


夏至祭当日の、

各国から来る使節団の移動経路。

宿泊施設の手配、来賓対応など――


机の上には、

既に確認を終えた書類が積まれている。


高官達がようやく終わりを見出したその時。


政務室の扉が叩かれた。


「失礼いたします。」


若い文官が、

一通の書簡を抱えて入室した。


「宵の国使節団より急ぎの連絡です。」


部屋の空気が少しだけ引き締まる。


高官の一人が封を確認した。

確かに宵の国の印章だった。


「読んでくれ。」


文官は一礼し書簡を開いた。


「使節団代表変更のお知らせです。」

「変更?」


「はい。

代表を務める予定だった大使が、

体調を崩されたそうです。その代理として――」


そこまで読んで、

文官の声が僅かに止まった。


「どうした。」

「……いえ。」


文官は咳払いをする。


「代理として、Edric Ehrenberg外交官が来訪されます。」


その瞬間、

その場にいる全員が、動きを止めた。


「……Edric Ehrenberg外交官。」

「宵の国、王弟家の長男殿です。」


文官は繰り返した。


「王弟家の……長男殿。」

「――長男まで。」


誰かが呟いた。


「次男殿と三男殿は、既に王宮内におられますな。」

「これはどういった意図なのでしょう。」

「はて……。」


いつの間にか、

文官の周りに官僚達が集まってきた。


「女王陛下へ、王弟家からの返答は?」

「いまだ届いておりませんな。」

「返答より先に、本人達が来られたと。」


おそらく、誰もが同じことを考えていた。


王弟家長男。

王弟家次男。

王弟家三男。


王配候補が、全員揃う。


「……こちらで選べということでしょうか。」


ぽつりと落ちた言葉に、

誰も答えることが出来なかった。


「王弟家としての誠意かもしれません。」

「あるいは意思表示かと。」

「圧力という可能性もあります。」


議論が始まる。


だが。


誰一人として納得していない。


その時、書簡を持っていた文官が声を上げた。


「あ……。」


「まだ何かあるのか。」

「はい、続きがございました。」


文官は書簡の続きを捲り、読み上げた。


「なお、長男殿は既に劍国へ到着済みとのことです。」


「……今何と?」


「既に到着済みだそうです。」

「到着予定ではなく?」

「到着済み……ですね。」


確認するように、文官は書簡に目を落とした。


政務室に沈黙が落ちた。


「だから急ぎの連絡か……。」


高官が、ぽつりと呟く。


部屋の空気が重くなる。


「とにかく、

宵の国側の対応を変更するぞ。」


年嵩の官僚が言うと、

皆は慌ただしく仕事へ戻っていった。


だが、その場を離れる直前。


書簡へもう一度目を落とした高官が、

小さく呟く。


「……誰が本命なのか、もうわからん。」


誰も否定できなかった。


それが、その場にいた全員の結論だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。