2-13話 視線
「――皆さんが無事に学業を終えられるよう、
支えるのが私達の役目です」
落ち着いた声が講義室に響く。
集められた留学生達は、
静かに前方へ視線を向けていた。
説明をしているのは、
神殿連絡局の女性神官だった。
「滞在中、
何かございましたら神殿連絡局までお知らせください。」
「手続きや相談、
緊急時の対応は私達が担当します。」
男性神官が言葉を継ぎ、
女性は手元の名簿へ目を落とした。
名前。
出身地。
所属。
一人ずつ確認していく。
その途中。
ほんの一瞬だけ、女性の視線が止まった。
窓際の席に座る黒髪の青年。
神学生だ。
他の留学生達と同じように、
静かに説明を聞いている。
数秒、見つめ――
女性は何事もなかったように視線を戻した。
「――以上です。」
名簿が閉じられる。
講義室の空気が少し緩んだ。
留学生達も小さく身体を動かし始める。
女性は最後に一度、
集まった顔ぶれを見渡した。
そして……再び、視線が止まる。
黒髪の青年。
彼は、ただ静かに前方を見ている。
「……。」
再び。
女性は何事もなかったように視線を外した。
「……。」
黒髪の青年の、視線が動く。
女性神官の方へ。
わずかに口角を上げ、
そして緩やかに視線を逸らした。
開け放たれた講義室の窓。
吹き込んだ風に、白いカーテンが揺れていた。




