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ヨルから生まれた物語【第二部連載中】  作者: 灯ノ森みつき
【第二部】第三章《芽吹き》

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2-31話 猫はいいわね

第二部 撰択編


一日の執務を終えたLunariaは、

ようやく自室へ戻っていた。


重い髪飾りは外され、

戴冠後から身につけるようになった装飾品を、

侍女達が慣れた手付きで片付けていく。


「明日のご予定です。」


年嵩の侍女が手帳を確認する。


「午前は各局からの定例報告と裁可。

午後は神殿側との祭儀進行の確認です。」


「その後は?」


「本日、宵の国から夏至祭準備室へ入られた方々との顔合わせがございます。」


「明日も大変そうね。」


今の報告で、

今日の疲れがほんの少し増した。


「姫様、温かいお茶をご用意いたしましょうか。」

「お願い。」


若い侍女は頷いた。


年嵩の侍女は手帳を閉じると、

浴室を整えに部屋を出て行く。


窓は半分ほど開けられていて、夏至を目前に控えた夜風が薄いカーテンを揺らしている。


かたんと、ふいにテラスの方から音がした。


若い侍女がそちらへ顔を向ける。


「あら、猫。」


Lunariaも視線を上げた。


白と灰の混じった毛並みの猫が、

当然のような顔でテラスに座っている。


「……追い払いますか?」


若い侍女が、遠慮がちに尋ねる。


猫はじっと、こちらを見ていた。


「このままでいいわ。」


しばらくして、Lunariaはそう答えた。


「かしこまりました。」


若い侍女は、どこかほっとしたように答え、

そしてそのまま、お茶の準備へ戻っていった。


「……ねこ。」


すっかりくつろいだ様子の猫を見て、

Lunariaは、

西棟にいた青年のことを思い出していた。


夜中に、一人で猫に餌をやっていたあの人。


駆け寄って挨拶をしたら、

驚いた様子だった。


切り抜いた空みたいな、青い瞳をしていた。


話しかけてもそっけなくて。


――最後まで、

Lunariaのことを陛下と呼ばなかった。


「……聞きたかったのに。」


黒い服を着た、変な男が現れて。


Yuleに怯えた様子もなくて。


『おやすみなさい』


そう言って、逃げるように走り去った。


「…………。」


そしてそのまま、宵の国へ帰ってしまった。


聞きたいことは、結局何も聞けないまま。


『帰ってください』


話そうとするLunariaに、

会うなり彼はそう言ったことを思い出した。


……やっぱり、なんなのあの人。


「ちょっと、腹立つ。」


でも。


明日来る者達の中に、あの人もいるのかしら。


そんなことを、思ってしまう。


Lunariaは立ち上がり、

そっとテラスの扉を開けた。


同じテラスに面している、

隣の王配室に目を向ける。


中は真っ暗だった。


明日に控えた、宵の国側との顔合わせ。

その中に、婚約者候補の二人がいる。


「……お前はいいわね。」


猫を見つめながら、

Lunariaはため息をついた。


ぽつりと零したLunariaに、

猫は一声だけ鳴いた。


にゃあ。


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