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鈴村くんは間違えない  作者: シア
第4章 『気持ち』を大事に

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第52話 悩みは人それぞれ

「お、来た来た。久しぶりだね、鈴村すずむらくん」


「…………少し遅れてきたのは謝るけど、なんで俺を呼んだんだよ、遠坂とおさか君」


 綾瀬凛あやせりんへのクリスマスプレゼント、及び誕生日プレゼントを選んでいた日の翌日。


 鈴村徹すずむらとおるは、青海おうみ学園高等部生徒会会計、遠坂湊とおさかみなとにその日の朝に突然呼ばれ、二日連続でミドリモールに足を踏み入れていた。


 遠坂は集合時間から五分遅れで到着した鈴村を発見し、大きく手を振りながら言う。


「いやぁ、急に呼び出して悪いね。ちょっと買い物に付き合ってほしくて」


「買い物……? そんなの一人でやればいいだろ……。俺にも予定があるんだよ……」


 鈴村はすごく嫌そうな顔をして遠坂に言った。


「君を呼んだのは他でもないんだ。知ってるだろ? 俺と柳副会長のこと」


「……ああ、修学旅行でたまたま桜庭さくらば生徒会長と咲良さくらに会って、そこで聞いたよ」


「やっぱり鈴村くんに情報が行くのも時間の問題だったかー。…………ん? 修学旅行? 桜庭会長から聞いた? 鈴村くん、一年生だよね?」


「え? うん、そうだけど」


「何がどうしてそうなった?」


 遠坂は、なぜ鈴村が緑ヶ丘学園高等部二年の修学旅行に同行していたのか理解ができず、目が点になっていた。


 鈴村は順を追って説明する。


「もうこの話何回してるかわからないけど……。俺、来年度の生徒会長に推薦されたんだ」


「せ、生徒会長!? すごいなそれ! おめでとう!」


「あ、ありがとう」


 遠坂はオーバーリアクションにも見えるほどの大きな拍手を鈴村に向けてした。


 鈴村はその行動に少し引きながらも話を続ける。


「俺は生徒会長としての仕事を学ぶために、うちの生徒会長の仕事の一環でもある修学旅行の引率を任されたんだよ。それで、二日目に偶然桜庭生徒会長たちと会って、そこで聞いたんだ」


「……あー、そっか。あの『親睦会』の延長線で桜庭会長たち、京都旅行したって言ってたな。なるほど、そこで聞いたんだね」


 遠坂はミドリモールの吹き抜けを歩きながら言う。


 鈴村は歩き出した遠坂の隣を歩き、改めて遠坂に問う。


「それで、なんで俺が呼ばれたんだ? しかも当日のこんな朝早くに……」


 鈴村は少し疲れた顔をしていた。


「ごめんごめん、予定でもあった?」


「いや、今日は疲れてたから一日家で休んでようと思ってたけど……。特に予定はなかったよ」


「貴重な時間を奪っちゃってごめんよ。さっきも言ったけど、ちょっと買い物に付き合ってほしいんだ」


 鈴村は遠坂とやなぎの関係を知っている。


 そして時期はクリスマス前。


 鈴村は遠坂のことを察して言った。


「……もしかして、柳副会長へのクリスマスプレゼントを選ぶのを手伝ってほしい、ってこと?」


「正解! よくわかったな」


 鈴村は「そこまで話してわからないほうがすごいだろ……」と呟きながら遠坂から視線を逸らした。


(久しぶりに一日ゆっくりできる日だったのに……)


 鈴村はそんなことを考えていた。


 鈴村は少し嫌そうな顔をしながら、遠坂に問いかける。


「何か買うものは決まってるのか?」


「それが決まってたら鈴村くんのことは呼んでないよ……。君からの意見がほしいんだ」


「俺の意見……?」


 鈴村は首をかしげて遠坂に聞き返した。


「鈴村くんは綾瀬さんや琴原さん、いろんな女子からモテモテだ。そんな中から、君は綾瀬さんを選んだ。その度胸がすごいと思って、俺もぜひ君のその『度胸』を学びたいと思ったんだよ」


