2-40話 強すぎる
第二部 撰択編
夏至祭準備室。
新しく与えられた部屋の中で、
官僚達は名簿を睨んでいた。
「どうされますか?」
「うむ……。」
宵の国・王弟付き高官は悩まされていた。
劍国側官僚と、
臨時政務室として置かれていた宵の国側官僚。
そして、
宵の国から派遣されてきた追加人員達。
それぞれの配置を決める会議中だった。
ほとんどの人員は、
適材適所へ滞りなく配置できた。
あとは、ただ一名。
王弟子息・次男、Ethan。
「やはり、警備の方……。」
「馬鹿を言うな。一般警備兵と次男殿を同列に並べられるか!」
若い官僚の提案に、すぐさま別の声が飛ぶ。
それもそうか……。
叔父である宵の国高官は、眉間に皺を寄せた。
劍国から見て、同盟国の将官を、
街の警備などには使えない。
「では儀礼警護は?」
「それは夏至祭当日だけだ。人員も決まっている。」
「外交補佐。」
「人材の無駄遣いだ。」
「神殿連絡。」
「神殿側が困るだろう。」
沈黙が落ちた。
全員が名簿を見る。
王弟子息・次男、Ethan。
――宵の国・王国騎士団総長。
その文字だけが、
やけに存在感を放っていた。
「……強すぎるんだ。」
年嵩の官僚が呻くように言った。
「強すぎる?」
存在感が。
「軍事、治安、警護。
どこへ置いても上位職になる。」
なるほど。
下につけても、上の者が。
上につけても、下の者が。
だから困る。
「では、いっそ遊撃的な立場で……。」
「それはそれで持て余す。」
再びの沈黙が落ちた。
王弟付き高官は、
甥の置き場所について、
頭を悩ませる皆に申し訳ない気持ちになった。
――全ては、王弟家の事情でこのようなことになっているのだ。
観光を理由に休暇を取り、
甥がここにいることなど、
口が裂けても言えなかった。
「……では。」
しばらくして。
若い官僚が恐る恐る口を開いた。
「女王陛下の身辺警護は。」
全員の視線が上がる。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
なるほど。
夏至祭期間中。
女王は神殿、祭礼、外交使節との接触が続く。
警備体制は通常より強化される。
身分も問題ない。
実力も問題ない。
むしろ十分過ぎる。
「……それだな。」
「それですね。」
「それしかない。」
あっさり決まった。
名簿へ書き込みが加えられる。
王弟子息・次男、Ethan。
夏至祭期間中・女王身辺警護担当。
誰も異論はなかった。
ただ一人。
叔父である王弟付き高官だけが、
名簿に加えられた文字を見つめていた。
「……だが、これで本当に大丈夫だろうか。」
もう一人の甥の顔が、脳裏を過った。




