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2-24話 黒髪の神学生
床には、
男物の神官服が落ちていた。
乱雑に脱ぎ捨てられたままの外套。
椅子の背に掛けられた上着。
開け放たれた窓から、
夜風が静かに入り込んでいる。
女は寝台に身体を横たえたまま、
ぼんやりと天井を見上げていた。
どれくらい時間が経ったのだろう。
外ではもう、
虫の声が鳴いている。
「……。」
そろそろ戻らなければならない。
重い身体を起こす。
床に落ちた服を拾い上げ、
一つずつ身につけていく。
乱れた髪を指で整え、
最後に上着へ手を伸ばした。
すっと視界の端に差し出される上着。
女は思わず顔を上げた。
黒髪の青年が、
何も言わずに立っている。
「……ありがとう。」
受け取り、袖を通す。
青年は静かにそれを見ていた。
やがて。
「……来週も、あなたが来るの?」
青年が言った。
女は僅かに目を瞬く。
「……いいえ。」
当番ではない。
来週は別の担当者だ。
そのことは、青年も知っているはずだった。
「そう。」
黒髪の青年は目を伏せた。
ただ、それだけだった。




