2-41話 それってずるくないだろうか。
第二部 撰択編
「Elliott。」
「はい。」
呼ばれた青年が顔を上げる。
夏至祭準備室。
祭の期間のみ設置された部署。
そこの責任者である叔父の前に、
Elliottは立っていた。
隣には兄のEthanと、王弟家侍従のUlricがいる。
叔父から数枚の書類が渡され、
Elliottは目を落とした。
“祭礼運営補佐”
神殿との連絡。
各部署との調整。
祭礼動線の確認。
使節団との折衝。
不足人員の補助。
緊急時対応。
祭礼用備品管理。
その他諸々――
「……範囲が広過ぎませんか?」
眉を寄せる三男に、叔父は頷いた。
「広い。人手不足だ。」
実に簡潔な説明だった。
要するに雑用だ。
それも非常に広範囲な。
叔父は、ちらりと隣のUlricへ目を向ける。
「お前も一緒だ。」
Ulricも、渡された書類に目を通した。
Elliottと同じ“祭礼運営補佐”。
だがその下に、手書きで一文。
“Elliottの補佐”
「……一個多くないですか?」
「私が追加した。」
すかさず叔父が言った。
Ulricが書類とElliottを見比べる。
「…………。」
Elliottは、
なんとも言えない居心地の悪さを感じた。
「承知いたしました。」
涼しい顔を崩さず、
Ulricは返事をした。
だが、その目は何かを言いたげだった。
「で、Ethanだが。」
「はい。」
Ethanが顔を上げる。
叔父は、そっと書類を手渡した。
一枚。
たった一枚だけ。
Ethanが確認する。
“女王陛下身辺警護”
――それだけだった。
「以上だ。」
叔父は言った。
「…………。」
Elliottは次男を見た。
次に、手元の自分の書類に目を落とした。
「…………。」
隣では、Ulricも同じようにEthanの書類を見ていた。
「…………。」
「…………。」
「何だ。」
Ethanが顔を上げた。
「いえ。」
Elliottは首を振る。
「特に。」
侍従も頷いた。
だが二人とも思っていた。
それってずるくないだろうか、と。




