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澱界宮の探索者  作者: 赤上紫下
第 07 章

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14:暇が暇じゃなくなってきた

 さて、現状ひたすら暇なわけだけど、悲しいかな俺が今やるべきことってのは本当に何もないんだよねぇ。

 一応、モンスターが現れないかのチェックぐらいはしてるけど……っとそうだそうだ。一応確認はしておいたほうがいいよね、ということで対策本部の人達の中でも暇をしてそうな人……居た居た。


「すみません、ちょっとこう、法律に関して確認したいことがあるんですが」

「はい、何でしょうか?」

「ありがとうございます。ええと、空って飛んでもいいものなんですかね?」

「……空?」

「はい」

「……上空でしょうか?」

「定義はわかりませんが、せいぜいビルの少し上ぐらいまでですね」

「えー……そういえば魔法少女がどうとか仰っていましたが、もしかして、皆さん生身で飛べるんですか? ジャンプでビルを飛び移るとかでなく」

「いえ、比較的珍しい方ではあると思いますよ」

「そうなんですか……私も飛べるようになれますかね?」

「努力と環境次第かと。あちらでは仕事によって触れられる力にも違いがあるようなので私からは何とも言い難いですが、細かいところはあちらの世界出身の方に聞いてもらえればと」

「そうですか……」


 探索者以外が空を飛べるかは知らない、というか探索者以外にどんな仕事があるかをよく知らないな俺。探索者の衣食住に関する仕事があることくらいは知ってるけど、司法はともかく立法は存在してるかすら怪しいところだし……三権のあと一個、行政は多分あるかな?

 住み始めてまだ一か月も経ってないし、積極的に情報を集めていたわけでもないから他の仕事とか全然知らないままなんだよな俺、と、聞きたいことが聞けてないな。


「それで、どうなんでしょうか?」

「ハッ?! そうでした。えー、航空法は航空機の航行の安全と航空機の航行に起因する障害の防止のために定められたもので、『航空機』として規定されているものに関する法律なので……対象となる『航空機』は、飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器、ですね。アニメのように人がそのまま空を飛べる場合は、航行中の航空機に接近しなければ対象外、のはずです」

「あー……そのままではなく、例えば魔女の箒、魔法の絨毯、翼が生えた靴みたいな、ちょっとした道具の力に頼ってる場合はどうでしょう、あとUFOとか」

「そこにUFOが並ぶのは不思議な印象ですが……揚力でも浮力でもなく、プロペラで下に空気を押し付ける反作用でもないなら、良いのではないでしょうか? のぞきや侵入に使われた場合はそちらの法律に触れることになりますが」

「はぁ、なるほどですね。となると、アニメで抵触する有名どころはタ○○プターくらいですか」

「いえ、あれも反重力を利用しているそうなので対象外ですね」

「えっ、アレそういう設定だったんですか? へぇー」


 何というか、意外と抜け道多いな航空法。フィクションでしか登場しないような力がないと抜けられない抜け道ではあるんだけど、実際そういう力で飛べる身としてはね。

 今聞いた定義に従うと、無反動で射出できる水を受け止めて飛ぶ動力器の方でも対象外にはなりそう。UFOはUFOでもUが未確認の『Unidentified』ではなく未定義の『Undefined』の略、みたいな?

 あんまりガチガチに制限してるとこれまで存在した航空機とは全く別の飛び方ができる未知の力が実用化された時に邪魔になるから、それでよかったのかな? 世界がぶっ壊れた後で言うことでもないけど。


「そういえば、市街地でドローンを飛ばしたりするのって、何か法律に抵触しませんでしたっけ?」

「それはその通りなんですが、市街地なら航空法の範囲で、無人航空機の定義も航空機と同様ですから、魔法の力で使い魔を飛ばすようなものなら対象外かと」

「なるほどですね。無事疑問は解消できました。ありがとうございました」

「どういたしまして」


 ともかく、大手を振って、とまではいかずとも飛ぶ権利は――というより飛ぶのを止める法的根拠が特になさそうなのは一安心。ゴーレムを『念動』や『飛翔』で飛ばして扱うのも特に問題なさそうだしね。

 ただ、悪用は勿論しないとしても、昼間に市街地を飛び回ると目につくだろうから、それで通報が増えたら無駄に迷惑がかかるか。気を付けよう。


「と、ところで、どの程度飛べるものなんですか?」

「……習熟速度とかに個人差はかなり大きく出ると思いますが、今のところ、こちらのドローンを超える自由度と超音速飛行は実現できてますね。あと、ドローンや航空機と比べるとかなり静かですよ。プロペラやエンジンが無いので当然の話ですが」


 と言いつつ、その場で浮いて胡坐をかいてみたり、コップ一杯分程度の水を浮かせたまま一部を切り分けて口に運んでみたり。


「おぉ……!」

「……ぶっちゃけ、無料で転移できる装置がそこら中にあるので、飛ぶ必要性は薄いんですけどね」


 俺は向こうでランス博士(エマ)に拾われて、初日のうちに探索者になって空も飛べるようにはなったけど、普通の探索者はまず下級ロビーでジャンプ力その他を鍛えて、中級ロビーに上がってからはまず水面を走れるように……って、これは必須ってわけでもないか。流れの早い海峡を渡るだけだから凍らせるだけでも別にいいし、一つ飛ばして次の迷宮のボスを倒して『飛翔』の宝珠(オーブ)を入手――なんてことができるなら身体能力は十分あるだろうから、例外は下級ロビーで地道に稼いで『飛翔』の宝珠(オーブ)を買うパターンぐらい? だとしても身体能力は十分上がってそう。