「そんな『度胸』なんて大それたこと言わなくても……。その人のことが本気で好きなら誰だってその人のことを第一に考えるでしょ……」


「…………そっか、鈴村くんは恋愛経験が多いほうじゃないんだね」


「……喧嘩売ってんの?」


 鈴村は遠坂に対し怒りを覚えた。


 遠坂は慌ててそれを撤回しようとする。


「あ、ごめん。嫌味で言ったわけじゃないんだ。これも色々と訳があってさ……」


「訳?」


「俺、昔から女子に告白されることはしょっちゅうあったんだよ」


「ほう、それは随分羨ましいことで」


 鈴村は少し興味の無さそうな顔をして返した。


「俺もそれは嬉しかったからOKしてたんだ。……でも、その関係も一カ月以上継続したことはないんだ」


「…………どういうこと?」


「俺が告白されて付き合うことになっても、俺が告白して付き合うことになっても、必ず一か月後には別れてたんだ」


「……遠坂君が浮気したから?」


ひどい言われようだな」


 遠坂は真顔で鈴村にツッコミを入れた。


「別れるときは決まって向こうから『別れよう』って言われるんだ。俺からそう伝えたことは一度もない」


「……なるほど」


「だから、そういう『軽い気持ちの恋愛』しかしたことがないから、『本物の恋愛』が何なのかわからないんだよ。鈴村くんは経験が少ないながらも『本物の恋愛』を理解してそうだし、参考にさせてほしかったんだ」


「なんかいちいちしゃくさわる言い方に腹が立つけど、遠坂君が俺を呼んだ理由は理解したよ」


 そう言いながらも、鈴村の拳はプルプルと震えていた。


 遠坂は天井を見上げながら言う。


「……柳副会長は言ってくれたんだよ。俺のことを『本気で好きになれてよかった』って……。今まで付き合ってきた女子の中で、そんな風に言ってくれたのは初めてだったんだ」


「……それって……」


 遠坂は鈴村の言葉に軽く頷く。


「柳副会長は『本物の恋愛』が何かを俺に教えてくれたんだ。柳副会長のあの気持ちは本物なんだってわかったんだよ」


「……でもそれなら、なんでそのうえでわざわざ俺に『度胸』を学ぶって話になるんだ?」


 鈴村は遠坂に問う。


「そういう風に言ってくれたのが初めてだったからだよ。俺は『本物の恋愛』を知らない。どうすれば関係が崩れることなく続くのか、どうすれば相手を、柳副会長を心の底から幸せにしてあげられるのかがわからないんだ」


「…………不安なんだね」


「ま、簡単に言えばそういうことだね」


 それは遠坂の本心であった。


 柳は、自分の抱えている問題を真摯になって解決してくれた遠坂の勇姿に痛く感激し、許嫁いいなずけを装っていた遠坂に正式に告白をした。


 結果、遠坂と柳は付き合うことになったが、遠坂は今までに経験してきた恋愛と全てを比較してしまい、柳のその気持ちに応えられる自信がなかった。


 いずれまたすぐに別れるのだろう、という考えが、遠坂の頭に常にあった。


 鈴村は少し暗い顔をする遠坂を見て言う。


「……その話は、柳副会長も知ってるの?」


「ああ、言ったよ。そのうえで、俺と柳副会長は付き合うことになった」


「それなら、その心配はする必要ないんじゃない?」


「……なんで?」


 遠坂は少し驚いた顔をした。


 鈴村は遠坂の顔を見て言う。


「だって、そのことを知ったうえで本当に付き合うことになったんでしょ? 人を好きになるってことはすごいことなんだよ。しかも、それを相手に伝えるのは相当の度胸がないとできない」


「まあ、それは鈴村くんが一番わかってると思う」


 遠坂は頷きながら言う。


 鈴村はそのまま続けた。


「遠坂君のその過去を知ったうえで付き合うことを選んだってことは、柳副会長が本気で遠坂君のことを思ってる証拠だよ。そこで遠坂君が不安を抱いて、柳副会長にもそれが伝わるようなことがあったら、それこそ遠坂君が心配している未来が来るんじゃないかな」


