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澱界宮の探索者  作者: 赤上紫下
第 07 章

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15:また一日が過ぎて――

 移住予定地、迷宮都市側からすれば受け入れ予定地であるマンションの内見動画は編集を終えて昨晩のうちに配信されており、朝から早速……まぁ、何百人規模ではあったけど、転移門(ゲート)を設置した警察署に来ていた。

 燃料不足で車がほとんど走れないし公共交通機関もほぼ麻痺しているなんて状況だから、そう考えると多い方なのかな?

 そのうちの半分くらいはもともと動画配信を職業にしていたフットワーク軽めの人達だったり、一年以上関東から外に出なかった結果無事だった腰が重めのマスコミ関係者だったりで配信の許可を求め、配信に関する諸注意――向こうと電波や物理回線を介した通信は行えないっていう話から、撮影のためだからと言って迷惑行為などはしないとか、切り貼りなどによる捏造をしないみたいな一般常識的な話をされていた。

 残りは配信を目的としていない、どこかの会社や集団に情報を持ち帰ろうとしてそうな人、家族のための下見らしい人、明らかに身体的障害を抱えてる人、ホームレスっぽい人とか色々。

 ただ、不思議と、大人しい雰囲気の人が多いというか、イチャモンをつけたり暴力を振るいそうな感じの(やから)は少なかったと思う。……対策本部は武力を行使したこともあるらしいから、そう不思議でもないか。

 で、そんな人たちの転移に合わせて様子を見に行ってみたら、一〇棟で一旦建設がストップしていたマンションの部屋がそれぞれ割り当てられ、入居者全員にデイリーログインボーナス(ログボ)のような感覚で配られたクレジットでそれぞれ好きなものを味わっていたりした。

 アレルギーも免疫系から治療されていると知って、あるいは糖尿病が治ったと聞いて、食べられなかったものを恐る恐る食べてみている人なんかも居たけど、ジュースやスナック菓子の類を泣きながら食べてる人なんかも居てびっくりした。

 そして、嗜好品を買うクレジットのために仕事を求める人も居たけど、そういう人たちについてはとにかくまずはこの環境に慣れ、それについては常識を学んでからということで却下されていた。それにまぁ、やる気があっても仕事がね。

 基本ツリーのアビリティもまだ得てないからリモコンなしには端末の操作ができず、身体能力は並で、技術水準も相当に違う。仕事のノウハウも日本はともかく迷宮都市があるこちらの国の法には露骨に触れるものだったりとか。

 具体例としては、人からの搾取がNGだから、親が必ず儲かるタイプのギャンブルはない、つまり外国為替取引(FX)なんかも当然ない。そもそも世界規模でクレジットを基準にした価格がベースになってるからクレジット以外の通貨が皆無だし、金銀等の貴金属類も価格は完全固定。株も言ってしまえば投資家が企業に借金を負わせて利子を払わせるシステムだから無し。起業のためなどの理由でまとまった資金が欲しいなら国に無利子で借りることができるし、逆に借りられない場合というのは消費者金融も含めて用途が国の法に触れるものだったりするわけで。

 改めて考えてみると、世の中の物資が複製可能で外国為替も考える必要がなく、流通に影響があるような買占めは法に触れるとかで、ゲーム内通貨のようにバンバン発行されまくっていても価値が一定で、所得税等の納税も求められないクレジットのチートっぷりは中々に酷いなとは思う。

 ともかく、俺が思っていたより、迷宮都市で仕事にならない現代日本の仕事は多い模様。生活の保障はしっかりしてるから、無職だからといって死ぬわけじゃないけど、暇に耐えきれない人が結構出そうな気もするかな。


 そんなこんなで質問や回答を聞いていると勉強にはなったけど、それ以外は特に何もすることもなく、気づけば受け入れ二日目の夕方。二日目は人数が倍くらいになってたけど、それでも特に問題は起こってなかったと思う。

 一応、暇してる間にモンスターが暴れたりしていないことをこっそり確認してみたり、もう少し分類できるように魔力の解析を進めてもいたし、ランス博士(エマ)達が居ないところで何か聞かれたらどう答えるか、みたいな想定もいくらかやってみてはいる。

 まぁ、ほとんど休んでるようなものだけど、何かが起こった時に動けないのはよくない、だからといって何かが起こることを期待するのもよくないという、なんとも悩ましいところ。

 マンションで両親と一日過ごした織宮さんもこちら側に来ていて、今は俺と同様に手持無沙汰な様子で隅にちょこんと座っている。


「――!」

「……うん?」


 何かがあったようで、少しだけ慌ただしい雰囲気が漂い始めた。

 聞き耳を立てれば聞けるとはいえ、一応盗み聞きはしないように配慮して内容までは聞いてない、ので、対策本部の人が話をしようとしているランス博士(エマ)の方を見る。


「何かあったようだね?」

「はい。正直、今でも信じがたいものではあるのですが、確かにゴブリンと思われる個体群と遭遇し、問答無用で襲い掛かってきたため反撃。完全に仕留めたとの報告が上がってきています。ただ、あなた方から提供されていた死体とは違い、みるみるとチリのように崩壊していく様子も動画で捉えられていましたが、何かご存じでしょうか」

「ふむ? 死後に崩壊する事例は確かにあるが、我々が提供した方の死体が崩壊していないというのはどういう……ああ、なるほど」

「?」


 対策本部の人から話を聞かされている途中で、何故か俺の方を見てランス博士(エマ)が納得したように頷いた。……なにゆえ?


