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澱界宮の探索者  作者: 赤上紫下
第 07 章

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12:迷宮都市へ……と向かう途中

「……君は……その、ストーカーだったりするのかな?」

「ハァ? 何でそんな話に……あー……」


 織宮父と軽く言葉を交わしてみた結果、ウィッシュには思っていたほど激しい反応はなかったみたいだな、とちょっと安心してたらストーカーに疑われてびっくりしたけど、まぁ……ウィッシュの大半がそうだったように織宮さんも自分の力を親にも隠してたのなら、俺が織宮さんそっくりな相手を多数集めていた事実だけが残るわけで、そう考えると納得の解釈ではある。

 実態としては織宮さんにはすごい力があって、その影響で俺の所に並行世界のよく似た子が沢山集まってきたってだけの話だけど、織宮さんはどうやら親にそういうことを――具体的には魔法少女であることを隠しているみたいだから、それを俺が勝手に明かすのも悩ましいところ。

 俺の心情としては、織宮父にどう思われようが割とどうでもいいし、その解消のために織宮さんが嫌がるような真似をするのは避けたいと思う。ちょっと言い回しを考えるか。


「とりあえず、付きまとったり追いかけたりはしてません。俺がたまたま個人で京都に旅行に行ったらお宅の娘さんも修学旅行で同じ所に来ていた、というのが初対面……いや、実際には一方的に見た程度で、どこの学校の生徒かなんて調べもしませんでしたし、名前を知ったのも話したのも向こうの世界に漂着した後が初めてですね」

「……では、並行世界のうちの子、多数と話せるというのは?」

「それなら、向こうの世界ではこっちの世界の電気と同じぐらいの感覚で当たり前に認識されて利用されている、漫画や小説なら魔力と表現されそうな力があるんですが、娘さんはこちらの世界に居るうちからその力を結構宿していたようで、京都でニアミスした際にまき散らされていたその力が俺にも多少染みついていて、その縁で引き寄せていた、んだと思いますよ」


 少なくとも、最初の一人はそうだったはず。後はまぁ、いもづる式ってわけでもないけど、ウィッシュ由来の力の比率が高まって、何人目かの時点で既に比率も逆転してたと思うけどね。


「…………つまるところ、故意ではないにせよ誘拐犯ではあると?」

「んえ? あー……引き寄せてたんなら他の子と同じように頭の中でだけ話せるような状態になってそうな気もしますが、どうなんでしょう?」

「え、えっとえっと、お父さんにはさっきも言いましたけど、行方不明になった人のニュースが沢山流れてた頃に、何か違和感があった所を見に行って気づいたら、ってことだったんだから、只野さんは関係ないはずですよっ。今も特に引き寄せられるような感じもないですし」

「む……それは、そうですか…………」


 ああ、そういえば織宮さんが一年前のこの世界に居た最後の瞬間がどうだったかは聞いてなかったっけ?

 まぁ、よく考えてみれば、ある程度世界から離れた所に居たであろう俺より、新鮮な――と表現するのも変な感じだけど、織宮さんの魔力を浴びてからそれほど間もない人間の方が……それも世界から放り出された直後となれば、織宮さんを世界から引きはがすように働く力は強くなりそうだし、数も多かったはずだから道理かな。



 バスでの移動を終えてからは、対策本部の人たちにゴブリンやオークの死体を証拠として提供した。


「これは……まさに想像通りのゴブリンやオークとしか表現できない存在ですね。そのまますぎるようにも感じますが」

「うむ。その点についてなのだが、こういったモンスターは人々が想像する姿をそのまま模すことが多いようで、文化が違えば茶色やピンク色のオークが発生することもあるし、稀ではあるが友好的な会話が可能な場合もある。この世界のオークは会話が可能な個体も確認はしてはいるとはいえ、人類に対する殺戮や強姦を是としているどころか実行までしているから、対話はお勧めしないがね」