「…………そうかな」


「経験の少ない俺でもそれくらいはわかるよ」


「そこは皮肉で言わないんだね」


 遠坂は少し笑顔で言った。


「まあ、確かに鈴村君の言ってることは正しいかもね。柳副会長は確かに、俺のことを本気で好きになってくれた。そうじゃなきゃ、許嫁の話を蹴ってまで俺に告白なんてしてこないからね」


「だろうね。…………え? 許嫁?」


「あ、それも話してないっけ」


 遠坂はやらかした顔をしていた。


「もともと柳副会長と付き合うきっかけになったのは、柳副会長が抱えてた許嫁問題を解決するためだったんだよね」


「……どういうこと?」


「柳副会長は『華道の名家』の長女で、その実家の後を継ぐために許嫁と顔合わせがあったんだ。でも、柳副会長はそんな決まった恋愛じゃなく、自由な恋愛を望んだ。そこで俺に、付き合ってる彼氏だと装って顔合わせに出てくれって言われたんだよ」


「その流れで、柳副会長と付き合うことになった、ってこと……?」


「そういうこと」


 遠坂はそう言いながら、ある店の前で足を止めた。


 鈴村もそれにつられて足を止める。


「ここって……」


「そ。お花屋さんです」


 遠坂は花屋の前で足を止めた。


「もしかして、柳副会長に花束を渡す予定なの?」


「花束は渡さないかな。でも、柳副会長の気持ちに応えられる花を買おうかと思ってるんだ」


「…………どういうこと?」


 遠坂は花屋に入りながら話を始める。


「さっきも言った通り、柳副会長は『華道』をたしなんでる。花には相当詳しいはずだ。だから、俺なりに花を通して気持ちを伝えたいなって思ったんだ」


「じゃあ、赤いバラの花をあしらった何かを渡すつもりなの?」


「なんで赤いバラ?」


「あ、そこは調べてないのね……」


 鈴村は少し拍子抜けしてしまった。


 鈴村は気を取り直して遠坂に話す。


「俺も色々あって、花言葉を調べるようになったんだ」


「花言葉ねぇ……」


「赤いバラの花言葉は『あなたを愛す』。まさしく、遠坂君の気持ちを伝えるのにピッタリだと思うけど」


「確かにそうだねぇ。……だけどさ」


 遠坂は鈴村に視線を合わせて言う。




「なんか、ベタすぎじゃない?」




「相談しに来たくせに文句多いなこの人」


 鈴村は遠坂に時間を割いていることを少し後悔していた。


 遠坂はそうは言ったが、鈴村の意見には納得していた。


「でも、なるほど。花言葉か。いいかもね。他になんかない? そういう、『本物の恋愛』を現すようなの」


「えっと……。マーガレットとか、キキョウとか、色々あるよ」


「鈴村くんは物知りだなぁ。相談して正解だったかも」


 遠坂はそう言いながら店内を物色していた。


 片や鈴村は、プレゼントの候補に花に関係するものを渡すのもありだな、と考えていた。


 この前日、宮田みやたとプレゼント選びをした鈴村であったが、自分が買ったものにどことなく違和感を感じていた。


 鈴村は遠坂とは別方向から、店内を物色し始めた。


「お、これなんかいいな」


 遠坂は綺麗に花咲くマーガレットを発見し、その姿を観察する。


「…………、うん、いいかも」


「遠坂君、決まった?」


「うん。俺、これ買うよ」


「結局マーガレットにしたんだ」


「直接これを一輪、柳副会長に渡すわけじゃないよ。ここの店さ、あるサービスやってるんだよ」


「サービス?」


 鈴村は遠坂に聞き返した。


 遠坂はニヤりと笑いながら、店員を呼びそのサービスを利用することを伝えた。


「すみません、この花をしおりにしてもらえますか?」


「かしこまりました。お時間をいただきますので、こちらで少々お待ちください」


 店員はそう言って、一輪のマーガレットを持って店の裏に向かった。


「……あー、なるほど。『押し花』か」


「そういうことだよ。柳副会長、桜庭会長と同じで本が好きでさ。生徒会室でしょっちゅう本を読んでるのを見かけるんだ。柳副会長が本好きって、あの性格からだと想像もつかないよね」


