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ヨルから生まれた物語【第二部連載中】  作者: 灯ノ森みつき
【第二部】第二章《蕾》

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2-25話 俺も行く。

劍国王宮から届いた正式書簡。


その前で、宵の国の王弟は指を組んでいた。


「あー……Elliott。」


「なんでしょう。」


父に呼び出された三番目の息子は、

亡き妻にそっくりな顔で首を傾げた。


「三日後に、劍国王宮にいる義弟の所に入ってくれ。」


「三日後、ですか?」


息子は、ふた月ほど前に帰ってきたばかりなのに、と言いたげな顔をしていた。


「なぜでしょうか?」


「それは……。」


王弟の視線が、机の隅にある書簡にちらりと逸れる。


「……義弟から打診があって。」


これは嘘ではない。


「夏至祭に向けて、人員が必要だそうだ。」


眉間に皺を寄せ、絞り出すように言った。


これも、嘘ではない。


ただ、全てを伝えてはいないだけだ。


「女王陛下ご即位の際に、政務支援として入った臨時政務室を、夏至祭に向けて再編し直すらしい。」


「……はぁ。」


納得してそうで、してなさそうな複雑な表情。


その後ろで、Edricは窓の外を眺めていた。


Ethanは少し離れた場所で本を読んでいる。

……ようなふりをしている。


「嫌か?」


「……まあ、仕事でしたら。」


渋々ながらの、了承。


まずまずの手応えに、王弟は小さく頷いた。


「夏至祭が終わるまでの間だけ。祭が終われば臨時政務室も解散するそうだよ。」


長男が、柔らかい微笑みで弟に伝える。


「それでしたら。」


三男は、少しだけ肩の力を抜いたようだった。


「前回は……災難だったね。」


「兄上、完全に遊んでますよね。」


笑いを堪えるように言う長兄に、

Elliottは恨めしそうに言った。


前回の劍国滞在時。


この真面目な三男が、どういったわけか、

「夜中に若い女王の部屋に通う男性」と誤解されて噂の的になっていたらしい。


本人曰く、夜中に猫に餌をやっていただけ。

だそうだ。


「まあ、その辺りは今回は大丈夫だろう……。」


「……?」


うっかり口を滑らせた父に、

三男は不思議そうな顔をした。


「あー、ところで。

荷造りの方は間に合いそうかい?」


すかさず、長男がElliottの視線を奪う。


「三日もあれば、なんとか。」


「なら、大変だろうけどよろしく頼むよ。」


長男は微笑んだ。

この微笑みに、絆されない人間はいない。


「はぁ。」


……だが、弟には効かなかったようだ。


その時、パタン、と乾いた音がした。


それまで、読書をしている……ようなふりをしていたEthanが、本を閉じて立ち上がった。


そして、一声。


「俺も行く。」


「!?」


Elliottが振り返る。


王弟も。


Edricも。


揃って、一斉にEthanを見た。


「兄上がですか?」


次男は、軍部の要職についている。

簡単に国を離れるわけにはいかない。


その兄が、なぜ。


Elliottの視線が、とたんに怪しむものに変わった。


「……聞いてないぞ。」


王弟は、天を仰いで顔を覆った。


聞いてない。


次男、何故今なんだ。


「なんで、兄上まで。」


「……観光だ。」


訝しむElliottに、次男が答える。


弱い。


その理由は、あまりにも弱い。


窓際にいる長男は、

口元を押さえながら肩を震わせている。


――お前か。


王弟は、問うようにEdricへ視線を送った。


Edricは、小さく首を横へ振った。


だが、どうやら知らなかったようだ。


「兄上が、観光のために軍務を離れる訳がないでしょう。」


「休暇だ。」


「休暇も、取ったことありませんよね?」


「だから、取る。」


「観光でですか?」


「ああ。」


「だから何故。」


「理由はない。

なくても動かねばならない時はある。」


「それって本当に今ですか!?」


頑ななEthanに、

Elliottは、ますます訝しむような顔になっていた。


長男は、もう笑いを堪えられないようで、

掴んでいるカーテンが引きちぎれんばかりに軋んでいる。


「絶対、何か隠してますよね!?」


「「…………。」」


兄達は、一斉に口をつぐんだ。


――嘘は言ってない。


誰も。


王弟はこめかみを押さえながら、

深いため息をついた。


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