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ヨルから生まれた物語【第二部連載中】  作者: 灯ノ森みつき
【第二部】第二章《蕾》

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2-23話 神殿連絡局の女

「失礼いたします。」


小謁見室に入ってきた女性の服装に、Lunariaの視線が止まった。


男性用の神官服。

それを当たり前のように着こなしている。


以前、若侍女が言っていた言葉を思い出した。


先ほどの衣装合わせの直後だから、

余計にそう思うのだろうか。


かっこいい。


「神殿連絡局の者です。」


「ええ、覚えているわ。」


彼女は頭を下げた。


「どうぞ。」


席を勧める。


女性は、Lunariaが腰を下ろすのを待ってから、向かいの席に着いた。


「本日は、夏至祭準備の進捗についてご報告に参りました。」


女性は持参した書類を机の上へ並べた。


その厚みに、

Lunariaは思わず目を瞬かせる。


「随分あるのね。」


「確認事項が増えましたので。」


女性は淡々と答えた。


「祭祀区域の警備体制。

来賓の導線。

奉納品の保管状況。

神殿内の出入り管理。

全て見直しております。」


「そこまで?」


「前回の件がございましたので。」


落ち着いた声だった。


「……そうね。」


それ以上、何も言えない。


その場にいる二人には、それで十分だった。


Lunaria戴冠の際の継承儀式。


儀式参加者が、

河口で遺体となって発見された。


神殿内部の混乱。


外交上の問題。


完全に、終わった話ではない。


女性は書類を一枚めくった。


「神殿から地下水路へ繋がる通路の封鎖も、完了しております。」


「ええ。」


Lunariaは頷いた。


事件解決後、

真っ先に命じたものの一つだった。


神殿の地下に張り巡らされた、

今では使われていない地下通路。


容疑者だった世話役神官は、

そこを利用して神殿外へ脱出していた。


「他には問題は?」

「ございません。」


女性は即答した。


「出入り可能な経路は全て再確認済みです。」


「そう。」


「警備計画も組みやすくなりました。」


僅かだったが、

その声には安堵が滲んでいた。


Lunariaは机の上の書類へ目を落とした。


どれも細かいが、必要なものばかりだ。


けれど、その量は明らかに異常だった。


「……あなたも大変ね。」


ぽつりと呟く。


女性は一瞬だけ目を瞬いた。


だが何も言わなかった。


ただ静かに頭を下げる。


「――留学生区画につきましては、

現在確認作業を進めております。」


何事もなかったかのように、

次の書類を開いた。


「黎明側の留学生も?」


「はい。」


「問題は?」


「今のところはございません。」


女性は答える。


「夏至祭期間中は、

例年通り行動範囲を制限いたします。」


「そう。」


「研究員、留学生共に把握しております。」


Lunariaは頷いた。


「他には?」


「ありません。報告は以上です。」


女性は書類をまとめる。


「では、引き続きよろしくお願いいたします。」


女性は立ち上がり、一礼した。


「失礼いたします。」


その後、小謁見室を後にする。


扉が閉まる。


静かになった室内で、

Lunariaはふと先程の女性の姿を思い出した。


男性用の神官服を颯爽と着こなし、

膨大な仕事を抱えながら歩いている。


「……確かに、かっこいいわね。」


誰に聞かせるでもなく、

小さく呟いた。

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