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澱界宮の探索者  作者: 赤上紫下
第 07 章

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132/141

11:居心地が悪い

すみませんちょっと短いです

 電動じゃないキックボードで公民館に来た魔力持ちの女の人は、最近この辺りで何かなかったかを探していたようで……俺は今日ここを訪ねただけの客だからととりあえず受付に聞くよう勧めて、その後戻ってきたところで俺達を見られたりはしたものの、探していた何かではなかったのか特に何もせず去っていった。

 それからは、多少は移動速度を考えて小走りをしつつ校区――もとい学区内の別の避難所になっている公民館に向かったり、織宮さんの母校らしい中学に魔法少女三人組の反応があったのをスルーしたりしているうちに織宮さんの両親とも連絡がついて、警察署の方に向かうことに。

 場所が警察署になった理由は、何かをして捕まっていたとかではなく、捜索願、正式には行方不明者届の取り下げ手続きの都合。なんでも、捜索願の取り下げは基本的に届け出を出した本人が行うものなんだとか。自分の捜索願を受理されたくない場合は事前に本人が不受理届とかいうのを届け出ておく必要がある、とかいう話も聞いたりしたけど、活用する機会は多分ない。迷宮都市とは無関係なのもそうだけど、日本国内で普通に暮らせててもなかったんじゃないかなぁ、と。

 まぁ、そんなこんなで移動してたわけだけど……着いちゃったなぁ。


「き、緊張しますね」

「あー…………まぁ、その、こっちの人達から見て織宮さんが行方不明になってたのは不可抗力だったわけだし、もともとの関係が悪かったわけでもないなら大丈夫でしょ」

「そう、ですか?」

「……多分」


 そもそも別の世界に居たわけだから帰還の手段も限られてるし、状況を考えればほぼ最速。しかも時間の流れる速さも違って、主観で二週間外に居て帰ってきたら一年経ってたなんて状況だから、織宮さんの責任を問うのは無茶というもの。

 その辺りについてランス博士(エマ)が説明……しただけだと信じてもらえないかもしれないけど、織宮さんを拾ったイデア博士が居れば説得力もありそうだし。何にせよ、会わない方が良かった、なんて事態にはそうそうならないと思う。……ないはず。ないよね?


「じゃ、俺はここらで待ってるから、後は頑張って」

「えっ? た、只野さんは来ないんですか?」

「うん。単純にこう、織宮さんが同級生と会ってた時より居心地悪そうってのもあるけど、ウィッシュの感情とかどうなるかわからないからねぇ」


 ウィッシュが織宮さんによく似ているとはいっても、名前や経験が織宮さんに似た存在ばかりというわけではない。性格はある程度近しい子が多いとはいえ、経験によって性格や嗜好の変化ぐらいは普通に起こる。

 俺だって、例えばフルーツは好きな部類だけど毎日毎日同じものをデザートとして出されていれば普通に飽きるし、逆にブラックコーヒーには慣れたりとか。

 ……俺のエピソードは思いつくものを並べてみても中々にショボいけど、ウィッシュの方は何倍も深刻な積み重ねのある子が、無数とまでは言わずとも何人も居るし、その上で両親との再会は全員が絶望的。なんたって全員出身はこの世界ではないし、別の世界が接近しているなんて情報もないからね。

 仮にそういう世界が接近していたとしても、その世界の出身者と考えられるのはウィッシュの中の極一部だけで、残りは全員外れることになるし、迷宮都市に流れ着く世界、澱界は平均して半年に一つ程度。そもそも流れ着く時点でその世界が崩壊してしまっているのは確実だし、更に言ってしまえば世界が崩壊しているかどうか以前に死に別れている例だってある。

 まぁ、なんやかんや諦めがついてる子は多いけどね。それでもこう、実際に目にしてしまった時に落ち着いていられるとは限らないわけだから、俺が同席しても穏便に済まない可能性がほぼ確実に増すだけ。織宮さんの両親がちょっとよろしくないタイプなら一石を投じるのもやぶさかではないけど、まともな親なら俺が居ても邪魔なだけだろうという話。


「ふむ、そういうことなら、私もアキミチ君と待つとするかね」

「ランス博士もですか?」

「うむ。普段なら外見で侮られても構わないが、穏便に話を進めたい場で私の容姿は邪魔になるだろうからね」

「あー……そうかもしれませんね。まぁ、そういうわけだから」

「うー……ちょっと心細いですけど、そうですね」


 自分の親と会おうって時に心細いというのはどうかと思わないでもないけど、織宮さん側の体感はともかくこっちの世界では一年行方不明になってた後だから仕方ないのかな。



 ………………

 …………

 ……



 そんなわけで、俺とランス博士と護衛役の探索者一人を合わせた三人は椅子があった一階の受付付近で暇をつぶし、一時間ほど経ったところで、織宮さん達五人以外にもぞろぞろと階段を下りてきた。階段なのは電力の温存なんかを理由にエレベーターの電源を落としてあるからだと思うけど、人数が多いのは何だろな?


「移住するか否かはともかく、あちらの世界を実際に見せておくのも必要なことだと思っての。数十人程度なら受け入れられる態勢も整っておるようだし、丁度話を通しやすそうだったから誘ってみたという訳よ」

「なるほど。撮影機材もあるようだが、ここに居る人員だけで良いのかね?」

「いや、ここに居る全員ではないし、対策本部にはここに居ない希望者も居るようなので、渋谷に移動して転移門(ゲート)を仮設する形になるかの。ああ、移動は車を出してくれるそうだ」

「ふむ、了解したのだよ」


 なるほど。

 まぁ、本当に公平にって考えるのなら全体からランダムに選ぶような形がベストなのかもしれないけど、そうなると第一陣が何日後になるかもわからないし、イデア博士が言ったように近くの人から選ぶのは合理的か。

 そして、織宮さんのすぐ近くに居る、ちょっと真面目そうな場に出るためにしっかり着込んだりおしゃれをしているように見える二人が織宮さんの両親か。話が変にこじれたりはしていないようで一安心、かな。


(……ウィッシュは大丈夫?)

(一応……今のところは大丈夫ですが、念のため、あまり話は聞かないようにしておきます)

(そっか)


 こっちも暴走はなさそうで一安心。



 昨日に続いて、普通に暮らしていたら乗る機会なんてなかったと思う警察のEVマイクロバスに乗ることになったわけだけど、そうして東京都心にある方の警察署へ移動している途中――


「失礼、少し良いですか?」

「あー、はい、少しでいいなら」


 織宮父に話しかけられた。


「む、何か問題でもありましたか?」

「まぁ、ありますね。織宮さん……ええと、娘さんから聞いてませんか?」

「世話になった人で、迷惑はかけないようにとは言われていますが、具体的には聞いていませんね」

「あー……まぁ、説明は難しいですよね。とりあえず簡単に説明しておくと……並行世界とかパラレルワールドって言葉の意味はわかりますか?」

「意味としてはそれとなく」

「ここと物理的には、いや、三次元的には連続していない異なる世界が実在するという話も聞いてます?」

「そこに向かう人を集めるために移動しているそうですね」

「はい。それで、俺の事なんですが、ざっくり言えば娘さんとよく似た並行世界の子達、それも一人二人じゃない多数に命を救われてまして、現在でもその子達と頭の中で話せるような状態なんですよ」

「は、はぁ、なるほど?」

「そんなわけで、自分の親が居ない子達がたくさん居て、話してるとどうなるかわからなくて怖いので……ご遠慮いただければと」

「…………」


 ううむ、説明が難しいな。

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