「おそらくだが、この世界に現れているモンスターはもともと、死後に自壊するタイプだったのだろうね。そういったタイプのモンスターでも、特に強い個体は用途のある部位が自然に残ることも多いのだが……こちらには運搬に非常に適した能力があり、崩壊するなどとは知らず、君らに提示する証拠も欲してはいたから、魔力のようなものが気を利かせて自壊を留まったのだろうね」

「そんなことがあるんですか?」

「うむ。とはいえ、崩壊してしまう例も悪い話ばかりではなく、殺した側の武器や肉体が強化されやすい、ということもあるのだったかね」

「い、いやそんなゲームじゃないんですから」

「それこそ、日本でありながら日本風の妖怪だのではなく、ゲームに出てくるようなモンスターが実体を持って現れている時点で今更ではないかね?」

「ごもっとも……?!? ……まさかとは思いますが、レベルアップして魔法やスキルが使えるようになったりなどもあると!?」

「この世界でそれが起こるかは知らないが、魔法少女なんてものも存在しているのだから、可能性はあるだろう。もっとも、そんなことが起こる可能性もあるというだけで、勝てないこともあるだろうし、あちらの世界に住む前に殺さてしまえばコンティニューもなく死ぬだけだから、おすすめはしないがね」

「な、なるほど……」


 まぁ、勝てるとしても、宝珠(オーブ)の力で色々やれるから俺は特に惹かれないかな?

 ゲームみたいな魔法やスキルと言えば何かこう、MPだとかTPだとかを一定量消費して毎回同じように発動できる一つの強力な攻撃、みたいなイメージはあるけど……どの攻撃もただHPを削るだけで、HPが1でも残っていれば万全な状態と同様に動けて、どんな小さなダメージでもHPが0になった瞬間戦闘不能、なんて世界観を強要されそうな怖さもある。他にも、死に際に特定の反撃を行う雑魚モンスターが居たとして、HPが何十倍あっても一撃で倒せるような攻撃でトドメを差しても平然と反撃してきたりとか……流石にそこまでゲームっぽいことにはならない、よね? ならないと思いたい。

 迷宮ではモンスターを倒したらExPと呼ばれるものを獲得できて、集めていけばLvが上がったりはするけど、あれはそう呼ばれているだけだし、モンスターを倒さなくても適当な物を分解すれば存在力(ExP)は得られるし、Lvはあくまでどの程度の強さがあるかの評価値だし、首を落とせばボスでも死ぬし。

 と、織宮さんが映像を見ながら何かに気付いた様子。


「あれ……? すみません、さっきのゴブリンって、どこに現れたんですか?」

「それなら――」


 対策本部の人の話によると、とても記憶に新しい、先日向かったばかりの織宮さんの地元だった。


「そこで、公民館で避難生活を送っている友人が帰ってきていないという旨の通報がありまして、現地で巡回していた隊員が遭遇を」

「え、だ、誰か行方不明になったんですかっ?」

「……こちらの、宙川(そらかわ)煌麗(きらり)さんという方ですが、ご存じでしょうか?」

「えっ?」


 文字もフルネームも覚えはなかったけど、端末に表示されている顔写真に見覚えはあるというか――


「あ、もしかして既に保護されているのでしょうか」

「いや、そういう訳ではないが、一昨日の朝に、アキミチ君が話していた子ではないかね?」

「はい。まぁ、織宮さんとこの宙川さんが同じ学年だったとかの話をちょっと聞いていただけですが」

「そうですか……そうですね。一昨日の夜、公民館に居たところは確認しているそうなので、同日の夕方からこちらに居たあなた方とは無関係ですか」

「……」


 失踪と直接関係はしてないけど、心当たりが無いかと言われるとちょっと困る。織宮さんの地元付近で活動している魔法少女だったのは知ってるけど、それを明かすのはちょっとどうかと思う、けど、失踪と物凄く関係してそうな気がする。

 具体的には、一昨昨日の深夜、日付的には一昨日の早朝あたりにピンチになってたっぽいし、一昨日の深夜も魔法少女として活動していて敗北したとか?

 マンションの内見に付き合ったりで転移したから、地図上での追跡は途切れてるんだよな……個人の特定はまだできてないし。大体の場所はわかってるから体格とか他の情報をよく見れば判断できそうだけど、確実じゃない。


「んんん……何ができるとは言えませんが、多少とはいえ縁がないわけでもない相手なので、とりあえず現地に行くだけ行ってみたいところですね」

「ふむ。私も同行した方が良いかね?」

「そうしていただけるとありがたいです。そういえば、この間のオークの時のようにどこか別の世界に連れ去られていた場合って、追いかけることはできますか?」

「うむ、痕跡があれば可能なのだよ。イノリ君はどうするかね?」

「わ、私も行きますっ」


 無事でいてほしいもんだね。

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