「……確かに」


 鈴村は妙に納得してしまった。


 あの天真爛漫で好奇心旺盛な柳が本好きであることに、鈴村は驚いていた。


 遠坂はそのまま続ける。


「どうせ渡すならちゃんと使ってほしいものがいいなって思って、栞を渡そうと思ってたんだよ。でも、ただの栞じゃつまらないなと思って、柳副会長が華道やってるってのもあってここに来たんだ」


「なるほどね。遠坂君、割と色々考えてるんだね」


「……なんかバカにされた?」


「いや? 別に?」


 鈴村はそっぽを向いた。


 そうこうしているうちに、店の裏から店員が出てきて言う。


「お待たせしました。このような形になりましたが、いかがでしょうか」


 そう言って店員は、マーガレットの栞を遠坂に手渡した。


「…………うん、いいと思います。この上のところに穴を開けて、緑と赤の紐をつけてもらえますか」


「かしこまりました。……では、お会計を先にお願いします」


「わかりました」


 そう言って、遠坂と店員はレジへと向かった。


「……なるほど、花言葉ねぇ」


 鈴村も花言葉には思うところがあった。


 納涼祭のうりょうさいで綾瀬と琴原ことはらが着ていた浴衣。


 あの浴衣がなければ、鈴村は花言葉のことを調べなかったであろう。


「……それなら、これにしますかね」


 鈴村はそう言って、花屋に置いてあった商品を手に取ってそれを購入した。


「お、鈴村くんも決めたみたいだね」


「うん。遠坂君の言葉がヒントになったよ」


「そっか。お気に召すものが見つかって何よりだよ」


 そう言いながら、遠坂は購入したマーガレットの栞を店員から受け取った。


 鈴村と遠坂は無事に欲しいものが手に入り、花屋を後にする。


「で、これからどうする? お互い目的は果たしたし、これで解散する?」


 遠坂は花屋の前で、鈴村に問いかける。


「まあ、俺はどっちでもいいよ。特に予定があるわけでもないし、他に寄る場所があるなら付き合うよ」


「お、なら次はあの店についてきてもらおうかな」


 そう言って、遠坂は次の店へ向かった。




                   *




「ここって…………」


 鈴村たちはミドリモール内の少し端にある店に辿り着いた。


「そう。占いに使うグッズを扱う雑貨屋です」


 遠坂はなぜかどや顔でそう言った。


「……敢えて聞くよ。……なんで?」


「そりゃ決まってるでしょ。柳副会長、『未来予知』が使えるんだよ。あの力のすごさは鈴村くんも知ってると思うけど、俺はあの力をもっと自由に使えるようにさせてあげたいんだ」


