↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヨルから生まれた物語【第二部連載中】  作者: 灯ノ森みつき
【第二部】第三章《芽吹き》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

133/149

2-45話 見てくれる人

第二部 撰択編


夕刻。


Lunariaは、

珍しく全ての政務から解放されていた。


明日の前祭まで、特にすることがない。


久しぶりにくつろいでみようかと、

しばらくぶりに団欒室に足を運んでみたが、

……落ち着かない。


何をお話しすればいいのかしら。


Lunariaは、

後ろに付き従う騎士のことを考えあぐねていた。


昼からずっと。

明日も、朝から。


祭祀期間中、Ethan殿下はLunariaの警護騎士として、常に傍へ控えることになっていた。


……正直、どうすれば良いのかわからなかった。


話しかけてもいいのか。


話しかけない方がいいのか。


相手は軍人だ。


それも、宵の国では数ある騎士団を纏める立場の将官だった。


そんな人を、自分の警護だけのために傍に置いてしまって良いのだろうか。


官僚達も、Ethan殿下は本来とても忙しい方だと言っていた。


「……あの。」


なんで、来てくれたんだろう。


そう聞いてみようかと声を上げたが、

はたと思い出した。


――この方も、王配候補なのよね……。


「はい。」


声は、すぐに返ってきた。


宵の国王弟家のEthan殿下は、

まっすぐにLunariaを見つめている。


「…………。」


聞けない。


もしも――


『王配候補として参りました。』


なんて答えられてしまったら。


あと数日の祭祀期間を、どんな顔をしてこの方と過ごせばいいのか。


Lunariaには、想像も出来なかった。


「…………。」


だから。


「その……なんとお呼びすればよろしいかしら。」


そう、話を逸らすことにした。


「Ethanで。」


思いがけず、返事はすぐに返ってきた。


――Ethan。


Ethan殿下、でも。

Ethan殿、でも。

Ethan様でもなく。


「Ethan。」

「はい。」


「……よろしいんでしょうか。」

「構いません。」


……本当かしら。


自分より年上の殿方を、呼び捨てにしてしまって。

なんだか、Lunariaは落ち着かなかった。


「ね、Ethan。」

「なんでしょう。」 


Ethanの深い緑の瞳は、

まっすぐにLunariaを捉えていた。


あまりにもまっすぐな視線に、

思わずLunariaは口ごもった。


……あまり、似てないのね。


弟のElliott殿下は、

いつも視線を逸らしてばかりなのに。


そう思うと、

少しだけ胸の奥が痛んだ。


「少し、お話してくれないかしら。」


「私は話すのは得意ではありませんが……。Lunaria様がお望みでしたら。」


――Lunaria、様。


Lunariaは、目を瞬かせた。


久しぶりに、

名前を呼ばれた気がした。


「――ありがとう。」


思わず、微笑んだ。


その時から。


「それでね、Ethan。」

「はい。」


「Ethan、あのね。」

「はい。」


「Ethan。」

「はい。」


Lunariaは、Ethanの名前を何度も呼んだ。


Ethanはほとんど聞いているだけで、こちらから尋ねなければ「はい」としか答えない。


それでも。


ちゃんと聞いてくれる。


ちゃんと見ていてくれる。


「Ethan。」

「はい。」


それだけで、Lunariaはとても嬉しかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。