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ヨルから生まれた物語【第二部連載中】  作者: 灯ノ森みつき
【第二部】第二章《蕾》

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2-21話 Elliottしかいない。

こう来たか――


宵の国王弟は眉間に皺を寄せ、

手で顔を覆った。


劍国からの正式書簡は、

数日後には宵の国、王弟家に届いていた。


開かれた書類を前に、

王弟と二人の息子達は向かい合っていた。


「どう思う。」


父に問われ、二人の息子は顔を見合わせた。


「Elliottですね。」


迷うことなく、Edricが言った。


「Elliottだな。」


Ethanも頷く。


「だろうな。」


王弟は、小さく息をついた。


当たり前のように、誰も異論を挟まない。


「他に、選択肢でも?」


Edricの声は軽快だった。


「我々では、夜に拒まれる。」


Ethanの声色は慎重だ。


劍の国・ヨル。


隣国の若い女王へ提出した、

釣書に対する劍国官僚からの返答。


その答えが、いまここで出された。


「十年前の縁談の話は、Edricにだったのだが。」


「あの話、まだ生きてたんですか。」


「――十年前から、お前がいまだに変わらんからな。」


父からの嫌味に、

Edricは肩をすくめた。


「僕にはUlricがいますから。今更、伴侶など必要ないでしょう?」


「そのUlricの息子は、すでに七歳になっているぞ。」


返された冗談に、Edricは苦笑した。


「やはり、こうなるんだな。」


Ethanは、開かれた書簡に目を落としている。


もう、何年も昔から。


二人の兄には、とうにわかっていた事だった。


「まさかとは、思っていたが……。」


王弟は、目頭を押さえながら天を仰いだ。


「ええ、《ヨル》はあの子を選んでいます。」


長男の声が、いつになく固い。


「Elliottが望むと望まざるとに関わりなく、《ヨル》の流れはあいつに向かっています。」


次男が後の言葉を継いだ。


「……そのようだな。」


諦めたように、王弟は眉を寄せた。


おそらく、名乗りを上げなかったとしても

結果はこうなっていただろう。


「――だから、面倒なのだ。」


王弟は、頭を悩ませた。


はるか古の時代から、

劍国が繋ぎとめている《ヨル》。


水のように流れるそれは、

すでにElliottに向かっているようだった。


先代の劍国王は、その流れを知っていた。

だからこそ、Elliottを傍に置きたがったのだろう。


「だが、あいつにどう伝える?」


『どなたかおひとり、そちらでお選びください』


劍国からの書簡にはそのようなことが

書き添えてあった。


完全に、家同士の契約だ。


劍国女王は、

こちら側に選択権を与えてくれたのだろうか。


しかし――


「……これでは、Elliottは受け取らないでしょうね。」


書簡を覗き込んだEdricが言う。


王弟は頷いた。


穏やかそうな三男は、消去法では納得しない。


「《ヨル》が選んでいる、は理由にならないだろうな。」


さらに、頑なになるだろう。


『兄上達がいます』


それで、跳ね除けられる。


「Elliottには、劍国に提出する前に確認しなかったのですか?」


Ethanに尋ねられたが、王弟は首を横に振った。


「出来るわけがなかろう。」


三人同時の、王配候補。

しかも、大勢いるうちの一人に入るだけだ。


Elliottの望んでいる条件ではない。


出来得るなら――


宵の国王に角が立つEdricでもなく、

軍部に穴が開くEthanでもなく、

Elliottだけを女王陛下に選んで欲しかった。


「どうしたものか。」


「……うーん。」


Edricは、書簡を見つめたまま考え込む。


やがて、何かを思いついたように顔を上げた。


「――とりあえず。」


「まずはElliottを劍国に送ってしまいましょう。政務協力で入っている叔父の所が、人手不足だそうです。」


王弟は腕を組む。


「なるほど。」


しかしだ。


「そのあとはどうする。」


「あとは……。」


長男は穏やかに笑った。


「まあ。僕たちが、なんとかします。」


「……たち?」


今まで黙って聞いていた次男が、兄を見る。


「《ヨル》の作る流れの中で、どう泳ぐかは僕たち次第だろう?」


長男は、いつものように微笑んでいた。


「だったら、落ち着くべきところへ落ち着かせればいい。」


……もっともではある。


「だから、君も考えてね?」


兄に言われたEthanは、

とても複雑そうな顔をしていた。

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