「どういうこと?」


 鈴村の頭の上には「?」マークが浮かんでいた。


 遠坂は説明を始めた。


「柳副会長の『未来予知』は相当の体力を使うのは鈴村君も知ってるよね」


「ああ、それは蒼碧祭の時に聞いたな」


「柳副会長自身、その解決策を編み出してるらしいんだけど、それが人に触れることなことに俺は少し抵抗があってね」


「なんで?」


「え、だってそうでしょ。自分の好きな人が男の人に『未来予知』をするためとはいえ体に触れるんだよ? 気分悪くならない?」


「…………まあ、確かに」


 鈴村は遠坂の言うことに頷いていた。


「そこで、少しでも人に触れなくても体力を消耗しなくていいようなものがないかと思って、雑貨屋に来たわけです」


「……そんな都合よくあるものかね」


「雑貨屋って便利なものが多く取り扱われてるからね。案外あるんだよ、そういうの」


 鈴村は遠坂の謎の自信をあまり信じることができず、店の外で待つことにした。


 遠坂は鈴村に手伝ってほしそうな顔をしたが、それをやめて店内を探し回った。


 ……その数十分後。


 遠坂は暗い顔をして出てきた。


「…………それっぽいのなかったわ」


「だろうね」


 鈴村は冷ややかな目をして遠坂に言った。


「うーん、やっぱオカルトチックなものだし、占い専門店とかに行ってみるか……?」


 遠坂は顎に手を当てて、柳がより楽になれるものがないかを必死に考えていた。


 鈴村はその様子を見て、一つ提案をする。


「あのさ、遠坂君」


「何?」




「遠坂君自身が、その助けになってあげればいいんじゃない?」




「…………ん? どういうこと?」


「あれ、柳副会長と付き合い始めてから一回も『未来予知』してないの?」


「……あー、そういえばここ最近、柳副会長が『未来予知』してるの見たことないな」


「じゃあ試してないのか……」


「何が言いたいんだよ」


 鈴村は遠坂に目を合わせて言う。


「これは俺の憶測でしかないんだけど、要は体力が消耗しなければいいんでしょ? 遠坂君が隣にいて、それこそ頭を撫でたり、背中をさすってあげたり、スキンシップをしてあげればいいんじゃないかなって思ったんだけど」


 遠坂は納得するような顔をしたが、少し考えてその意見に反論した。


「…………それじゃ他の人にも触れてることになるから、余計に柳副会長の負担にならない?」


「……あ、そっか」


 鈴村は遠坂の反論に一蹴されてしまった。


「でも、試してみる価値はあるかもしれない」


 しかし、遠坂はその鈴村の意見を悪くないと考えていた。


 遠坂は柳に『本物の恋愛』を教えてもらっている。


 柳も本気で遠坂を好きでいるため、その『気持ち』が強ければ少なくとも良い方向に移るのではないか、と考えたのだった。


「よし、今度試してみるよ。ありがとう」


「お、おう。なんかさっきと言ってること違うけど、納得してくれたならまあいいや」


 鈴村は少し戸惑いながら答えた。


「さて、用事も済んだし俺はそろそろ帰ろうかな」


 そう言って、遠坂は時計を見た。


「何か予定でもあるのか?」


「クリスマスパーティーの準備の手伝いをするように桜庭会長に言われてるんだよ……。これからうちの生徒会メンバー全員集まってその作業をする予定なんだ」


「あ、だから午前中から呼び出されたのね、俺」


 鈴村は午前中に呼ばれた理由を理解した。


 と同時に、鈴村は一つの疑問が浮かんだ。


「あれ、準備ってことは、もういつクリスマスパーティーやるのか決まってるのか?」


「え、飯田生徒会長とかから聞いてないの?」


「いや、特に何も」


 鈴村は素直に遠坂に答えた。


 遠坂は鈴村に、クリスマスパーティーの開催日を伝える。




「クリスマスパーティーは、うちとそっちの生徒会メンバーの予定を突き合せた結果、クリスマスイブの二日前、十二月二十二日に行うことにしたよ」




「…………それにしては準備早くない?」


 鈴村は素朴な疑問を遠坂に問いかけた。


 遠坂は少し困惑しながら鈴村の問いに答える。


「それだけ大がかりってことでしょ……。もう何日か準備の手伝いしに行ってるけど、桜庭会長のご自宅、想像以上にすごいから……」


「そ、そうなんだ。大変そうだね」


 鈴村は改めて桜庭がお嬢様であることを実感した。


「じゃあ俺はこれで帰るから。今日は付き合ってくれてありがとうな」


「おう。気を付けて帰れよ。その栞なくすなよなー」


 鈴村のその言葉に、遠坂は手を振って応答し、そのままその場を去った。


「……俺は俺で残りの休日を堪能しますかねぇ」


 そう言って、鈴村も自宅に向かった。


 そんな中、鈴村は嫌な予感がしていた。


「…………俺が今それ知ったってことは、もしかして飯田会長たちもクリスマスパーティーの日程知らないんじゃ……?」


 鈴村はそう言って、慌てて飯田に連絡を取った。


 案の定、飯田を含めた緑ヶ丘学園高等部生徒会メンバーは誰一人としてクリスマスパーティーの日程を知らなかった。


 伝わっていなかった理由を柳に問いただすと、その理由は、柳が鈴村たちを当日目隠しをして強制連行し、目隠しを取ったらクリスマスパーティーの会場に来ていた、というサプライズを実行するためであった。


 さすがにこれに怒りを覚えた鈴村は柳を少し叱った。




 こうして、鈴村のおかげで無事にクリスマスパーティー参加メンバー全員に日程が伝わることになり、ついに緑ヶ丘学園生徒会、青海おうみ学園生徒会の合同クリスマスパーティーが開幕したのであった。

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