 中級ロビーに居る間に必要になりそうかというと微妙な感じで、今後必要になるとしてもここまで精密に飛べる必要があるかはわからない。


「そこはほら、ロマンですよロマン」

「まぁ、そうですね」


 必要かは別として俺も楽しんで色々作ったり練習をしてた方だけど、人に勧められるかというと……飛ぶどころか軽くジャンプしただけでモンスターに見つかることもあるから――


「……ええと、あまりネタバレはしたくないんですが、あちらのモンスターって人間を視認した時点で追いかけることしか考えなくなるような性質があるので、トレインやMPK……大量に引き連れて一か所に集めてしまったり、そのまま対処できずに他の人になすりつけてしまうようなことがないように注意ですね」

「……? ゲームのお話でしょうか?」

「いえ、探索者っていう、実際にモンスターが居る迷宮を探索する仕事があるんですよ。死んでも生き返ったりちょっと念じればロビーに戻ったりできるので一昔前に漫画やアニメで流行ったVRMMOみたいなものですが、自分で考えるのは重要なことだと思うので」

「いや、命がかかってるならそんなこと……って、かかってないんですか?」

「デスペナみたいな感じでちょっと弱体化はするそうですが、街で暮らしているだけでもある程度まで強化されるそうですし、逃げる分にはタダなので実質かかってないようなものですね。詳しくはあちらで仕事に就く際に説明を受けると思うのでそちらで、でしょうか」


 ともかく、死んでも人格が失われることはそうそうないゲームみたいな仕事ではある。いくらゲームっぽいとはいえ、スキル名を叫んだら勝手に体が動いて攻撃してくれたりするわけじゃないけど。……どこかのアビリティにそういうものがありそうな気がしないこともないけど、少なくとも初心者は自分の体を自分で動かすだけのはず。


 話して問題なさそうな範囲で話しているうちに、何かの用があったらしく話していた人達がどこかに行って、ふと外を見てみるといつの間にやら夕暮れ時。

 ランス博士(エマ)達はお偉いさん達とまだ話していて、意外と、なんというか時間がかかるもんだなぁ、なんて思いながらのんびりたら対策本部の人が階下から俺の方に、私服の男性を連れて歩いてきた。男性の髪は艶のない金髪で、根元付近が何センチか黒い。


「只野さん、貴方のお知り合いだというこちらの方が来ていたのですが」

「あ、はい、えー…………ちょっと名前は思い出せませんが、顔は確かに見覚えがあるような……?」


 一緒に来ていた誰かの顔に見覚えは確かにあるけど、いつの知り合いだったと断言できるほどはっきり思い出せるほどでもない。友人……ってほどの仲だった相手でもない気がする。


「え、ちょっ、マジで言ってんの?」

「人の顔を覚えるのは昔から苦手で、どうにも……大学の同期ですかね?」

「いやいや、そりゃないだろ只野。俺だよ俺、赤木」

「赤木……? ちょっと記憶に引っかかってるような……でもほら、そっちも苗字はともかく名前は思い出せないくらいでしょ?」

「ぐっ、いや、そこまでは仕方ねえだろ?」

「まぁ、そうなのかな? うん、確かに居た気はするけど……何度か飲み会に参加したぐらいで一緒に遊んだこともないような、何というか、よく覚えてたね?」


 同窓会もスルーしてたからマジでそのぐらいの関係しかない相手なんだけど、この知り合いを俺にどうしろって?


「おう。そんで用なんだが、只野がここに居るってことは、福岡と連絡がついたのか?」

「あーいや、俺が就職してたのは愛知で、巻き込まれたのもそっちに居る時だったから、何人ぐらい生き残ってるかは知らないし、連絡も取れないよ」

「生き残って……って、は? ネットが遮断されただけじゃなかとか、つまらん冗談ば言っとらんと、本当ん事ば……?」

「それがマジな話で、宇宙船地球号が突然終わって、日本付近だと漂流船関東号だけになったようなもんだから……俺から言えるのは生き残ってたら良いねって事ぐらいなんよ」

「い、いやいや、そげん大災害が起こっとったら通信が繋がらんでちゃ何か見えろうもんやろ?」

「そうなんだけど、まぁ、この辺の太陽も空気も水も元と同じ状態が維持されとったとが逆に運が良かったってだけやけんねぇ……」


 事実は事実なわけで、なんか方言ぼろぼろ出て俺もちょっとつられてるけど、それを気にしてられないくらい話しづらい話題だな全く。

 これでも生存者数は史上最多規模らしいから本当に幸運なんだけどね。



 ………………

 …………

 ……



 太陽光や空気や水が今まで通りにあるのは、なんでも物理的に『何もない空間がある』のではなく『空間そのものが無い』からこそ、これまで通りに光を届ける太陽や、大気圧を維持しつつ空気を流す概念的なものが存在する余裕があるとかなんとか、だったかな? 上手い具合にバランスが取れている理由は、この世界に満ちている魔力が働いた結果だと思う。

 この世界が壊れた原因の一部である可能性もなくはないけどそれはそれとして。

 俺から聞いた話のせい……俺の話し方も悪かったかもしれないけど、それで精神的に不安定な感じになった赤木なにがしのフォローをしているうちに夜になり――その友人らも一緒に来ていたようで、迷宮都市への移住の話を出してそれぞれ1DKに突っ込んだり、織宮さんの両親らが軽く生活してみた中で聞かれた点が想定される質問と回答としてまとめられたり、そんなことをしているうちに気付けばまた朝日が昇っていた。

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