「なるほど……では、カメラで捉えられていないのはどういうことでしょうか」

「それなのだが、魔法少女と呼ばれる存在も確認している」

「は、はぁ? それは、その、アニメのような?」

「うむ。もう少し古い時代の世界であれば呪術や魔術を行使できるようになった人類が現れていることも少なくはなかったし、伝承通り鏡に姿が映らない吸血鬼なども確認している。そして魔法少女といえば、記憶の操作や証拠の隠滅を得意とする話も多いのではないかね?」

「じ、自分はそこまで詳しいわけではありませんが、必ずしもそれらを得意としている話ばかりではなかったと思います。どちらが多いかはわかりません」

「ならば、そういったものが得意ではない魔法少女も居るのかもしれないね。しかし、我々は事実としてそういった技に長けた魔法少女を確認しているのだよ。なぜ我々の記憶が残っているのかといえば、おそらくだが、存在強度が高かったからだろうね」

「実際に身体能力や肉体の強度が、物理的に説明がつきそうにないほど高いことは存じていますが……」

「いやいや、安定した世界では一という定数のように確認できないだけで、存在強度もまた物理の一部ではあるのだよ。熊を収納していた技術も、異世界に転移する技術もね」

「……ハァ、頭が痛いです」


 ランス博士(エマ)の説明に対策本部の人達が頭を抱えている。

 心情的に信じたくはなさそうだけど、俺達が物理的に馬鹿強い事実は知ってるから信じざるをえない、って感じかな?

 そうこうしているうちに、警察署内の一室に、カラオケルームか何かぐらいの大きさの転移装置が設置され、転送できる状態に。


「……一応、改めて聞かせていただきたいのですが、転移とはどのようなものなのでしょうか」

「うむ? 質問が漠然としているように思うが……一から説明するのは流石に時間がかかりすぎるので簡単に言えば、一瞬で同じ世界の別の場所でも違う世界にでも移動できる、物流を支える技術の結晶だね。何か気になる点でもあるのかね?」

「まぁ、その、私達の体がどうなるのかと……」

「どうって、この世界にもエレベーターぐらいあるだろう? その移動ベクトルがこの三次元空間上ではなく別の三次元ベクトル上というだけで、慣性制御もしっかりしているから、そのまま向こうに移動するだけなのだよ」

「は、はぁ……ああ、その、一瞬でというと、光速を超えるのであれば量子テレポーテーションなどの技術が必要になるのではないかと」

「うむぅ? 量子……ああ、精密な3Dスキャナーと3Dプリンターで情報だけ送ってあちらに新たな体を作る、などという方式を想定しているのかね? この転移装置はそのような野蛮なものではないから安心したまえ。この三次元空間上から出ることなく移動するのであれば光速に引っかかるが、異次元空間を通る以上そのような制限とは無縁だからね」

「や、野蛮……まぁ、その、それなら、安心なのですかね」

「うむ」


 まぁ、SFでたまによく聞く量子テレポーテーション技術だかを使った転移って、よく考えなくても野蛮というかホラーだよねぇ。

 原子レベルで体の構造正確に読み取って、転移先で再構築する……って装置は要するに、転移元となる装置が3Dスキャナーだけではなく原子レベルで完全に分解してしまう処刑装置も兼ねてないと、転移するたびに同一人物が増えていくことになる。そういう要素を題材にしたホラー小説やホラーゲームもあった気がする。

 その点、迷宮都市で使われている転移門(ゲート)などの転移装置は、転送するたび一人が処刑されて同じ記憶を持つ大人の体の〇歳児が作られているわけではなく、なんかこう、異次元空間上を漂流していた経験があるからか、自分の体がそのまま別の場所に移動しているような実感はある。

 そんな直感的なもののは別として現実的に考えてみても、Lv八〇ぐらいあるランス博士(エマ)の体をわざわざ分解して材料その他をその場に完全に放置して転送先で再構築なんて、どれだけ存在力(ExP)が必要になることか。

 そういうことを、ランス博士(エマ)達の話に聞き耳を立てて少し怖がっていた様子の織宮さん達にも俺から説明して安心させておいた。

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